家に着いた日の犬は、たいてい静かです。隅でじっとしている、名前を呼んでも来ない、ごはんを残す。あるいは逆に、家じゅうを走り回って止まらない。どちらも、その犬の本当の姿ではありません。
オランダの大学が、シェルターから家庭に迎えられた犬31頭の尿を調べた研究があります。ストレスの指標になるホルモンの濃度は、新しい家に来た1日目がいちばん高く、7日目、12日目、6週間後と、時間をかけて下がっていきました。犬の体は、家に着いてから1週間かけて、ようやく落ち着き始めるということです。
そして、もうひとつ知っておいてほしい研究があります。アメリカで99頭を半年間追いかけた調査では、迎えて7日目より、90日目のほうが問題行動の点数が上がっていました。時間が経つほど、扱いにくくなったように見える。これは失敗ではなく、犬が本来の自分を出せるようになった結果です。
この記事では、この2つの研究を軸に、最初の3日・3週間・3か月で何をするかを時系列で並べます。手続き、動物病院、ワクチン、生活のリズム、社会化。そして、3か月目に問題が出たときの受け止め方まで書きます。
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最終更新 2026年9月15日
最初の3か月、犬の中では何が起きているか
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先に、犬の側で何が起きているかを見てください。ここが分かっていると、最初の1か月の「変な行動」に振り回されずに済みます。
体が落ち着くまでに1週間かかる
ユトレヒト大学の研究チームが、シェルターから家庭へ迎えられた犬31頭を追いかけました。測ったのは、尿に出るストレスホルモンの濃度と、夜のあいだの活動量です。
結果は2つに分かれます。ひとつは、シェルターにいたときより、家に来てからのほうが数値が低かったこと。環境が変わったことそのものは、犬にとって良い変化でした。
もうひとつが大事です。家に来てからの数値だけを比べると、いちばん高いのは1日目でした。そこから7日目、12日目、6週間後と、段階的に下がっていきます。夜の活動量も、1晩目から2晩目にかけて大きく落ちました。
初日の「おとなしい」は、落ち着いているのとは違います
体の中ではストレスホルモンがいちばん高い状態です。動かないのは安心しているからではなく、情報が多すぎて固まっていることがあります。この時期に「意外と手がかからない子だ」と判断すると、あとで話が変わります。
3か月目に、問題行動の点数が上がる
もう1本、アメリカの研究があります。オハイオ州の5つのシェルターから譲渡された犬99頭について、飼い主に7日後・30日後・90日後・180日後の4回、行動を評価してもらったものです。使ったのはC-BARQという、犬の行動を項目ごとに点数化する標準的な質問票です。
7日目を基準にすると、こうなりました。
| 項目 | 7日目と比べて | 意味するところ |
|---|---|---|
| 見知らぬ人への攻撃性 | 30日・90日・180日のすべてで増加 | 来客や散歩中の人に反応するようになる |
| 興奮のしやすさ | 90日・180日で増加 | 遊びや帰宅で、抑えがきかなくなる |
| 触られることへの過敏さ | 90日・180日で増加 | 足やお尻を触ると嫌がるようになる |
| 追いかける行動 | 30日・90日・180日のすべてで増加 | 自転車、猫、走る子どもに反応する |
| 教えにくさ | 30日・90日・180日のすべてで増加 | 指示が通りにくくなる |
| 留守番中の不安 | 180日で減少 | ひとりで過ごすことには慣れていく |
| 人にくっつく・気を引く行動 | 180日で減少 | 過度な依存は薄れていく |
保護の現場では以前から、「3日・3週間・3か月」という区切りが経験則として語られてきました。最初の3日はただ体を休める期間、次の3週間で家のやり方を覚え、3か月かけて本当の性格が出てくる、という見立てです。ここまでの2つの研究は、その経験則に数字の裏づけを与えた形になっています。
この表を、悪いニュースとして読まないでください。増えているのは「もともとその犬が持っていたもの」で、7日目には出していなかっただけです。緊張が解けるにつれて、性格が見えてくる。留守番の不安が減っていることが、その証拠です。家が安全な場所になったから、遠慮がなくなった。
海外では、この最初の落ち着いた時期を「ハネムーン期間」と呼びます。迎えて3か月目に手に負えなくなったという相談の多くは、この時期のものです。失敗したのではなく、ここからが本番だということです。
そして、この研究にはもうひとつ結果があります。180日目の時点で、飼い主の100%が「うちの犬は新しい家にうまく馴染んだ」と答えていました。「とてもよく」か「まずまず」のどちらかで、「馴染まなかった」と答えた人はひとりもいません。
点数の上では、攻撃性も興奮性も上がっている。それでも全員が「馴染んだ」と言っている。この2つは矛盾しません。行動の数値が動くことと、その犬とうまくやっていけるかどうかは、別の話だということです。
時期ごとに、やることが変わります
2つの研究をまとめると、時間の区切りはこうなります。
| 時期 | 犬の状態 | 飼い主がやること |
|---|---|---|
| 最初の3日 | ストレスホルモンがいちばん高い。動かないか、逆に落ち着かない | かまわない。寝られる場所と静かさを用意する |
| 1週間まで | 数値が下がり始める。食欲と排泄が安定してくる | 手続きを済ませる。動物病院へ一度行く |
| 3週間まで | 生活のリズムを覚える。素が少しずつ出る | 食事・睡眠・トイレの時間を固定する |
| 3か月まで | 本来の性格が出そろう。問題行動が増えて見える | 社会化を進める。出てきた行動に対処する |
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3か月目に素が出たとき、どう対処したらいいかわかりますか?
