犬のうれしょんを治す方法|叱るほど悪化する理由と、迎え方を変えるだけの対策

犬のしつけ方

玄関のドアを開けた瞬間、うれしそうに走ってきて、足元で腰を落として、床に小さな水たまり。名前を呼んだだけなのに出る日もある。トイレはとっくに覚えているのに、その場面だけ毎回濡れる。

結論から書きます。うれしょんは、犬が「しよう」と思って出しているものではありません。感情が高ぶったときに、膀胱をとめておく力がふっと抜けて漏れてしまう反応です。本人に自覚がないことも多い。だから、しつけの手順を足しても止まりませんし、叱ると悪くなります。変えるべきは犬の側ではなく、迎える人の側の動きです。

「いぬのきもち」アプリが2024年11月に飼い主385人へ行った調査では、うれしょんをしたことがある犬が約6割。一方で「なかなかなおらなかった」人は約2割でした。多くの家では収まっていく困りごとで、収まらない2割にははっきりした理由があります。

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最終更新 2026年9月8日

  1. うれしょんは、しつけの失敗でも反抗でもありません
    1. 出そうとして出しているのではありません
    2. 子犬に多いのは、体の側の理由があります
    3. 「教え直す」方向では減らない理由
  2. 【表】興奮性排尿と服従性排尿を見分ける
    1. 実際には、この2つが混ざります
  3. 叱るほど悪化するのは、こういう仕組みです
    1. 叱られた犬が次にすることは、なだめる姿勢です
    2. 現行犯でも意味がありません
    3. 「大丈夫だよ」と駆け寄るのも、同じ方向です
  4. 【場面別】帰宅・来客・外での迎え方を変える
    1. 帰宅|ドアを開ける前から手順が始まっています
    2. 来客|協力を頼むときの言い方まで決めておく
    3. 外|濡れて困る場所を、そもそも使わない
  5. 興奮の高さを下げる練習|置き換える行動を1つだけ決める
    1. 1|玄関で出させる行動を、先に1つ決めておく
    2. 2|いちばん弱い刺激から始める
    3. 3|「盛り上がらないこと」に見返りをつける
  6. いつまで続く? 成長で減る犬と、1歳を過ぎても残る犬
    1. 減っていく道すじ
    2. 1歳を過ぎても続くときに、確かめる3つ
    3. 避妊・去勢との関係は、断定できません
  7. 掃除とマナーウェアは、時間を稼ぐための手当てです
    1. 玄関まわりを、汚れて当然の場所にしておく
    2. マナーウェアは、日と場面を決めて使う
  8. やってはいけないNG対応
  9. 2週間の帰宅記録を見ても減らないとき
  10. よくある質問
    1. Q. うれしょんは何歳まで続きますか?
    2. Q. 成犬になってから急に始まりました
    3. Q. 避妊や去勢をすれば止まりますか?
    4. Q. 家族の中で、夫にだけ漏らします
    5. Q. 電気やスプレーが出る首輪はどうですか?
    6. Q. マナーウェアをつけたままにしておけば解決しますか?
  11. まとめ

うれしょんは、しつけの失敗でも反抗でもありません

玄関で飼い主の足元に駆け寄る小型犬(イメージ)

最初に3つ、順に確かめます。ふつうのおしっこと何が違うのか。犬の体で何が起きているのか。なぜ「教える」方向では止まらないのか。

出そうとして出しているのではありません

トイレでの排尿は、膀胱がいっぱいになったので出す動作です。犬は場所を選び、姿勢をとり、出し切って終わります。うれしょんには、この「選ぶ」と「姿勢をとる」がありません。

米国カリフォルニア大学デービス校の獣医学部の解説によれば、これが出るのは挨拶や遊びのさなかで、そのとき犬は立っているか、歩いている途中です。行動学を専門とする米国の獣医師デブラ・ホロウィッツとゲイリー・ランズバーグが、動物病院グループの飼い主向け解説で使っている表現は、排泄のコントロールを失っている、というものです。本人は漏れたことに気づいていないことさえあります。掃除をしている飼い主の横で、当の犬がけろりとしているのはそのためです。意思でやっていない行動は、意思に働きかけても止まりません。変えられるのは、その反応が起きる手前の状況だけです。

