トイレシートの上でうんちをしたと思ったら、振り返った瞬間にもう口に入っている。散歩中は、よその犬の落とし物に一直線。叱っても、追いかけても、むしろ食べるのが速くなった。そんな状態なら、まず結論をお伝えします。食糞は「叱って直す」行動ではなく、「食べる機会をなくしながら、原因を1つずつ外していく」行動です。
犬が便を食べる理由は1つではありません。子犬の探索、退屈、叱られた経験、食事の量や消化の状態、そして病気。この記事では原因を5つに分けて見分け方を表にし、それぞれの対処を今日から2週間の手順で書きます。市販の「食糞対策」製品がなぜ期待ほど働かないことが多いのか、その理由もデータで説明します。
先に1つだけ。下痢や軟便、体重の減少、急な食欲の変化が一緒に起きているなら、しつけより先に動物病院です。その理由も本文で書きます。
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最終更新 2026年9月8日
まず知っておくこと:叱るほど「速く食べる犬」になる理由
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このセクションの要点は3つです。食糞は犬の世界ではありふれた行動であること。飼い主が思うほど「異常」ではないこと。そして、叱ることが行動を強める方向に働くことです。
16〜23%の犬が経験している、ごく普通の行動
カリフォルニア大学デービス校のHart(ハート)らが2018年に発表した調査では、飼い主約1,500人からの回答のうち、自分や他の犬の便を6回以上食べたことがある犬が16%、1回でも食べたことがある犬まで含めると23%でした。つまり4〜6頭に1頭です。うちの子だけが変、という話ではありません。
この調査には、意外な「差がなかったもの」もあります。年齢、食事の種類、去勢の有無、トイレの覚えやすさ。どれも食糞する犬としない犬で違いません。浮かんだのは、がっついて食べるかどうか(食糞する犬の51%、しない犬は28%)を筆頭に、犬種グループ、土を食べる習慣、多頭飼い、猫の便を食べる習慣です。
便の「新しさ」は、食糞する犬の飼い主1,475人への2つ目の調査で分かります。食べられた便の85%が、出てから2日以内でした。研究チームはここから、「巣穴の近くに落ちた新しい便を食べて、寄生虫が育つ前に片づける」というオオカミ時代の習性が残っているのでは、という仮説を立てています。
要するに、犬にとって新しい便は「片づける対象」であり、しばしば「食べ物」でもあります。ここを飼い主が受け入れないと、次の話が納得できません。
犬の側から見ると、こう見えている
ここが一番大事なところです。犬が便を口にした瞬間、飼い主は大声を出して駆け寄ります。犬の側から見ると何が起きているでしょうか。
- 「食べた → 飼い主が来た」。ふだん構ってもらえない時間帯なら、これは犬にとってご褒美です。退屈している犬ほど、注目は強い報酬になります
- 「食べようとした → 取り上げられた」。次は取られる前に飲み込めばいい。犬が引き出す結論はこれです。獣医向けの解説誌Clinician’s Brief(2015年)で行動学専門医のLisa Radosta(リサ・ラドスタ)が挙げているのも、この場面です。飼い主が駆け寄るほど飲み込みは速くなります
- 「うんちをした → 叱られた」。犬には「食べたから叱られた」と「排泄したから叱られた」の区別がつきません。排泄そのものを隠すために、証拠を消す。これが「叱ったら隠れて食べるようになった」の正体です
食糞は、それ自体が犬への報酬になっている
においが好き、味が好き、そして飼い主が反応する。行動が繰り返されるのは、犬にとって「やると良いことが起きる」からです。だから対策は「やめさせる」ではなく、「やる機会をなくし、代わりの行動に報酬を移す」になります。
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排泄が終わった直後の数秒、どう対処していますか?