おとなしかった犬が吠え始める、噛み始める。その後にどう動けばいいのかは、文章を読んだだけでは身につきません。
問題行動が出た犬への対処の仕方は、動画を見れば読むよりずっと早く身につきます。問題行動への対処の仕方も、効果的なしつけ方法も、「イヌバーシティ」の中にひととおり入っています。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
最初の3日|かまわないことが、いちばんの仕事です
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迎えた日にいちばんやりたくなるのが、抱っこと写真と名前呼びです。そのすべてを、3日だけ我慢してください。ここが、あとの3か月に効いてきます。
家に着いてから寝るまで|初日の流れ
迎えた日にいちばん迷うのが、順番です。何を先にやるか決めておくと、初日は驚くほど短く終わります。
| 場面 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 車から降りたら | 玄関をくぐる前に、敷地の隅で用を足させる。出たら低い声で一言 | 抱えたまま家へ直行しない。車中でこらえていることが多い |
| 家に入ったら | まっすぐサークルへ。水を置いて、そのまま離れる | 部屋を順に見せて回らない |
| 最初の1時間 | 別の部屋から様子を見る。眠り始めたらそのまま | のぞき込まない。写真のために起こさない |
| 食事 | 迎え先と同じ時刻に、同じフードを同じ量。食べなくても20分で下げる | 食べないからと手で差し出したり、別の物に替えたりしない |
| 夕方 | 家族が1人ずつ、短く近づく。犬から来たときだけ触る | 全員で囲まない。抱き上げて回さない |
| 寝る前 | もう一度トイレ。寝床にブランケットを入れて、部屋を暗くする | 寝床を人のベッドに変えない。初日に決めた場所を動かさない |
前にいた場所のにおいが残った布を分けてもらえていたら、寝床に入れてください。母犬やきょうだいのにおいが付いたものが理想ですが、犬舎で使っていたタオルでもかまいません。初日に洗わないこと。これだけ守れば、においは残ります。
初日にやっておくと、あとで効く記録
手間は1日5分です。3つだけ書き留めてください。
- 排泄の時刻。起きた直後、食後何分、遊んだあと。3日分たまると、次にトイレへ連れて行くタイミングが読めます
- 食べた量。残したなら何割残したか。体調の変化に最初に出るのがここです
- 怖がったもの。掃除機、インターホン、子どもの声。社会化で優先して慣らす順番が決まります
スマホのメモで十分です。この3つは、動物病院で聞かれる内容とほぼ同じでもあります。
初日にやらないこと
- 家族全員で囲まない。順番に、1人ずつ、短く。全員が同時に近づくと逃げ場がなくなります
- 寝ているのを起こさない。子犬が起きている時間は、1日のうちほんの一部です。睡眠を削られること自体が、この時期の負担になります
- 家じゅうを見せて回らない。初日は1部屋で足ります。行動範囲は少しずつ広げます
- 友人を呼ばない。見せたい気持ちは分かりますが、1週間は待ってください
- いきなりお風呂に入れない。においが残っていても、体調が落ち着くまでは触りません
- 先住犬や先住猫と、その日のうちに会わせない。においの交換から始めます。進め方は犬を飼う前にしておきたいことの記事のFAQに書きました
初日にやること
やることは、実は少ないです。
- トイレと寝床の場所を、先に決めて動かさない。あちこち変えると覚え直しになります
- フードは迎え先と同じものを、同じ量で。環境が変わった日に食事まで変えると、おなかを壊します
- 水はいつでも飲める場所に。器は倒れない重さのものを
- 名前を呼んで、食べ物をひと粒。これだけは初日から始められます。呼ぶ→良いことが起きる、の順番を作ります
- 排泄の時間を書き留める。起きた直後、食後、遊んだあと。この記録が、あとのトイレトレーニングを短くします
- 室温を確かめる。子犬に向く室温は、成犬よりやや高めの25度前後とされています。体温の調節がまだ下手なので、暑さも寒さも体調に直結します。寝床にエアコンの風が直接当たっていないかも見ておいてください
初日の夜に鳴くのは、ほぼ全部の犬がやります