子犬に多いのは、体の側の理由があります

膀胱の出口をしめる筋肉は、生まれたときから完成しているわけではありません。ここを自分の意思で加減できるようになるには、体の成長を待ちます。京都市の動物病院の獣医師も、子犬のうれしょんを、尿道括約筋がまだ自分の管理下に入っていない時期のものとして説明しています。そこへ、何を見ても気持ちが跳ね上がる子犬の反応が重なる。「押さえる力が弱い」と「押し上げる力が強い」が同時に起きているのが、生後数ヶ月の状態です。

だから子犬のうれしょんは、体が育つにつれて減っていくのが基本線です。ホロウィッツ獣医師らも、多くの犬が年齢とともにこの問題から抜けていくと書いています。理由は2つで、体が育って尿をためておけるようになること。挨拶のたびに、そこまで舞い上がらなくなること。

「教え直す」方向では減らない理由

ここで多くの家が回り道をします。粗相だと思ってトイレの位置を見直し、成功したら褒める。ところが帰宅時の水たまりだけは減らない。当然で、その犬はトイレの場所を知っているからです。知らないのではなく、その瞬間だけ間に合っていない。トイレ自体が定まっていないなら話は別で、手順は子犬のトイレトレーニング成犬のトイレのしつけ直しにあります。

変えるのは犬ではなく、玄関の10秒です

この記事の手順は、ほとんどが人の動き方です。目線をどこに置くか、どの高さから声をかけるか、何秒待つか。犬に新しい芸を教える話ではありません。先に人が変わると、犬の反応はあとから変わります。

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犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

ドアノブに手をかける前の10秒、何をするか決まっていますか?

うれしょんへの対応は、玄関に入る前から始まっています。とはいえ、声の高さや近づく角度は、文章だけだと自分の加減が合っているのか分かりません。
人側の動きを知るには、映像で見るのが断然速いです。落ち着いた挨拶のやり方を「イヌバーシティ」なら実際の場面の映像で確かめられます。

イヌバーシティの中身を覗いてみる

※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

【表】興奮性排尿と服従性排尿を見分ける

床に伏せて上目づかいでこちらを見る子犬(イメージ)

同じ「うれしょん」と呼ばれていても、中身は2種類あります。手当てが変わるので、ここで分けます。見るのは姿勢、相手、場面、直前の様子の4つ。

見るところ興奮性排尿服従性排尿(従属性排尿)
そのときの姿勢立ったまま、または歩き回りながら。尾は高く、体は弾んでいる尾を後ろ足のあいだに入れ、体をすくめて低くする。耳も寝る。仰向けになってお腹を見せることも
目線こちらをまっすぐ見て、飛びついてくる目をそらす。顔を横に向ける。まばたきが増える
相手大好きな家族、遊んでくれる人。犬に対しても出る背の高い人、声の低い人、上から手を伸ばしてくる人。過去に叱った人
起きる場面帰宅の出迎え、遊びの盛り上がり、来客が入ってきた直後叱られた直後。正面から一気に距離を詰められたとき。手が頭より上を通ったとき
直前の様子予兆らしい予兆がない。走りながら出ているぴたりと動きが止まる。固まってから出ることが多い

実際には、この2つが混ざります

きれいに片方だけ、という犬のほうが少数派です。ホロウィッツ獣医師らが使っているのは葛藤という言葉です。走ってくる犬をよく見ると、人のところへ行きたい気持ちと、近づかれるのが少し怖い気持ちが、1頭の中で同時に動いている。どちらか片方に整理できないから、姿勢にも両方が出ます。

混ざっている場合は、体が上に伸びているか、下に沈んでいるかを見ます。跳ねながら出ていれば興奮の色が濃く、腰が落ちて耳が寝ていれば怖さの色が濃い。そして、どちらが濃くても「近づく・手を伸ばす・目を合わせる・高い声を出す」を弱めることは共通です。Merck獣医マニュアルも、きっかけになる刺激そのものを避けることを最初に挙げています。

