犬の室内マーキングをやめさせる方法|去勢で直る場合・直らない場合

犬のしつけ方

ソファの脚。テレビ台の角。玄関に置いたままの宅配の段ボール。トイレはちゃんと覚えているはずなのに、そういう場所にだけ、ほんの少しかけられている。拭いても数日するとまた同じところ——室内のマーキングで困っている家は、だいたいこの形で困っています。

先に、いちばん大事なところを書きます。マーキングは、トイレを覚えていないから起きているのではありません。覚えたうえで、それとはまったく別の目的で少量の尿を置いていく行動です。だから「トイレをもう一度教え直す」方向では減りません。要るのは、においを断つこと、かけられる面をなくすこと、足が上がる直前に別のことをさせることの3つです。

そしてもうひとつ。去勢で減る犬は多い。ただし全部ではなく、行動が習慣として定着したあとには残ることがあります。報告されている数字の幅をぼかさずに並べ、どこまで期待できてどこからが別の手当てかを分けました。粗相との見分け、5つの引き金、においの断ち方、雌犬のマーキング、マナーベルトの位置づけまで書きます。

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最終更新 2026年9月8日

  1. マーキングは、トイレの失敗ではありません
    1. ひとつは体の都合、もうひとつは他の犬あての伝言
    2. だから、トイレを教え直しても減りません
    3. 始まるのは、体が大人になる時期
  2. 【表】粗相・マーキング・尿失禁を見分ける
  3. 室内でマーキングが始まる5つの引き金
    1. ②が最多です。物の置き場所を変えるだけで減ります
    2. ③と④は、掃除だけでは減りません
  4. 去勢・避妊で減る場合と、減らない場合
    1. 報告されている数字を、そのまま並べます
    2. 減りにくいのは、この2つの場合です
    3. 雌犬のマーキングと、避妊手術
  5. 【今日からの手順】においを断ち、場所をふさぎ、その瞬間を変える
    1. 1|においを完全に断つ
    2. 2|かけられる面を、物理的になくす
    3. 3|見ていられない時間を作らない
    4. 4|「その瞬間」に何をするか
    5. 5|その場所の意味を書き換える
    6. 6|散歩を早めて、外で先に済ませておく
    7. 7|マナーベルトは、時間を稼ぐための道具です
  6. やってはいけないNG対応
  7. 2週間の記録を見ても減らないとき
  8. よくある質問
    1. Q. 去勢すれば、マーキングは必ず止まりますか?
    2. Q. 何歳までなら去勢の意味がありますか?
    3. Q. メス犬なのにマーキングします。おかしいですか?
    4. Q. マーキング防止スプレーには効果がありますか?
    5. Q. 散歩中のマーキングも、やめさせるべきですか?
    6. Q. 多頭飼いです。後から迎えた犬が始めました
    7. Q. 電気やスプレーの出る首輪、しつけ用の機械はどうですか?
  9. まとめ

マーキングは、トイレの失敗ではありません

リビングの壁際で家具の脚のにおいを嗅ぐ小型犬(イメージ)

この章で押さえたいことは3つです。排泄とマーキングでは犬の目的が違うこと。だから教え直しでは減らないこと。そして、始まる時期がほぼ決まっていることです。

ひとつは体の都合、もうひとつは他の犬あての伝言

ふつうの排尿は生理現象です。膀胱が満ちたので空にする。目的はそれだけなので、一度にまとまった量が出て終わります。

マーキングは違います。尿を「置く」ことそのものが目的です。米国獣医行動学専門医のデブラ・ホロウィッツ獣医師は、獣医師向けの解説で、マーキングとして出される量は数滴ということも珍しくないと書いています。少ないから失敗なのではなく、数滴で用が足りる仕事なのです。あとから通りかかった犬は、その数滴を嗅ぐだけで、相手の性別も、年ごろも、いま繁殖できる状態かどうかも受け取ります。犬にとってはごく普通のやりとりの一部です。困るのは、それが室内の壁や家具で起きたときだけです。