母親ときょうだいから離れた最初の夜です。鳴くたびに行くと「鳴けば来る」が成立し、鳴き方が激しくなります。かといって完全に放置すると、不安が積み上がります。対応の分かれ目は子犬の夜鳴きの記事にまとめました。
食べない・下痢をしたときの線引き
迎えて数日は、食欲が落ちたり便がゆるくなったりすることがあります。環境が変わったことによるもので、多くは数日で戻ります。
ただし、子犬では様子を見ていい時間が短いことを知っておいてください。体が小さく、蓄えが少ないため、食べない時間が続くと血糖値が下がって危険な状態になることがあります。次のどれかが出たら、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。
- 半日以上、何も食べない
- 水のような下痢が続く、便に血が混じる
- 何度も吐く
- ぐったりして反応が鈍い、体が震える、けいれんする
受診するときは、便の写真を撮っておいてください。色と形が分かると、そのあとの検査の組み立てが変わります。可能なら、便そのものを持って行きます。
1週間以内に終わらせる手続き
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法律で期限が決まっているものが3つあります。どれも迎えた日から30日以内ですが、後回しにすると忘れるので、最初の週に片づけてください。
30日以内に済ませる3つ
- 市区町村での登録。対象は生後91日を過ぎた犬。3,000円ほどで、鑑札が渡されます
- 狂犬病の予防注射。毎年1回。済むと注射済票がもらえます
- マイクロチップの登録情報の書き換え。前の飼い主から自分へ。オンラインなら400円
はじめの2つは狂犬病予防法に書かれた義務で、放置すると20万円以下の罰金の対象になります。3つ目も、業者や団体から譲り受けたのなら義務です。チップは入っているのに情報が前のままだと、迷子として保護されたとき、連絡は前の飼い主のところへ行きます。
鑑札と注射済票は、受け取ったら犬に着けてください。手続きの詳しい中身と、自治体によってはマイクロチップを鑑札とみなす特例があることは、犬を飼う前にしておきたいことの記事で扱いました。
動物病院の初診|いつ行き、何を持ち、何を聞くか
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迎えたら、早い段階で一度、動物病院に行ってください。病気のためではなく、これから15年つき合う場所を決めるためです。
行くタイミング
体調に問題がなければ、迎えてから1週間ほど置いてからで十分です。環境が変わった直後に病院という新しい場所へ連れて行くと、負担が重なります。
ただし、前の章に書いた症状(半日以上食べない、水のような下痢、繰り返す嘔吐、ぐったりする)が出たら、1週間を待たずにすぐ連絡してください。ワクチンの予定も待つ必要はありません。
持って行くもの
- 当日か前日の便(ラップに包んで。寄生虫の検査に使います)
- ワクチンの接種証明書(迎え先でもらったもの。次の接種日が決まります)
- 血統書やマイクロチップの番号
- いま食べているフードの名前と量(袋の写真でかまいません)
- 気になっていることのメモ(診察室では忘れます)
初診で聞いておく5つ
診てもらうだけで帰らないでください。この5つを聞けるかどうかで、その病院が今後の窓口になるかが決まります。
- 次のワクチンはいつですか。何回目で終わりますか。ここが次の章の内容につながります
- 散歩に出していいのはいつからですか。病院によって考え方が違います
- いまの体重だと、フードは1日何グラムですか。袋の表示は幅があるので、その犬の数字を聞きます
- 夜間や休診日は、どこに連絡すればいいですか。あとから探すと間に合いません
- 噛む・吠えるといった行動の相談も受けてもらえますか。受けない病院もあります。その場合の紹介先を聞いておきます
病院を「怖い場所」にしないための一手
初診のあと、何もしない日に一度だけ寄ってみてください。受付でおやつをもらって帰るだけ。これを2〜3回やると、病院の駐車場で震える犬になりにくい。受け入れてくれる病院かどうかは、初診のときに聞けば分かります。
ワクチンの「終わり方」を、最初に確かめる
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ここは、飼い主が思っているより誤解の多いところです。「3回打てば終わり」ではありません。
なぜ複数回打つのか