練習より先に、動物病院で相談したい様子

  • 出す前に床のにおいを嗅ぐ、場所を選ぶ。排泄の準備が入っている
  • 1回の量が少なく、そのぶん何度もトイレへ行こうとする
  • 興奮していない場面でも濡れている。寝床が朝になって湿っている
  • 尿の色に赤みが混じる。出しづらそうにしている
  • 水を飲む量が急に増えた。それまでなかったのに、大人になってから始まった

膀胱や尿道の炎症、結石、ホルモンの病気は、飼い主の目には「最近よく漏らす」という形で映ります。手がかりは時間帯です。先の京都市の獣医師は、尿失禁の特徴として、起きて動いているときではなく眠っている最中に漏れる点を挙げ、不妊手術のあとの雌犬や年をとった犬で目立つとしています。眠っているときに濡れているなら、それはうれしょんではありません。病院へ行く目安はしつけ教室の選び方にあります。

叱るほど悪化するのは、こういう仕組みです

差し出された手から顔をそむける犬(イメージ)

理屈から書きます。ここを納得しないと、床を拭きながらつい声が出てしまうからです。うれしょんは、飼い主の腹立ちがそのまま逆効果になる困りごとです。

叱られた犬が次にすることは、なだめる姿勢です

犬が怖さを感じたとき、まず出るのは反抗でも逃走でもありません。体を低くして、目をそらして、相手の気を静めようとする一連の動きです。耳を伏せ、尾を巻き込み、腰を落とす。そしてこの姿勢とセットで出るのが、服従性排尿です。

つまり、こうなります。漏らす → 叱られる → 怖くなる → なだめる姿勢が出る → その姿勢に伴ってまた漏れる。叱った側は「止めよう」としているのに、犬の側では「出す動作」を引き出しているわけです。ホロウィッツ獣医師らも、飼い主が言葉でとがめたり罰を使ったりすれば、次に近づかれたときの不安と葛藤がいっそう強まる、と明記しています。

現行犯でも意味がありません

「その場でなら伝わるのでは」と考える方は多いのですが、うれしょんには当てはまりません。意図して出していない反応なので、罰と行動が結びつきようがないからです。犬が受け取るのは「漏らすとよくないことが起きる」ではなく、「この人が近づいてくると、よくないことが起きる」。学習が成立する先が違っています。この点は米国獣医動物行動学会(AVSAB)の立場とも重なります。しつけに使ってよいのは報酬にもとづくやり方だけ。体や心に苦痛を与える手段は、どんな文脈においても支持しない。2021年の声明で示され、その後さらに強い言い方で確認された見解です。罰を使わない教え方の全体像は叩いたり叱ったりせずにしつける方法にあります。

「大丈夫だよ」と駆け寄るのも、同じ方向です

逆向きの失敗もあります。漏らしたことに気づいて、あわてて高い声でなだめに行く。UCデービス校の解説は、漏らしてしまったときに叱らないのと同じくらい、声をかけて認めるのもよくないとしています。正解は、何も起きなかったように振る舞うこと。目を合わせず、声も出さず、犬を別の場所へ動かしてから拭きます。突き放すのではなく、その出来事に意味をつけない、という手当てです。

【場面別】帰宅・来客・外での迎え方を変える

玄関先でしゃがんで犬に横向きに接する飼い主(イメージ)