食糞が減るかどうかは、犬が排泄を終えた直後の行動で決まります。ダッシュで駆け寄ると逆効果だと分かっていても、つい体が動いてしまいます。
片づけるまでの流れを映像で見ておけば、迷わずに行動できます。その場面を順を追って見ることができるのが、「イヌバーシティ」の作りです。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
原因を見分ける:5つのタイプ
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原因は5つに分かれます。複数が重なっていることも多いので、「どれか1つ」ではなく「どれとどれか」で読んでください。先にやることは、表の右の列です。
| タイプ | 見分け方 | 先にやること |
|---|---|---|
| 1. 子犬の探索・母犬の名残 | 生後3〜8ヶ月。便以外もなんでも口に入れる。母犬は子犬の排泄物をなめて片づけるので、その環境で育った子犬は「便=片づけるもの」と学んでいる | 排泄後3秒以内の片づけを徹底。多くは成長とともに減るので、習慣にさせないことに集中 |
| 2. 退屈・注目を引きたい | 留守番中や飼い主がスマホを見ている時に起きる。食べると飼い主が来る。散歩や遊びの量が少ない日ほど起きる | 知育トイで食事を与える。排泄直後に「呼ばれて褒められる」流れを作る |
| 3. 叱られた経験(証拠隠滅) | 過去にトイレの失敗や食糞を叱ったことがある。飼い主が見ていない場所・時間に限って食べる。排泄自体を隠れてする | 叱るのを完全にやめる。排泄を「褒められること」に戻す |
| 4. 食事の量・消化・栄養 | がっついて食べる。食事の回数が1日1回。便にフードの粒が残る。減量中や、食事を減らした後に始まった | 1日の量を変えずに回数を増やす。便の状態を1週間記録する |
| 5. 疾患 | 下痢・軟便・脂っぽい便が続く。食べているのに痩せる。急に食欲が増えた。成犬になって急に始まった | しつけより先に受診。便検査を持参できるよう新しい便を採る |
「猫のトイレを漁る」は別枠で考える
自分や他の犬の便ではなく、猫のトイレを狙う犬も多くいます。Hartらの調査でも、猫の便を食べることは犬の食糞と関連していました。肉食寄りの猫のフードは脂肪とタンパク質が多く、消化しきれないぶんが便に回ります。犬の鼻には食べ物として届いている。これはしつけで直すより、物理的に届かなくするのが確実です。対処法の章で書きます。
病気が関係している可能性:先に受診したいサイン
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ほとんどの食糞は医学的には無害で、行動の問題として扱われます。ただし例外があり、それを見逃すと何週間しつけをしても変わりません。
消化管に寄生虫がいる場合や、膵臓の消化酵素が足りず食べ物を消化しきれない状態(膵外分泌不全)、栄養の吸収が悪い状態では、便に未消化の栄養が残ります。犬にとっては「食べ物のにおいがする便」です。加えて、体が栄養を欲しがるので食欲が増します。だから体のほうを先に外します。Merck獣医マニュアルも、まず医学的な原因を除外するとしています。何を調べるかはClinician’s Briefの解説にあり、出発点は便検査と身体検査、便が緩い・未消化物が多ければ膵臓と消化機能の検査まで進みます。
次のどれかがあれば、しつけの前に動物病院へ。受診の日に出た便を、密閉できる袋に入れて持っていくと、その場で検査に回せます。
- 軟便・下痢・脂っぽく量の多い便が1週間以上続く
- 食べているのに体重が減る、あるいは食欲が急に増えた
- 成犬になってから、これまでなかった食糞が急に始まった
- 子犬を迎えて間もなく、駆虫を受けた記録がない
「急に始まった」行動全般に言えることですが、体の原因があるうちはトレーニングが空回りします。行動診療科の考え方はしつけ教室の選び方の「病気が関係していることがあります」の章にまとめてあります。
【原因ごとの対処法】今日からできる手順