子犬は生まれたとき、母親の免疫を分けてもらった状態でスタートします。初乳を通じて渡されるこの抗体は、しばらくのあいだ体を守ってくれます。ところが同じ抗体が、ワクチンの成分も「敵」と見なして片づけてしまいます。守られているあいだは、打っても効かない。これが複数回に分ける理由です。
問題は、この抗体がいつ抜けるのかが犬ごとにばらばらで、外からは見えないこと。生後6週で消える犬もいれば、4か月近く残る犬もいます。だから2〜4週間ごとに打ち直して、抜けた瞬間を取り逃さないようにします。1回目で効く犬もいれば、3回目でようやく効く犬もいる、ということです。
最終接種が16週齢以降かどうかを見る
国内で多いのは、生後8週ごろに1回目、12週ごろに2回目、16週ごろに3回目という組み方です。世界小動物獣医師会(WSAVA)の2024年のガイドラインは、2〜4週間おきに複数回打ち、最後の1回を16週齢以降に打つことを推奨しています。
ここが肝心です。移行抗体が16週近くまで残る犬がいる以上、12週で打ち終えると、その犬には免疫がついていない可能性が残ります。迎えた子犬がすでに2回打っていても、3回目が16週齢を過ぎてからかどうかを確かめてください。
ワクチンが終わる前に、社会化期が終わります
もうひとつ、時期の問題があります。子犬が新しいものを受け入れやすい社会化期は、生まれて3週目から16週目まで。ワクチンの最終接種と、ほぼ同時に終わります。
つまり「ワクチンが全部終わってから外に出そう」と考えると、いちばん吸収する時期をまるごと逃します。この矛盾に、米国獣医動物行動学会(AVSAB)ははっきり答えを出しています。ワクチンを打ち終える前に社会化を始めることが、標準的なケアだという立場です。根拠として挙がっているのが、3歳に満たない犬の死因で最も多いのは感染症ではなく行動上の問題だ、という事実でした。感染を避けて家に閉じ込めた結果、行動の問題で手放される犬のほうが多い。どちらのリスクを取るかという話になっています。
具体的な進め方は、この記事の後半に書きます。
最初の3週間|リズムを先に作る
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犬が落ち着き始めたら、次は生活の型を作ります。先に決めておくほど、あとの修正が要りません。
固定するのは時間、変えるのは場所ではない
食事、睡眠、トイレ、散歩。この4つの時間をできるだけ揃えてください。犬は時計を読みませんが、順番と間隔は正確に覚えます。毎日同じ流れになっていると、次に何が来るかが読めるので、落ち着きます。
逆に、寝床やトイレの場所は動かさないこと。「もう少し奥がいいかも」と何度も移すと、覚え直しになります。
この時期に始めておく4つ
| やること | 始めどき | 詳しい手順 |
|---|---|---|
| トイレを覚えさせる | 初日から。排泄の時間を記録して、その前に連れて行く | 子犬のトイレトレーニング |
| 甘噛みへの反応を決める | 噛まれた最初の1回から。家族で同じ対応にする | 子犬の甘噛み |
| ひとりの時間を作る | 1週間を過ぎたら。数分から始める | 犬の分離不安 |
| 体を触られることに慣らす | 体調が落ち着いてから。足先・耳・口の順で | 下に書きます |
体を触る練習は、この時期にしかできません
さきほどの研究を思い出してください。触られることへの過敏さは、90日目と180日目に増えていました。つまり、素が出てからでは遅い。まだ緊張が解けきっていないこの時期に、触られても嫌なことが起きない経験を積んでおきます。
順番があります。背中から始めて、足先、耳、口の中へ。1か所につき1秒触って、食べ物をひと粒。嫌がる前にやめるのが要点で、嫌がってからやめると「嫌がれば終わる」を教えることになります。
ここを飛ばすと、爪切り、歯みがき、動物病院での診察が、一生の困りごとになります。1日1分で足ります。
フードを替えるなら、落ち着いてから
ここまで、迎え先と同じフードを続けている前提で書いています。銘柄を変えたいなら、生活が安定してから、1〜2週間かけて新旧の割合を入れ替えていきます。一気に切り替えると、おなかを壊したときに原因が食事なのか環境なのか判断できません。フードの選び方はドッグフードの記事で扱っています。
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社会化期の残り時間、あとどれくらいですか?