ここからが実作業です。帰宅、来客、家の外の3つに分けます。変化がいちばん早く出るのは帰宅です。ここだけで回数が半分になる家がよくあります。

帰宅|ドアを開ける前から手順が始まっています

  1. ドアの外で、いったん止まる。鍵を回す前に3秒。玄関の向こうで犬がすでに走り回っているなら、そこで開けても間に合いません
  2. 入ったら、犬を見ない。UCデービス校の解説は、帰宅時の興奮で漏らす犬には、入ったところで完全に無視し、落ち着くまで5分ほど待つよう勧めています。目を合わせない、声をかけない、触らない
  3. 荷物を置く、手を洗う、着替える。やることがあると人の側も間が持ちます。犬がついてきても、視線を落とさずに動き続けてください
  4. 落ち着いても、こちらから近づかない。ホロウィッツ獣医師らも、挨拶は犬に近づいてもらうところから始めるようにと書いています
  5. しゃがむ。腰を曲げて覆いかぶさらない。上から見下ろす形になると、それだけで怖さの側が動きます
  6. 体を斜めに向け、声は低く小さく。正面から目を合わせるのは圧の強い形です。「ただいまー」の高い声が、いちばん強い引き金になります
  7. 触るのは、あごの下か胸。頭の上に手を伸ばして撫でるのが、いちばん出やすい動きです。UCデービス校もサンフランシスコSPCAも、あごの下を勧めています

覚えるのは「見ない・しゃがむ・低い声・あごの下」の4つで足ります。条件は家族全員が同じようにやること。一人だけ高い声で駆け寄る人がいると、その人が帰った日だけ元に戻ります。

来客|協力を頼むときの言い方まで決めておく

来客は難易度が一段上がります。相手が犬好きだと、こちらの努力と無関係に顔を近づけてくれるからです。頼み方をあらかじめ用意しておきます。

来客に伝える3つ(そのまま言える形にしてあります)

  • 「入ってきたら、5分くらい見ないでもらえますか。嬉しすぎて漏らしちゃうので」。理由を先に言うと、たいてい快く協力してもらえます
  • 「近づいてきたら、しゃがんで横を向いて、あごの下を触ってあげてください。頭の上からだと固まっちゃうんです」
  • 「一度触ったら、10秒くらいでやめてもらえますか。長いと盛り上がりすぎるので」

来客の少ない家では、そもそも練習の回数が足りません。ホロウィッツ獣医師らも、たまにしか人が来ないと犬は新しい反応を身につける機会がないと書いています。そこで挙げられているのが、同じ人に短い訪問を繰り返してもらうやり方です。入って少し話し、別のドアから出て、また入る。3回目には、もう「はじめまして」の相手ではありません。反応は回を追って下がります。飛びつきも同時に出るなら、手順は犬の飛びつきをやめさせる方法に分けました。

外|濡れて困る場所を、そもそも使わない

手順を組んでいる2〜3週間は、挨拶の場所を屋外に移すのがいちばん確実です。サンフランシスコSPCAも、収まるまでは遊びと挨拶を屋外でと勧めています。ドアを開けたらまず外へ出て、玄関前で済ませてから中へ入る。汚れて困らない場所で先に済ませれば、家の中の1回が消えます。

興奮の高さを下げる練習|置き換える行動を1つだけ決める

マットの上でおすわりして待つ犬(イメージ)

迎え方を変えても残る犬には、練習を足します。ねらいは漏れる姿勢と両立しない行動を、先に出させること。3段階で進めます。

1|玄関で出させる行動を、先に1つ決めておく

ここで使えるのは、興奮した挨拶やなだめる姿勢と同時には成立しない行動です。跳ねながらおすわりはできませんし、ボールをくわえて走っている犬は、腰を落として固まれません。Merck獣医マニュアルが例に挙げているのも、持ってくる遊びやお手といった、その犬がすでに覚えている芸と、落ち着いたおすわりでした。

選ぶ条件は3つ。その犬がすでにできること。ドアから離れた場所でできること。3秒で終わること。できない行動を新しく教えながら玄関で使おうとすると、両方まとめて崩れます。ヤマザキ動物看護大学の准教授で、動物行動学が専門の獣医師・茂木千恵氏も、「待て」がまだ定まっていない犬なら「おすわり」や「伏せ」でいいとしています。この記事のおすすめは「玄関から2メートル離れたマットの上に行く」。場所が合図になるので、人が声を出さずに済みます。