だから、トイレを教え直しても減りません

多くの家がここでつまずきます。粗相のつもりでトイレの位置をずらし、シーツを足し、うまくいった回を褒める。それでも回数が動かない。当然で、その犬はもともとトイレの場所を分かっているからです。前出の解説によれば、室内でのマーキングは、外でどれだけ出してきたかとはほとんど関係なく起きます。膀胱を空に近い状態にして帰った犬でも、わずかな残りで足りてしまうからです。「散歩で出し切らせれば止まる」も成り立ちません。

始まるのは、体が大人になる時期

ある日いきなり始まったように見えて、実は年齢に沿っています。米国のペット医療情報サイトPetMDに寄稿する獣医師は、多くの犬で性成熟を迎える生後6〜12ヶ月ごろから始まると書き、米国ケネルクラブ(AKC)の解説は6〜9ヶ月ごろとやや早い幅を挙げています。国内のドッグトレーナーの実感もほぼ同じで、いちばん多いのは生後7〜8ヶ月、早い犬は4〜5ヶ月からです。

最初の1回を、家の中で成功させないことが最大の分かれ目です

マーキングは、繰り返すほど場所と結びついて固まります。しかも一度ついたにおいは、翌日もその場所を候補に残します。対策の届きやすさは、始まってからの日数で大きく変わります。すでに始まっているなら、今日から掃除と遮断を同時に始めてください。

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犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

マーキングされたら、その場でどう対応していますか?

マーキングの場所は、同じ場所ですることを繰り返すうちに固まっていきます。分かれ目は見つけた直後の対応ですが、そこは文章にすると伝わりにくいところです。
声の出し方も片づけ方も、映像なら簡単に確かめられます。「イヌバーシティ」は犬ではなく飼い主の側を鍛える教材です。室内の場面が多く入っていますよ。

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※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

【表】粗相・マーキング・尿失禁を見分ける

玄関に置かれた段ボール箱のにおいを嗅ぐ犬(イメージ)

目に入るのは同じ「床の濡れ」でも、中身が違えば手順が変わります。見るところは6つ。量、場所、姿勢、かかる時間、新しい物への反応、そして普段の排泄です。

見るところトイレの失敗(粗相)マーキング
1回の量まとまった量。床に広がる数滴から少量。にじむ程度で終わる
場所床、ラグ、シーツの近くなど平らな面。1か所にまとまりやすい壁、家具の脚、柱、ゴミ箱、置いてある荷物といった立った面。家の何か所にも散る
姿勢腰を落として座り込む。出し切るまで動かない片足を上げる、または後ろ足を軽く浮かせて腰をずらす。立ったまま済ませる
かかる時間健康な犬で20秒ほど数秒。気づいたときには終わっている
新しい物・来客への反応特に関係なく起きる宅配の箱、買ってきた家具、来客のかばんや靴に集中する
普段の排泄そちらも失敗している散歩でも室内でも、普段はきちんとできている

いちばん確かな決め手は、いちばん下の行です。普段の排泄がちゃんとできているかどうか。散歩でも室内のトイレでも用が足せていて、その一方で壁や荷物にだけ少し残るなら、必要なのはトイレの教え直しではありません。粗相の手順が要るなら成犬のトイレのしつけ直しにまとめてあります。なお、眠っているあいだに寝床が濡れる、本人は気づいていない、排泄の姿勢をとっていない、という形は尿失禁で、しつけでは変わりません。

練習より先に受診したほうがよい様子

  • これまで一度もなかったのに、急に室内でするようになった
  • 少しずつを何度も出そうとする。排尿の姿勢をとるのに出ない
  • 飲む水の量も、出るおしっこの量も、前より増えている
  • 尿の色がいつもと違う。赤みがある
  • 7歳を過ぎてから始まった。夜中に歩き回る、名前を呼んでも反応が薄いといった変化も一緒に出ている