社会化のために何を見せるか、怖がった時にどう引き返すか、うまくできた時にいつ褒めるか、その場の判断は難しいものです。ここを間違えると、社会化させるつもりが苦手なものを作ってしまいます。
愛犬の社会化の仕方は動画で見るのが一番早いです。「イヌバーシティ」なら、子犬の社会化に必要な場面を、そのまま見ることができます。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
社会化期の残りで、何を見せるか
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ここが、時間の限られた仕事です。8週齢で迎えたなら、残りは8週間ほど。この間に何に触れたかが、そのあと15年の反応を決めます。
地面を歩かせずに、外を見せる
ワクチンが終わる前は、感染のリスクが残ります。そこで抱えたまま外へ出る方法を使います。守る条件は2つだけ。四本の足を地面に下ろさないこと、そして地面の物のにおいを嗅がせないこと。この2つさえ外さなければ、音と景色と人の動きだけを見せられます。
抱っこ散歩の進め方
- 1回は5分まで。だらだら抱えているより、短い回数を毎日積むほうが身につきます
- その日に見せる対象は、ひとつに絞る。月曜は自転車、火曜は工事の音、水曜は通学路の子どもたち。一度にまとめると、何が平気で何がだめだったのかを、こちらが判別できなくなります
- 黙って眺めていられた瞬間に、食べ物をひと粒。知らないものが現れたあとには必ずいいことがある、という並びを作ります
- 嫌がる素振りが出たら、そこで戻る。小刻みに震える、体がこわばる、視線を外し続ける。この状態で粘っても、苦手な記憶が上書きされるだけです
見せておきたいものの一覧
優先順位をつけるなら、生活のなかで避けられないものからです。
| 分類 | 具体的に | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 音 | インターホン、掃除機、ドライヤー、雷、花火、工事、救急車 | 家の中で毎日鳴る。慣れていないと吠えと逃走の原因になる |
| 人 | 子ども、高齢者、帽子をかぶった人、制服の人、傘をさした人 | 散歩中に必ず会う。子どもの動きは犬にとって予測しにくい |
| 物と乗り物 | 自転車、バイク、車、台車、キャリーバッグ、マンホール | 追いかける行動は90日目以降に増える。先に慣らしておく |
| 場所と床 | アスファルト、砂利、草、金属のグレーチング、エレベーター | 足裏の感触は、慣れていないと立ち止まる原因になる |
| 扱われること | 抱き上げられる、足を拭かれる、口を開けられる、爪を触られる | 通院・トリミング・災害時に必ず要る |
パピークラスに通えるか、聞いてみる
ワクチンの1回目が済んでいれば参加できるパピークラスがあります。同じ月齢の子犬と会える機会は、この時期にしか作れません。犬同士の力加減を学ぶ場としては、飼い主が用意できるどんな場面よりも効率が良い。
初診のときに、その病院がパピークラスをやっているか、やっていなければ近くの教室を知らないかを聞いてみてください。任せていい教室かどうかを見分ける材料は、しつけ教室の選び方というページで扱っています。候補そのものを探すなら、全国のしつけ教室のページに市区町村別の一覧があります。
成犬・保護犬を迎えた場合、どこが違うか
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ここまでの話は、子犬も成犬も共通です。そもそも冒頭の2つの研究は、どちらもシェルターから成犬を迎えた家庭のデータでした。コルチゾールも、3か月目の変化も、成犬でこそ当てはまります。
そのうえで、子犬と違うところが4つあります。
1|「素が出る」までの幅が大きい
子犬なら3か月でだいたい見えてきます。成犬の場合、3か月で落ち着く犬もいれば、半年から1年かかる犬もいます。前の環境で長く緊張していた犬ほど、時間がかかる傾向があります。
焦って判断しないでください。「懐かない犬だった」という結論は、少なくとも3か月は出せません。
2|怖いものが、あらかじめ決まっている
子犬は白紙から慣らしますが、成犬には既に苦手なものがあります。男性、傘、大きな音、車、掃除機、特定の犬種。過去に何があったかは分かりませんが、反応は見れば分かります。