2|いちばん弱い刺激から始める

いきなり本番の帰宅で試さないでください。漏れない強さから始めて、少しずつ上げます。茂木氏も勧めている、系統的脱感作と呼ばれる進め方です。

  1. 家の中で、廊下の端から歩いて近づく。マットに乗れたら、米粒大に切ったささみを1つ。3秒以内に渡します
  2. 玄関まで行って、戻ってくる。ドアは開けません。マットで待てたら1つ
  3. ドアを開けて閉める。外には出ません。音だけを増やします
  4. 外に出て、5秒で戻る。ここから上がります。漏れたら1つ前へ
  5. 5分外に出て戻る。次は15分、1時間と伸ばします
  6. 実際の帰宅で試す。ここまで来たら、前の手順と合わせます

1日に進めるのは1段階まで。2日続けてできたら次へ。漏れた日は責めずに、次の日は1つ前に戻します。戻すのは後退ではなく調整。全部で2〜3週間を見ておいてください。

3|「盛り上がらないこと」に見返りをつける

この練習でいちばん抜けやすいのが、ここです。落ち着いていた瞬間に、何も起きていない家がとても多い。跳ねたときだけ人が反応するのですから、犬がどちらを選ぶかは明らかです。

だから、興奮していないときにこそ渡します。帰宅して5分たち、犬が足元に静かに座っている。そこで初めて名前を呼び、低い声で1つ渡す。玄関の音がしても走ってこない。そういう瞬間を拾ってください。日常の興奮そのものが高い犬は、うれしょんだけを取り出しても動きにくくなります。手順は犬が興奮しすぎて落ち着かないに分けました。

いつまで続く? 成長で減る犬と、1歳を過ぎても残る犬

窓辺で落ち着いて伏せている成犬(イメージ)

いちばん知りたいのは時期の話だと思います。多くの犬は1歳前後までに収まり、一部は成犬になっても残る。残る場合には理由があります。

減っていく道すじ

サンフランシスコSPCAが書いているのは、条件つきの「ふつうは収まる」です。収まる側の理由は2つで、体が育って膀胱を自分で管理できるようになること。それと、初めての人や場所に慣れること。条件のほうは、罰で悪化させていないことと、うっかり強化していないことです。「そのうち収まる」は、何もしなくていいという意味ではありません。

時期その時期の状態この時期にやること
生後2〜5ヶ月膀胱をとめる力が育っていない。ほとんどの刺激で跳ね上がる迎え方を家族でそろえる。玄関に吸水マットを敷き、叱らずに済む形を作る
生後6〜10ヶ月回数が落ち始める。強い刺激(来客・久しぶりの人)でだけ出る置き換える行動の練習に入る。来客での出入りの練習もここから
1歳前後多くの犬でほぼ消える。残るのは特定の相手・特定の場面だけ残っている場面を書き出す。どの人に、どの動きで出るかを特定する
1歳を過ぎても続く怖さの側が強い、日常の興奮が高い、体の問題のいずれか下の3つを順に確かめます

1歳を過ぎても続くときに、確かめる3つ

ひとつめは、怖さの側が濃くなっていないか。前の表で服従性排尿の列に当たる様子が増えているなら、興奮の問題ではありません。茂木氏は、過去の体罰などが背景にある保護犬では、うれしょんが服従性排尿の形をとりやすいとしています。家族の誰か一人の前でだけ出るなら、その人の動き方に手がかりがあります。

ふたつめは、日常の興奮の高さ。散歩の支度、チャイム、車に乗るとき、他の犬を見たときにも跳ね上がる犬は、うれしょんだけを狙っても減りません。みっつめは体の問題です。成犬になってから始まった、量が増えた、寝ているあいだにも濡れる。このどれかなら受診が先です。

避妊・去勢との関係は、断定できません

うれしょんを止めるために手術を勧める根拠は、見当たりません。マーキングのように、去勢との関係を調べた研究がいくつも並んでいる行動とは事情が違います。

むしろ逆向きに注意したい話があります。ホルモン反応性尿失禁と呼ばれる状態です。茂木氏は、健康な犬で練習を続けても直らないときにこれを疑います。血中の性ホルモンが下がることで尿道括約筋の締まりが落ち、本人の意識のないところで尿が出る。避妊手術のあとの雌犬に多く、行動ではなく獣医師が扱う領域です。手術のあとに増えたように見えるとき、まったく別のことが起きている可能性があります。判断は、その犬を実際に診ている獣医師と。マーキングと混同している場合の材料は犬の室内マーキングをやめさせる方法にあります。