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どのタイプでも土台は同じで、「食べる機会をなくす」+「排泄直後の行動を置き換える」の2本立てです。そこに、タイプごとの追加手順を足します。手順は日数つきで書くので、カレンダーに印をつけながら進めてください。
全タイプ共通:排泄直後に「呼んで褒めて片づける」(2週間)
これが本体です。便に向かう犬の行き先を、飼い主のほうへ差し替えます。排泄を終えた犬を呼んでご褒美を渡す置き換えは、VCA動物病院の行動解説でも中心に置かれています。
- 用意するもの。米粒大に切ったささみかチーズをポケットに。ふだんのフードでは勝てません。便より魅力のあるものでないと、犬は便を選びます
- 立ち会う時間を絞る。まず3日間、排泄の時刻をメモします。食後何分後か、朝何時か。多くの犬は食事から15〜30分以内、起床直後、遊びの後に出ます。時間が読めれば、その前後の5分だけ集中すれば足ります
- 排泄が始まったら、黙って見ている。声をかけると途中でやめてしまう犬がいます。終わるまで動かないでください
- お尻が上がってからの3秒がすべて。名前を呼び、犬が振り向いたら「いいこ」と言って、便から2〜3歩離れた場所でおやつを3粒、1粒ずつ与えます。3粒に分けるのは、食べている時間を稼ぐためです。犬が3粒目を食べている間に、もう片方の手で便を片づけます
- 片づけは無言で、犬に見せずに。「取られた」という印象を残さないためです。袋に入れて、すぐ視界から消します
- これを14日、排泄のたびに続ける。1回でも食べられると、そこで報酬が入り、学習は数日分戻ります。だからこの2週間は、見逃さない体制のほうが先です
2週間たって、排泄が終わると自分から飼い主のほうを見るようになっていれば成功です。そこからおやつを2回に1回、3回に1回と減らしていきますが、「呼ぶ・褒める・片づける」の流れ自体は続けます。
「見逃さない体制」が9割。手順は1割
留守番中や夜間に排泄する犬は、この手順を実行できません。その時間帯は、便が残らない環境(下で書く「機会をなくす」)で守ります。見ていられない時間に食糞が起きると、見ている時間の練習が帳消しになる。ここを軽く見ると2週間が無駄になります。
1. 子犬の探索・母犬の名残の場合
子犬期の食糞は、多くが1歳前後までに自然と減っていきます。ただし「自然に減る」のは、その間に習慣として固まらなかった場合です。やることはシンプルで、共通手順を守りながら、口に入れる機会を物理的に減らすだけです。
- トイレトレーは、飼い主から見える位置に置く。サークルの奥や別室だと、排泄に気づけません
- 留守番中はトイレを使わせる必要があるので、帰宅後すぐに片づける。帰宅時に便が残っていて食べていない日は、静かに褒めて片づけます
- 散歩デビュー後は、よその犬の便を口にする機会が増えます。地面に鼻を近づけたら、リードを軽く短く持って進行方向を変え、歩き続けたら褒める。これは拾い食いの「交換」トレーニングと同じ練習です
トイレそのものがまだ安定していない時期であれば、先に子犬のトイレトレーニングを固めるほうが早道です。決まった場所で決まった時間に出るようになれば、食糞の「見逃し」も自然に減ります。
2. 退屈・注目を引きたい場合
このタイプは「食べると飼い主が来る」で強化されています。対策は、便以外のところに注目と刺激を移すことです。
- 食事の半分を知育トイで与える。コングやフードを詰められる転がすタイプのトイに、1日の量のうち半分を入れて渡します。食べるのに10〜20分かかるので、退屈の時間が減り、口を使う欲求も満たされます。選ぶ基準は、犬の口のサイズに合っていて丸ごと飲み込めないこと、中を洗えることです(知育トイ(コング等))
- 排泄後の共通手順を、少しだけ大げさにやる。このタイプは注目が欲しいので、褒め言葉に加えて30秒だけ遊びを足すと、便より「排泄後の飼い主」のほうが魅力的になります
- 食糞を見ても声を出さない。口に入っていたら、もう遅いと割り切って無視し、次の排泄で取り返します。この「無視」は、犬にとって「食べても何も起きない」ことを意味します。しばらくは確かめるように食べますが、反応の返らない行動は割に合わなくなります