最初の1か月は、見つける時間だと考えてください。無理に慣らそうとせず、何に反応したかを書き留める。リストができてから、距離をとって慣らす練習に入ります。
3|社会化期はもう終わっている
生後16週を過ぎた犬に、子犬と同じ吸収力はありません。ただしもう慣れないということではありません。時間をかけて、距離を保ちながら少しずつ近づける手順は使えます。子犬より回数と時間が必要になる、というだけです。
4|体の状態を先に確かめる
成犬は、すでに何かを抱えていることがあります。関節の痛み、歯周病、皮膚の問題、寄生虫。迎えてすぐの健康診断は、子犬より優先度が高い。初診で血液検査まで含めて相談してください。
とくに触ると嫌がる場所がある場合は、性格ではなく痛みのことがあります。慣れの問題として扱う前に、獣医師に診てもらってください。
成犬こそ、最初の数日は放っておく
迎えた側は仲良くなりたい。けれど犬の側は、まだ状況を把握していません。近づく、名前を呼ぶ、触る。この3つを減らすほど、落ち着くのが早くなります。同じ部屋にいて何もしない時間を、1日30分でも作ってください。犬が自分から来たときだけ応じる。それで十分です。
3か月目に問題が出るのは、失敗ではありません
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冒頭の研究をもう一度出します。7日目より90日目のほうが、見知らぬ人への反応も、興奮のしやすさも、追いかける行動も、点数が上がっていました。
この時期の相談は、だいたい同じ言い方で来ます。「最初はおとなしかったのに」「性格が変わった」「裏切られた気分」。変わったのではなく、見えるようになっただけです。
この時期にやってはいけないこと
ここで対応を間違えると、せっかく積んだ3か月が戻ります。
- 「前はできていたのに」と叱る。できていたのではなく、緊張して動けなかっただけです
- 力で押さえつける。体を押さえる、マズルをつかむ、仰向けにする。どれも恐怖を足すだけで、次の機会に強い反応が返ってきます
- いちどに全部を直そうとする。吠えも噛みも引っ張りも同時に、は続きません。いちばん困っている1つに絞ります
方針として、米国獣医動物行動学会(AVSAB)は2021年の声明で、報酬にもとづく方法だけを推奨し、身体的・心理的な罰はいかなる状況でも使うべきでないとしています。罰のほうが効果的だという証拠はなく、恐怖・不安・攻撃性を増やし、飼い主との関係を悪くする危険があるからです。
この時期にやること
出てきた行動は、その行動の記事に沿って個別に対処します。この記事はここまでが役目で、ここから先は問題ごとに分かれます。
| 3か月目に出やすいもの | 対処のページ |
|---|---|
| 来客やインターホンに吠える | インターホンで吠える |
| 散歩中に他の犬へ吠える | 散歩中に他の犬に吠える |
| 手や服を噛む | 子犬の甘噛み |
| リードを引っ張る | 犬の引っ張り癖 |
| 飛びつく | 犬の飛びつき |
| 自転車や車を追いかける | 自転車・車を追いかける |
最初の3か月でやってはいけないこと
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時期を問わず、この3か月にやると長く残るものを挙げます。
ワクチンが終わるまで、家から一歩も出さない
いちばん多い間違いです。感染からは守れますが、その代わりに社会化期を丸ごと失います。抱えたまま外へ出れば、地面に触れさせずに音と景色は見せられる。AVSABがどちらのリスクを重く見ているかは、前の章に書いたとおりです。
初日から留守番をさせる
迎えた翌日から8時間の留守番は、その時間そのものを恐怖の記憶にします。数分から始めて、少しずつ延ばす。この順番だけは崩さないでください。連休の初日に迎えると、この練習に時間を取れます。
叱り方を家族で揃えないまま進む
同じ行動に、家族3人が3通りの反応を返す。怒鳴る人、黙って離れる人、面白がって撫でる人。犬の側から見れば、何が正解なのか一生分からない状態です。許すことと許さないことを紙に書いて、見える場所に貼ってください。
体調不良を「環境に慣れていないだけ」で片づける
迎えて数日の不調は珍しくありませんが、子犬では悪化が早い。半日食べない、水様の下痢、繰り返す嘔吐、ぐったりする。このどれかがあれば、慣れの問題として様子を見ないでください。