掃除とマナーウェアは、時間を稼ぐための手当てです

玄関に敷かれた吸水マットの上を歩く犬(イメージ)

先に立場をはっきりさせておきます。ここで挙げる道具は、回数を減らすものではありません。床と気持ちを守り、手順を続けられる状態にするためのものです。

玄関まわりを、汚れて当然の場所にしておく

怒らずにいられるかどうかは、性格の問題ではありません。拭くのが面倒かどうかの問題です。サンフランシスコSPCAも、収まるまでのあいだ、玄関まわりの床を吸水性のあるものやビニールで守っておくよう勧めています。洗える大判の吸水マットを2枚、交互に。下に防水シートを1枚はさむと、床の継ぎ目に染みずに済みます。ペーパーと酵素系のペット用クリーナーは靴箱にまとめておくと、取りに行く手間がなくなり、対応が静かになります。アンモニアを含む洗剤は、犬の鼻には尿と近いにおいに届くので使いません。

マナーウェアは、日と場面を決めて使う

おむつやマナーウェアは、収まるまでの期間なら使ってよい、というのが獣医師の解説での扱いです。理由が面白い。助かるのは犬ではなく、飼い主のほうなのです。汚されるかもと身構えている人は、動きが硬くなり、声も上ずります。そのぶん、犬にもよく働くそうです。使いどころは、来客がある日、人の家にお邪魔する日、宿や車の中、動物病院の待合。毎日つけっぱなしにするものではありません。

マナーウェアを使う日の3つ

  • 時間を区切る。来客の30分前につけて、帰ったら外す。長時間つけたままだと蒸れて皮膚が荒れます。暑い時期はとくに短く
  • 濡れたら替える。中の吸水パッドだけ交換できるタイプなら、外さずに済むので犬の負担が軽くなります
  • つけている日も、迎え方の手順は休まない。ここを飛ばすと、外した日にそのまま元へ戻ります

つけると固まって動かなくなる犬もいます。初めて使う日は来客当日ではなく、何もない日に5分だけつけて外すところから。犬用のマナーウェア(吸水パッド交換式)は、足の付け根に近い位置の太さで測って選びます。

やってはいけないNG対応

ソファの下に体を入れてこちらをうかがう犬(イメージ)

ここに並べるのは、どれも良かれと思って選ばれる対応です。なんとかしようとした結果、いちばん届かない方向へ進んでしまいます。

その場で叱る、大きな声を出す。声が低く大きいほど、犬にとっては圧が強い。UCデービス校が挙げている引き金の一覧にも、低くて大きな声が入っています。同じ並びにあるのは、叱ること、罰、そして人が近づいてくることです。止めようとして使っている手が、そのまま引き金の一覧に載っているという構図です。

鼻を近づけて分からせようとする。粗相の対応として今も紹介されますが、うれしょんでは噛み合いません。犬が受け取るのは「排泄を人が嫌がっている」というところまでで、「だから玄関ではやめよう」には届かず、人が近づくこと自体が怖くなります。缶を振る、床を叩くといった音で驚かせる方法も同じです。

「人の言うことを軽く見ているから」という見立てを採る。そこからは、体を押さえる、目をそらすまで見つめ返す、といった対応が出てきます。どれもうれしょんを減らしません。犬の中で起きているのは、感情が跳ね上がり、それにつられて括約筋の力が抜けることだけ。見立てを変えれば、選ぶ手も変わります。

首輪の側で罰を出す道具(電気、スプレー、超音波)に頼る。これは選ばないでください。詳しい理由はあとの質問に回しますが、ひとことで言えば意思で出していない反応に罰を当てるのは、原理からして成り立たないからです。

そっけなくしすぎて、関わりを減らしてしまう。「無視すればいい」と読んで、帰宅後ずっと犬を避ける家があります。無視するのは最初の5分だけ。関わりを切るのではなく、始まりの合図を静かなほうへずらすのが目的です。