膀胱炎や結石で痛みがある犬は、出したいのに出しきれず、短い間隔で何度も姿勢をとります。飼い主の目には、マーキングとほとんど同じ形に映ります。受診を先にすべきかの判断材料はしつけ教室の選び方にも並べてあります。

室内でマーキングが始まる5つの引き金

窓の外を見つめて立っている犬(イメージ)

マーキング自体は正常な行動ですが、それが室内で起きるときには、たいてい引き金があります。どれに当たるかで手のつけどころが変わります。複数が重なっている家も珍しくありません。

引き金犬の側で起きていることまず手をつけるところ
① 性成熟生後半年を過ぎ、足を上げる動作そのものが出るようになった始まったばかりなら遮断と掃除を最優先で。去勢は次の章で
② 新しい物・来客・他の犬のにおい自分のにおいがついていない物が家に入った。上から重ねようとする荷物と段ボールを床に置かない。玄関で止めて高い位置へ
③ 不安とストレス1日の予定が読めなくなった。留守番の長さの変化、工事の音、家族の増減1日の流れを元に戻す。運動と関わる時間を先に確保する
④ 多頭飼いの緊張同居犬との関係が落ち着いていない。避ける、いさかいが増えたといった変化が先にある寝床・水・おもちゃを頭数より多く、離して置く
⑤ 体の病気頻尿、痛み、多飲多尿、歳をとってからの認知機能の衰え動物病院へ。行動の手順より先

②が最多です。物の置き場所を変えるだけで減ります

米国のいくつかの動物福祉団体の解説も、そろって同じ点を挙げています。ヒューロンバレー動物愛護協会は、来客の持ち物や買ってきたばかりの物を戸棚にしまい、犬の届く床に置かないという、身もふたもなく単純な手を最初に勧めています。

日本の住宅は玄関から居室までが近いので、ここが大きい。宅配の段ボール、旅行から帰ったスーツケース、犬を飼っている友人の靴とかばん。この3つを床に置かないだけで家の中のマーキングが半分になった例は、いくらでもあります。ドッグランやペットホテルから帰った日は、自分の靴と上着も同じ扱いに。

③と④は、掃除だけでは減りません

不安が引き金の場合、においを消してもふさいでも、別の場所に移るだけになります。ホロウィッツ獣医師は、マーキングをする犬の多くは不安を抱えていると述べ、運動も関わりも決まった時間に置いて、毎日の流れを犬に読めるものにすることを挙げています。思い出してほしいのは、始まる直前の2週間です。模様替え、在宅勤務の終了、家族の入院、近所の工事。心当たりが出てくることがよくあります。ひとりのときに限って起きる、物が壊れていたり鳴き続けた跡があるなら、扱う問題が違います。対応の順番は犬の分離不安の記事にまとめてあります。

多頭飼いの緊張は、飼い主から見えにくいのが厄介です。派手なけんかがなくても、通り道でどちらかがよける、一方が近づくと他方が場所を移す、といった小さな回避が続いていることがあります。マーキングは、その関係が落ち着いていない合図として先に出ることがあります。

去勢・避妊で減る場合と、減らない場合

動物病院の診察室で飼い主と獣医師の前に立つ犬(イメージ)

この章の柱は2つ。報告されている数字の幅を正しく知ること。そして、その数字が当てはまりにくいのはどういう犬かを知ることです。

報告されている数字を、そのまま並べます

ホロウィッツ獣医師の解説は、去勢の効果を調べた研究を2本引いています。先に、両方に共通する所見から。手術を受けたときの年齢と、改善の度合いのあいだに関係は見つかっていません。術後すぐに落ちる犬もいれば、時間をかけてゆるやかに変わる犬もいた、ともあります。そのうえで報告された割合が、次の数字です。

  • ホプキンスらの報告:去勢した雄犬の50〜60%で、マーキングがなくなるか、はっきり減った
  • ニールソンらの報告:飼い主に電話で聞き取ったところ、回数が9割減った犬が25〜40%。半分減ったところまで数えると60〜80%になった