3か月目の変化を、しつけの失敗と考える
もう繰り返しませんが、いちばん大事なところなので最後にもう一度書きます。データの上では、90日目に点数が上がるのが普通です。そこからが、その犬と向き合う時間の始まりです。
3か月やってきて、それでも手に負えないと感じたら
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ここまでの手順は、順番さえ守れば家庭で進められます。実際、多くの家がそうしています。
ただ、うまくいかない家に共通する詰まり方があります。知識が足りないのではなく、その瞬間に手が動かない。吠え始めた犬の横で、声をかけるべきか黙るべきか、何秒待つのか、いつ褒めるのか。読んだはずなのに、目の前で起きると分からなくなります。
しかも、3か月目に出てくる行動は、待ってくれません。来客は突然来るし、散歩中に自転車は勝手に通ります。考える時間が2秒しかない場面で、正解を出し続けるのは無理があります。
手を借りるなら、道は3つに分かれます。
- 子犬向けの教室に通う。同じ月齢の犬と会える機会は、この時期にしか作れません。通える範囲にどんな教室があるかは、全国のしつけ教室で確かめられます。どこを見て決めるかはしつけ教室の選び方という記事で説明しています
- 飼い主の側が学ぶ教材を使う。時間を合わせずに済み、同じ場面を何度でも再生できます。下に書きます
- 動物病院に相談する。急に攻撃的になった、体を触ると痛がる、排泄の失敗が急に増えた。このどれかなら、しつけより先に受診してください
レッスンの1時間より、残りの167時間のほうが長い
週1回の教室でトレーナーと過ごすのは1時間です。残りの167時間、犬の横にいるのは家族です。吠えた瞬間も、噛んだ瞬間も、飛びついた瞬間も、その場にいるのは家族。なぜその手順なのかまで腹に落ちていれば、疲れて帰った日にも手が勝手に動きます。
その材料として挙げるのが「イヌバーシティ」です。教える中身そのものより、教えている人の手元と間合いを映すことに時間を割いた教材で、全1,260分あります。鳴いている犬との距離をいつ詰めるか、噛まれた手をどの向きに抜くか、褒め言葉をどの瞬間に置くか。そういう部分が映像で追えます。年齢別に章が分かれているので、いま迎えたばかりなら子犬の章から見られます。力で押さえる場面は一度も出てきません。配信はオンラインで、申し込んだ直後から視聴でき、期限で消えることもない。3か月目に困ってから、該当する章だけ見直すという使い方ができます。価格は43,780円(税込)。3か月目に出た行動を自宅で見てもらうとなると、出張トレーニングの相場が1回8,000〜20,000円です。単価の高い教室なら2回、安いところでも5回ほど頼めば、同じ金額に達します。そして出張は、1回きりで終わることがまずありません。
ここは正直に書きます。イヌバーシティは、映像を見て、自分の家で自分の手で愛犬にしつけをする前提の教材です。「いま起きていることを、その場で見て指示してほしい」なら、出張トレーナーを頼むほうがいいです。合うのは、家族全員で同じ映像を見てしつけ方をそろえたい方、そして3か月目に出てくる行動に自分で対応できるようになりたい方です。
夜鳴き、甘噛み、トイレの失敗。調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となるものです。噛まれた手をどの速さで引くか、鳴いている愛犬にいつ近づくか。文章ではどうやっても伝えきれない部分です。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。子犬の場面をひとつ見て、いまの接し方と比べてみるのもいいと思います。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
よくある質問
Q. 保護犬や成犬を迎えました。同じ進め方でいいですか?
基本は同じです。冒頭で紹介した2つの研究は、どちらもシェルターから成犬を迎えた家庭のデータです。むしろ成犬のほうが、この記事の時間の区切りがそのまま当てはまります。
違うところは2つです。ひとつは、その犬の来歴が空白だということ。何かに強く反応しても理由が分からないので、見つかるまでは刺激の少ない場所に置くしかありません。もうひとつは落ち着くまでの個体差で、3か月で済む犬もいれば1年近くかかる犬もいます。よその犬の話は参考になりません。