2週間の帰宅記録を見ても減らないとき

夕方のリビングでくつろぐ犬(イメージ)

うれしょんが残っている家は、手順を知らないわけではありません。知っているのに、その1回だけできないのです。残業して疲れて帰った日。子どもが先に「ただいま!」と叫んだ日。その日だけ全部飛ぶ。飛んだ1回が、また次の1回を呼びます。

もうひとつ、自分の動きは自分では見えません。しゃがんだつもりで腰を曲げただけになっている。低い声のつもりで、いつもより半音高い。床に残るのは結果だけで、そこへ至る10秒は誰も見ていない。うれしょんの厄介さはここにあります。2週間ぶん帰宅を記録しても回数が動かないなら、手を借りる先は3つあります。

  • 自宅に来てもらうタイプの教室。人の動きを外から見てもらえるのが利点です。うれしょんは相手が変わると出方も変わるので、初回はトレーナー自身が「はじめての来客」になります。全国のしつけ教室で、出張と個別レッスンをやっている教室を地域から探せます。
  • オンライン教材で、人の側を直す。自分の動きを見る代わりに、手本の映像と見比べる方法です。この下で触れます。
  • 動物病院。成犬になってから始まった、寝ているあいだにも濡れる、おしっこの量や回数が変わった。このどれかなら、練習より先に受診してください。判断の材料はしつけ教室の選び方に並べてあります。

玄関のドアを開けるのは、いつも同じ人です

レッスンの1時間、犬はたいてい落ち着いています。水たまりができるのは、鍵が回った音がした瞬間、家族が「ただいま」と言った瞬間、子どもが玄関へ走った瞬間です。どれも約束の時間に呼び出せません。その瞬間に玄関に立っているのは、いつも家族です。手順のひとつずつに理由がついていれば、疲れた日にも同じ角度で手が出ます。

ここで挙げる「イヌバーシティ」は、犬より先に飼い主のほうを整える作りのオンライン教材です。技を教える段取りより、人のふるまいが犬にどう届いているかの説明に時間を使っています。1,260分の映像には、手をどう動かすか、途中で犬の様子がどう移り、最後にどこへ落ち着いたかまで入っています。子犬向けと成犬向けが分けてあり、体罰の場面は出てきません。申し込んだその日からスマホで見られ、期限で消えることもありません。43,780円(税込)です。帰宅の場面を見てもらうには時間帯を合わせる必要があるうえ、プライベートレッスンの相場は1回5,000〜15,000円。高いほうの帯で3回ぶんと、ちょうど並びます。

ここは正直に書きます。映像を見たうえで、自分の家の玄関に当てはめて試す形の教材です。「今日の帰宅から何をすればいいか、電話で指示してほしい」なら、出張レッスンを1回頼むほうが早い。向いているのは、なぜ目を合わせないのか、なぜあごの下なのかを納得して動きたい方と、同じ映像を家族で見て迎え方をそろえたい方です。

玄関の水たまり、来客のたびの謝罪、名前を呼んだだけで出してしまう——いろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となっていませんか? 走ってきた犬に、人がどの高さから、どの角度で手を出しているか。文章では詰めきれない間合いの部分です。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。挨拶の場面をひとつ見て、明日の帰宅時の参考にしてみてもいいと思います。

犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

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※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

よくある質問

Q. うれしょんは何歳まで続きますか?

多くの犬は1歳前後までに収まります。挨拶での高ぶり方が落ち着くことと、尿をためておく力が育つことが同時に進むからです。ただし「何もしなくても消える」という話ではありません。サンフランシスコSPCAも、自然に収まるという説明に罰で悪化させていないことという条件をつけています。1歳を過ぎても続くなら、怖さの側が強くないか、日常の興奮が高すぎないか、体に原因がないかを順に確かめてください。

Q. 成犬になってから急に始まりました

練習より受診が先です。膀胱や尿道の炎症、結石、前立腺の肥大、多飲多尿を起こすホルモンの病気など、しつけでは動かない原因がいくつもあります。目安は興奮していない場面でも濡れているかどうか。寝ているあいだ、じっとしているときにも漏れているなら、まず病院へ。いつから、1日何回、どんな場面で、どのくらいの量かを3日分メモして持って行くと、話が早く進みます。