いっぽうで、逆の報告もあります。2026年に公表された去勢・避妊と行動に関する総説は、シェルターの犬を観察した研究の減り方の幅を25%未満から75%までと示したうえで、去勢した雄と未去勢の雄でマーキングに差が見られなかったとする報告も併記しています。結果はきれいにそろっていません。この総説は、行動を変えることだけを目的に一律で手術を勧めるべきではなく、その犬の事情に沿って個別に判断すべきだと結論づけています。

減りにくいのは、この2つの場合です

ひとつめは、行動が習慣として定着したあと。同じ総説が引く1974年のビーチの実験では、成犬になってから去勢した雄と、去勢していない雄とを比べても、排尿の回数にも、足を上げる姿勢の出方にも差がありませんでした。総説はここから、テストステロンは足を上げて立った面にかけるという大人の型を作る段階には要るが、できた型を保つ側では重みが下がる、と読んでいます。ここが「去勢で直る場合と直らない場合」の中身です。始まって日が浅いほど、手術の効きは見込みやすくなります。

ふたつめは、不安が引き金の場合。手術で動かせるのはホルモンの側だけです。犬が落ち着かない理由が家の中にあるなら、そこは手つかずで残ります。前の章の③と④に当たる家は、手術より先に環境を整えてください。なお同じ総説が引く1976年のホプキンスらの報告では、去勢後の変化を見るには最低でも半年の観察が要るとされています。1か月で変わらないからと落胆しないでください。

雌犬のマーキングと、避妊手術

獣医学の標準的な資料であるMerck獣医マニュアルは、マーキングは雌でも、特に発情期に、そして避妊済みの犬でも起きると明記しています。姿勢は分かりにくく、片足を高く上げるとは限りません。腰をわずかにずらす、後ろ足を少し浮かせる程度の犬もいます。「しゃがんでいたから粗相だ」と決めつけないでください。前出の総説は、避妊した雌と未避妊の雌でマーキングの頻度に差がなかったという複数の報告も紹介しています。雌の場合、避妊でマーキングそのものが減るとは言いにくいのが現在の見取り図です。

最後にひとつ。手術は体に対する処置です。時期も麻酔のかけ方も、その後の体重や関節への影響も、犬種と体格と持病で変わります。この記事の役割は、期待できる幅を正直に示すところまで。やるかどうかも、いつやるかも、その子を診てきた獣医師との相談で決めることです。東京都動物愛護相談センターが出している専門家コラムも、マーキングがあまりに多い未去勢の雄について、獣医師と手術を相談してみるのもひとつの案だという書き方をしています。断定していないのは、断定できないからです。

【今日からの手順】においを断ち、場所をふさぎ、その瞬間を変える

床にしゃがんで壁ぎわを拭いている飼い主の手元(イメージ)

ここからが実際に手を動かす部分です。順番に意味があります。においを断つ、面をなくす、時間を作らない、瞬間を変える、意味を書き換える。変化が早く出て手間の少ないものから並べました。

1|においを完全に断つ

人の鼻で分からなくなっても、犬の鼻には残っています。残っているかぎり、その一点は翌日も候補のままです。犬から見れば、においは「ここは使ってよい」という札の代わりだからです。掃除は片づけではなく、手順の一部だと考えてください。

  1. まず、どこにあるのかを探す。AKCの解説は、掃除のあとに紫外線ライトを当てて拭き残しを確かめる方法を挙げています。ペット用の紫外線ライト(ブラックライト)で部屋を暗くして壁と巾木を照らすと、思っていたのと違う場所が光ることがよくあります
  2. こすらず、上から押さえて吸い取る。拭き広げると、においの範囲まで一緒に広がります
  3. 尿を分解する成分が入ったものを選ぶ。いわゆる酵素系のペット用クリーナーです。ホロウィッツ獣医師も、酵素入りの製品がいちばんよく働き、落としきるには何度か繰り返す必要があると書いています。すぐ拭かず、表示どおりの時間を置いてください
  4. においを、においで覆わない。アンモニアは尿にも含まれる成分です。消したい場所に、犬から見て同じ種類の目印を足すことになります。香りの強い消臭剤も同じで、ヒューロンバレー動物愛護協会は、においのきつい洗剤が上塗りを誘うと注意しています