Q. 抱っこ散歩から、地面を歩かせるのはいつからですか?
ここは病院ごとに判断が違います。最終接種から2週間を待つという施設が多数派ですが、2回目が済んだ時点から地面を許可するところもあります。地域でどんな感染症が出ているかでも変わる話なので、通っている病院の方針に従ってください。
初診で聞く5つの質問に入れておいたのは、これを早い段階で決めておくためです。
Q. 迎えて1か月ですが、まだ自分から近づいてきません
珍しいことではありません。特に成犬や、静かな環境で育った子犬では、1か月では足りないことがあります。
やってほしいのは、追いかけないことです。こちらから近づくのをやめて、犬が来たときだけ静かに対応する。同じ部屋にいて、何もしない時間を毎日作るだけでも変わります。食べ物を手から渡そうとするより、床に置いて離れるほうが早い場合もあります。
ただし、震えが止まらない、物音のたびに逃げる、食事を一切とらないという状態が続くなら、慣れるのを待たず、獣医師に診てもらってください。
Q. 共働きで日中は留守です。何時間までなら大丈夫ですか?
月齢で変わります。子犬は数時間ごとに食事と排泄の世話が必要なので、日中に誰かの手が入るかどうかが分かれ目になります。昼だけシッターを頼む、近所の家族に寄ってもらう、在宅の日を増やす。どれか一つでも用意できるなら成り立ちます。
ただ、時間の長短より効いてくるのは始め方です。初日から長時間にせず、数分の留守から積み上げる。この順番を守るかどうかで、あとの苦労が変わります。進め方は犬の分離不安の記事にあります。
Q. 名前を呼んでも来ません
名前を「呼ばれたら良いことが起きる合図」として使えているかを確認してください。叱るときに名前を使っていると、名前そのものが警告の音になります。「コラ、ポチ!」を繰り返した犬は、名前を聞くと動きを止めます。
やり直すなら、1日20回、名前を呼んで食べ物をひと粒だけ。来なくても、こちらを見たら渡します。呼ぶ→良いことが起きる、の順番を作り直すのが先で、来させるのはそのあとです。
Q. 3か月経ってもトイレを覚えません
覚えないのではなく、成功した回数が足りないことがほとんどです。失敗を減らすより、成功を増やす。排泄しそうな時間に先回りしてトイレへ連れて行き、できたその場で褒める。この回数が必要な分だけ積み上がっていません。
やり方の順番は子犬のトイレトレーニングで詳しく扱っています。なお、いったん覚えたのに急に失敗が増えた場合は別の話で、泌尿器の病気が関わることがあります。その場合は受診が先です。
まとめ
迎えてからの3か月で、やることを6つに絞ります。
- 最初の3日はかまわない。ストレスホルモンがいちばん高いのは、家に来た1日目です。落ち着くまでに1週間かかります
- 30日以内に手続きを3つ。自治体での登録、狂犬病の注射、チップの情報の書き換え。前の2つを放置すると罰則があります
- 1週間ほど経ったら動物病院へ。便とワクチン証明書を持って、次の接種・散歩の開始時期・夜間の連絡先・行動の相談の可否を聞きます
- ワクチンの最終接種が16週齢以降かを確かめる。移行抗体が残っていると効かないことがあり、WSAVAの2024年のガイドラインがこの時期を推奨しています
- 社会化期の残りで、1日1種類ずつ見せる。地面を歩かせない抱っこ散歩なら、ワクチンが終わる前でも進められます
- 3か月目に問題が出ても、失敗ではない。99頭を追いかけた調査では、7日目より90日目のほうが点数が上がっていました。それでも180日目には全員が「馴染んだ」と答えています
最初の3か月は、犬を作る時間ではありません。犬がどんな犬なのかが見えてくる時間です。見えてきたものに対して、どう応えるか。そこからが本番です。
※ 本文で紹介した日数・週齢・調査結果は、公表されている研究や獣医学の指針にもとづく一般的な目安です。すべての犬に同じ経過をお約束するものではありません。
※ 体調や病気に関する記述は一般的な情報で、診断や治療の指示ではありません。気になる様子が見えたら、いつも診てもらっている病院へ早めにご相談ください。