Q. 避妊や去勢をすれば止まりますか?

止まる根拠は見当たりません。マーキングのように手術との関係が調べられている行動とは事情が違います。むしろ避妊手術後の雌犬では、性ホルモンが減った影響で尿道の締まりが弱くなり、別の形で尿が出てしまうことがあると獣医師が説明しています。手術の判断は、うれしょんとは切り離して、かかりつけの獣医師と相談してください。

Q. 家族の中で、夫にだけ漏らします

珍しくありません。手がかりは背の高さ、声の低さ、近づき方の速さの3つです。上から手を伸ばす、正面からいきなり近づく、ドアを勢いよく開ける。どれも犬にとって圧が強く出ます。対策は、その人だけ手順を厳しめに守ること。玄関で必ずしゃがむ、体を斜めに向ける、あごの下だけ触る、名前は呼ばない。2週間で変わることの多い部分です。

Q. 電気やスプレーが出る首輪はどうですか?

うれしょんの場合、道具の良し悪し以前で話が終わります。犬が意識して行っていない反応に罰を当てても、行動と罰は結びつきません。結びつくのは「人が近づくと嫌なことが起きる」のほうで、これは服従性排尿をまっすぐ悪化させます。道具そのものについてもAVSABの立場ははっきりしています。電気やスプレーの出る首輪、プロングカラーやチョークチェーンのように首を締めるもの、リードショック。こうした身体的・心理的な罰は、いかなる状況でも使うべきではない。道具の種類にも、扱う人の経験にもよらない、と。

Q. マナーウェアをつけたままにしておけば解決しますか?

床は守れますが、漏れる回数そのものは変わりません。あくまで掃除の手間を減らすための一時的な道具です。つけたままにしておくと、蒸れて皮膚が赤くなることがあるので、濡れたら替えてください。減らすほうの手当ては、迎え方を変えることです。興奮の山を作らなければ、ウェアに頼る場面自体が減っていきます。においが残ると、そこを排泄場所として覚えることもあるので、床の掃除もあわせて行ってください。

まとめ

今日から動かせるのは、この6つです。

  1. 意思で出しているものではない。感情が高ぶって括約筋の力が抜ける反応です。だから「教える」方向では減らず、叱ると増えます
  2. 中身は2種類。立ったまま跳ねながら出るのが興奮性、体を低くして固まってから出るのが服従性。混ざる犬が多く、どちらでも「近づく・手を伸ばす・目を合わせる・高い声」を弱めるのは共通です
  3. 帰宅は、見ない・しゃがむ・低い声・あごの下。入ったら5分は無視して、犬のほうから来るのを待ちます。家族全員が同じようにやることが条件です
  4. 来客には頼み方を用意しておく。5分見ない、しゃがんで横向き、触るのは10秒。同じ人に何度か出入りしてもらうと、反応が回を追って下がります
  5. 置き換える行動を1つ決めて、弱い刺激から。玄関から2メートル離れたマットへ行く、が扱いやすい。1日に進めるのは1段階まで
  6. 掃除道具とマナーウェアは、続けるための道具。玄関に吸水マットを敷き、拭くものを靴箱に入れておく。回数を減らすのは手順のほうです

うれしょんは、犬が喜びすぎているだけの困りごとに見えて、人の動き方で大きく変わります。犬を変えようとするより、玄関の10秒を組み直すほうが早い。うまくいかないときは、玄関のやりとりを1回だけ動画に撮ってみてください。自分がどれだけ声を高くしていたか、どこまで近づいていたかが、その1本で分かります。お住まいの地域のしつけ教室に相談するときも、その動画があるほうが早く話が進みます。

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※ 記事内の月齢や期間は目安です。犬種、体格、これまでの経験によって進み方は変わります。
※ 病気についての記述は一般的な説明です。急に始まった、量が増えた、眠っているあいだにも漏れるといった様子があれば、早めに動物病院で相談してください。

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