2|かけられる面を、物理的になくす

  • 床に物を置かない習慣にする。段ボール、紙袋、脱いだ靴、旅行かばん、来客の荷物。玄関で受け取ったら、その足で棚の上か別室へ
  • やられる部屋そのものを閉じる。米国の動物病院グループVCAの解説は、道路に面した窓の近くでマーキングする犬には、その部屋に入れないこととカーテンを閉めることの2つを挙げています。突っ張り式のペットゲートがあれば十分です
  • 外の犬が見えないようにする。腰高までの目隠しシートを窓に貼るだけで、引き金が視界から消えます
  • 気に入られた家具の脚は保護シートで巻く。においが染みるのを止められ、掃除の負担も減ります

3|見ていられない時間を作らない

地味ですが、ここを甘くすると他が全部無駄になります。見ていない時間に成功した1回が、そのまま次の1回を呼びます。ヒューロンバレー動物愛護協会の解説も、見ていられないあいだはサークルかクレートに入れるか、リードで自分とつなぐか、の2つを挙げています。家事をしながら数メートルの範囲に置いておくだけで、足が上がる前に気づけます。目安は2週間。その2週間で家の中のにおいを消し切ってしまうのが狙いです。

4|「その瞬間」に何をするか

予兆はほぼ決まっています。一か所を執拗に嗅ぐ。いつもより長い。鼻先が床から数センチのところで止まる。ここが分かれ目です。

  1. 叱らず、名前を呼ぶか手を鳴らす。驚かせるのが目的ではなく、注意をこちらへ向けるだけです。大声を出すと不安が増え、その不安がマーキングの燃料になります
  2. すぐに別の行動を頼む。おすわり、伏せ、手にタッチ。ホロウィッツ獣医師は、足を上げる動作とは両立しない行動を教え、そちらにごほうびを出す形を勧めています。おすわりはその代表格です
  3. できたらその場で渡す。3秒以内。米粒大に切ったささみやチーズを、ポケットから出して口へ
  4. 中断させたあと、外へ連れ出さない。VCAの解説は、本当に排泄したいわけでないなら、中断のあと外へ出すのは避けるようにと書いています。別の場所でやり直させているのと同じになるからです

5|その場所の意味を書き換える

ヒューロンバレー動物愛護協会は、においを消しても遮断もできない場所については、その場所の意味そのものを変えてしまう手を挙げています。食べたり遊んだりした場所を、犬は汚したがらない。そこを逆手に取るやり方です。狙われ続けた壁ぎわの床に、おやつを数粒ばらまいて鼻で探させる。1日2回、1週間ほど続けます。次の段階として、その位置へ数日だけフードの器を移してもかまいません。器を元に戻したあとも、そこは「探して食べた場所」として残ります。掃除が不十分なままやると失敗するので、順番だけは守ってください。

6|散歩を早めて、外で先に済ませておく

外で出させれば室内で止まるわけではありませんが、散歩は要ります。膀胱に余裕があるほど、室内で置いていける量が減るからです。ポイントは時間帯。夕方に室内のマーキングが集中する家では、散歩を1時間前倒しするだけで回数が落ちることがあります。東京都の「犬と散歩をするときの3つのルール」も、外へ出る前に家で排泄させておくことを飼い主に求めています。

7|マナーベルトは、時間を稼ぐための道具です

ここははっきり書きます。マナーベルトやおむつは、床と家具を守る道具であって、マーキングを減らす道具ではありません。VCAの解説も、訓練が済むまでのあいだ物を汚さないためのもので、犬にマーキングをやめることを教えるものではないと明記しています。使う場面は、来客がある日、犬連れで人の家に行く日、旅先の宿、車の中。これだけで済ませようとすると、外した日に元どおりになります。

マナーベルトを使うときの3つ

  • 体重ではなく、巻く位置の周囲で選ぶ。ベルトが乗るのは足の付け根に近い下腹部です。ペトコトの解説も、その位置を一周させた長さで選ぶよう書いています。犬種で体格が違うので、表示どおりに合わないこともあります
  • 濡れたら替える。何度も出したまま放っておくと毛の色が変わり、肌の弱い子は赤くなることがあります。暑い時期のつけっぱなしも避けてください
  • つけている日も、掃除と遮断は休まない。ベルトは時間を買っているだけです

やってはいけないNG対応

ソファの陰から顔だけ出してこちらをうかがう犬(イメージ)

マーキングは、飼い主の腹立ちがいちばん出やすい困りごとです。「わざとやっている」と感じるからです。ただ、そこから出る対応はどれも逆向きに働きます。

あとから見つけて叱る。ホロウィッツ獣医師は、罰がかろうじて機能するとしたら犬がその動作を始めた1秒以内に限られ、すでに済ませたあとの罰は使うべきでないとしています。犬が学ぶのは「この場所は危ない」ではなく「飼い主が急に怖くなった」です。

大声を出す、床を叩く、物音で驚かせる。たしかにその場は止まります。ただしマーキングの背景には不安があることが多く、そこへ恐怖を足すことになります。VCAの解説も、叱ったり驚かせたりすると恐れが引き出され、長い目で見ればマーキングが悪化しうると書いています。燃えている場所に燃料を運んでいるのと同じです。

鼻を尿に押しつける。犬が理解するのは「室内でしたことがまずかった」ではなく、飼い主が排泄物そのものを嫌っているらしい、というところまでです。結果として、見つからない場所でやるのが上手になります。米国獣医動物行動学会(AVSAB)も2021年の声明で、犬に教える手段として認められるのは報酬を土台にした方法だけだとし、体と心に苦痛を与える罰は、いかなる状況でも使うべきでないと述べています。代わりに何をするかは叩いたり叱ったりせずにしつける方法にまとめてあります。

センサー式のしつけ道具や、電気やスプレー、超音波の出る首輪を使う。近づくと嫌なことが起きる仕掛けは、ホロウィッツ獣医師の解説にも環境側の罰として名前が挙がっています。それでもこのサイトでは採りません。理由は単純で、引き金が不安のときに嫌な出来事を足せば、引き金そのものが太くなるからです。装置の届く範囲を避けても、置きたい気持ちは残ります。移動先が変わるだけ。

「自分のほうが偉いと思っているから」と説明する。この説明を採ると、押さえつける、先に食べる、目を合わせて引かせるといった対応に流れます。どれもマーキングを減らしません。犬の側で起きているのは、においを置く動作と、そのあとに何も困ったことが起きなかったという学習だけです。説明を変えると、打つ手が変わります。

2週間の記録を見ても減らないとき

夕方のリビングでくつろぐ犬(イメージ)

ここまでの手順を2週間続けても回数が動かない家には、たいてい同じ事情があります。手順を知らないのではなく、そのどれかが家の都合でほんの少しずつ崩れているのです。段ボールは片づけているけれど、来客の荷物だけは玄関に置いたまま。掃除はしているけれど置き時間が足りていない。家族のうち一人だけが、今も見つけたときに大声を出している。

崩れている場所は、たいてい家の中からは見えません。マーキングは数秒で終わるので、そもそも現場に居合わせていないからです。床に残った跡だけを見て、そこへ至る数十秒を誰も見ていない。この構造がある以上、外から見てもらうのが早い。行き先は3つです。

  • 家に来てもらう形のしつけ教室。マーキングは家の中で起きるので、間取りと動線を見てもらえる出張型が向いています。犬がどの窓から外を見ているか、掃除の抜けはどこか。半日その家にいれば分かることです。全国のしつけ教室で、出張に応じてくれるところを地域から探せます。
  • 飼い主の側が学ぶオンライン教材。崩れやすいのはどこか、自分の目で拾えるようになる道です。この後で書きます。
  • 動物病院。急に始まった、少量を何度も出そうとしている、年をとってから回数が増えた、同居犬との関係が険しくなっている。この4つが当てはまるなら、練習の前に受診してください。見きわめ方はしつけ教室の選び方にも書いています。

足が上がる直前の3秒に、そこにいるのは飼い主だけです

マーキングが出るのは、宅配のチャイムが鳴った直後、来客が靴を脱いだ直後、外の犬が窓の前を通った直後です。どれも、こちらの都合では起こせません。レッスンの時間をいくら積んでも、肝心の3秒はそこに入ってきません。名前を呼んで別の行動へ振り替える役は、その家で暮らす人に固定されています。掃除が先で遮断が次である理由まで分かっていれば、その3秒を何度でも同じように扱えます。

「イヌバーシティ」は、その飼い主の側を作るための教材です。収録1,260分。やり方と、その途中経過と、行動がどう変わったかという結果まで映像で追えます。子犬用と成犬用に分かれ、叩く・怒鳴るといった扱いは出てきません。43,780円(税込)。マーキングは場所も時間帯も絡むので出張トレーニングでは1回で見きれず、たいてい複数回になります。1回8,000〜20,000円の高いほうで2〜3回ぶんと、ほぼ同じ金額です。

正直なところを書いておきます。これは映像を見て、自分の家の間取りに置き換えて試す形の教材です。「うちの玄関のどこに何を置けばいいか、今日決めてほしい」なら、出張トレーニングを1回頼むほうが早い。向いているのは、なぜ掃除が先で遮断が次なのかを納得してから動きたい方。それと、家族に同じ映像を見せて対応をそろえたい方です。

壁の角、来客のかばん、届いたばかりの段ボール——いろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となっていませんか? 一か所を長く嗅ぎ始めた犬に、人がどの距離から声をかけ、次に何をさせているか。文字だけでは伝わりにくい間合いの話です。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。成犬の回をひとつ見て、それから自分のワンちゃんへの対応を組み立てても遅くはありません。

犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

イヌバーシティの中身を覗いてみる

※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

よくある質問

Q. 去勢すれば、マーキングは必ず止まりますか?

止まる保証はありません。去勢した雄の50〜60%でなくなるか大きく減ったという報告がある一方、差が見られなかったとする報告もあります。期待できるのは「減ること」であって「ゼロになること」ではないと考えておくのが実際に近いです。すでに習慣が固まっている場合と、不安が引き金の場合は特に動きにくくなります。掃除と遮断は、手術をするかどうかにかかわらず必要です。

Q. 何歳までなら去勢の意味がありますか?

年齢の上限を示した研究は見当たりません。むしろ本文で紹介した2本の研究はどちらも、手術したときの年齢と改善の度合いのあいだに関係を見つけていません。「もう5歳だから遅い」と決める根拠は、少なくともマーキングに関してはないということです。ただし手術には麻酔があり、年齢が上がれば体への負担も変わります。受診のときは、始まった時期、1日の回数、場所、量の4点を3日分書き留めて持って行くと話が早く進みます。

Q. メス犬なのにマーキングします。おかしいですか?

おかしくありません。Merck獣医マニュアルも、マーキングは雌でも避妊済みの犬でも起きると書いています。発情期に増える犬もいますし、他の動物のにおいの上に重ねる形で出ることもあります。量が少ない、立った面や置かれた物に集中している、普段の排泄はできている。この3つがそろえばマーキングとして扱ってください。

Q. マーキング防止スプレーには効果がありますか?

使うなら順番があります。市販の忌避スプレーの多くは柑橘や酸のにおいで近づきにくくするものですが、元のにおいが残ったままかぶせても、上塗りを誘う側に働くことがあります。まず酵素系のクリーナーで分解しきる。それでもその場所を狙うなら補助として試す。この順です。ここに書いたのは使い方の順番であって、商品そのものの働きを保証するものではありません。

Q. 散歩中のマーキングも、やめさせるべきですか?

散歩中のマーキングは、すべてを禁じる必要はありません。屋外でにおいを嗅ぎ、においを残すのは犬にとってふつうのやりとりです。VCAの解説も、外でのマーキングをゼロにしようとするのは現実的ではないとしています。区別するのは場所です。よその家の門柱、店の前、公園の遊具や砂場、子どもが遊ぶ芝生。ここは止める。それ以外の迷惑にならない場所ではさせる。やむを得ずしてしまった場所は、ペットシーツで吸い取ってから水で流すと、水だけをかけて広げるより後に残りません。

Q. 多頭飼いです。後から迎えた犬が始めました

この場合、掃除と遮断だけでは足りません。先に見るのは、2頭の関係が落ち着いているかどうかです。通り道でどちらかがよける、片方が来ると場所を移す、食事のときだけ空気が張りつめる。こうした小さな回避が続いているなら、そこが本体です。寝床、水、おもちゃ、飼い主のそばの場所を、頭数より多く、離して用意してください。それでも続くなら、家の中の犬どうしの関係は自己流で動かすと悪化しやすいので、行動診療を扱う獣医師に早めに見てもらってください。マウンティングが一緒に増えているなら犬のマウンティングをやめさせる方法も合わせてどうぞ。

Q. 電気やスプレーの出る首輪、しつけ用の機械はどうですか?

これは使わないでください。AVSABは2021年の声明で、電気首輪・プロングカラー・チョークチェーン・リードショックといった身体的、心理的な罰を、いかなる状況でも使うべきでないとしています。理由は2つ。報酬を使うやり方より優れているという裏づけがないこと、恐怖・不安・攻撃性が増え、飼い主との関係まで傷つくおそれがあることです。そのうえマーキングの背景には、たいてい不安があります。不安に罰を足すのは、いちばんやってはいけない足し算です。

まとめ

この記事の要点を、6つに絞ります。

  1. マーキングは粗相ではない。量は数滴、立った面、片足を上げるか腰をずらす、数秒で終わる。普段の排泄ができているなら、教え直しでは減りません
  2. 引き金は5つ。性成熟、新しい物と来客、不安とストレス、多頭飼いの緊張、体の病気。急に始まったなら、練習より受診が先です
  3. 去勢で減る犬は多いが、全部ではない。50〜60%でなくなるか大きく減ったという報告がある一方、差が出なかったとする報告もある。習慣が固まったあとと、不安が理由の場合は残りやすい
  4. 順番は、においを断つ・面をなくす・見ていない時間を作らない。紫外線ライトで探して酵素系で分解し、床に物を置かず、ゲートで部屋を閉じます
  5. その瞬間は、叱らずに名前を呼んで別の行動へ。おすわりは足を上げる動作と両立しません。中断したあと、外へ連れ出さないこと
  6. マナーベルトは時間を稼ぐ道具。床と家具は守れますが、行動そのものは止まっていません

マーキングは嫌がらせではなく、犬にとって普通のやりとりが室内で出てしまっているだけです。犬の側を変えにいくより、家の側を先に変えたほうが早く進みます。相談先の見当がつかないなら、まず粗相の場所を家の間取りに書き込んでみてください。壁際に集まっているのか、来客の動線に沿っているのか。それが見えるだけで、打つ手はかなり絞れます。

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※ 去勢・避妊に関する数値は、公表されている研究や総説の報告です。個々の犬に同じ結果をお約束するものではありません。手術をするかどうか、いつするかは、通っている動物病院でご相談ください。
※ 病気に触れた部分は、一般的な説明にとどまります。気になる様子があれば、早めに受診してください。

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