3. 叱られた経験(証拠隠滅)の場合
このタイプは、対処というより「解除」です。犬の中で「排泄=叱られる」になっているので、排泄を再び安全なものに戻す必要があります。
- 家族全員に「今日から一切叱らない」を宣言する。1人でも叱る人がいると戻りません
- 排泄の失敗を見つけても、無言で片づける。ため息もつかない。犬は飼い主の表情も読んでいます
- 排泄しているところを見かけたら、終わった瞬間に共通手順(呼ぶ・褒める・おやつ)を必ずやる。隠れてしていた犬が、飼い主の見える場所でするようになったら、それが回復のサインです
- 目安は3〜4週間。他のタイプより長くかかります。一度「怖い」と学んだことを「安全」に書き換えるのは、ゼロから教えるより時間が要るからです
成犬になってからトイレそのものを隠れてするようになった場合は、成犬のトイレのしつけ直しで書いている「失敗が続く家の共通点」もあわせて確認してください。
4. 食事の量・消化・栄養の場合
フードを変えれば直る、という話ではありません。Hartらの調査では、食事の種類は食糞と関係していませんでした。関係していたのは「がっつく食べ方」です。ここから逆算すると、見直すのはフードの銘柄より、量の配分と食べるスピードです。
- 1日2回で足りていないなら、同じ総量を3回に割る。増やすのは回数だけで、量は足しません。空腹のピークが来る回数が1日1回ぶん減り、1回に胃へ入る量も軽くなります
- 早食いなら、早食い防止の食器か知育トイで5分以上かけて食べさせる。1分で食べ終わる犬は、食後も口が満たされていません
- 便の状態を1週間、写真で記録する。硬さ、色、フードの粒が見えるかどうか。粒がそのまま出ているなら、量が多すぎるか、消化が追いついていないサインです。記録は受診時にも役立ちます
- ダイエットを始めた直後に出てきた食糞なら、疑うのは減らし方のほう。急に量を落とせば、そのぶん空腹が強く出ます。無理のないペースは体重と体型で変わります。目標体重と落とし方をかかりつけで決めてから進めてください
栄養バランスの取れた総合栄養食を食べている犬で、栄養不足が原因になっていることは多くないと考えられています。それでも心配なら、サプリを足す前にかかりつけで相談してください。
5. 猫のトイレを漁る場合
これは環境で解決します。犬に「猫のトイレは入ってはいけない」と教えるより、入れない構造にするほうが確実で早いからです。
- 猫のトイレを、犬が入れない部屋か、ベビーゲートの向こうに置く。猫だけが通れる隙間(10〜12cm)を残すか、猫が飛び越えられる高さのゲートにします
- それが無理なら、フード付きのトイレで入口を犬の頭が入らない向きにする。大型犬なら、トイレを台の上に置く方法もあります
- 猫の排泄後は、できるだけ早く片づける。自動トイレを使う家庭もあります
犬が猫のトイレの前でうろうろしたら、呼んで別の場所でおやつ。「トイレの前にいる」より「飼い主のところへ来る」を得にします。
散歩中の食糞:「ちょうだい」と「おいで」で守る
外では、便を見つける前に犬が先に見つけます。だから口に入る前に止める練習が要ります。
- 家の中で「ちょうだい」を仕込んでおく。遊んでいる最中に交換を持ちかけ、自分から離せた回数を積む練習です。1日5回、1週間。手順は拾い食いの記事に分けて書きました
- 散歩中は、犬が地面に鼻をつけて立ち止まった瞬間に名前を呼び、来たらおやつ。「地面に何かある → 飼い主のところへ行く」の流れをつくります
- 多いのが、草むらや公園の隅。そこはリードを1m以内に短く持って通過し、通り過ぎたら褒めます
- どうしても防げない時期は、バスケット型の口輪を練習して使います。口が開けられて水も飲めるタイプで、鼻の長さに合ったサイズを選びます(バスケット型の口輪)。罰の道具ではなく、練習中の安全確保の道具です。Clinician’s Briefの解説でも、初期の管理手段として口輪の練習が挙がっています
やってはいけないNG対応
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ここでは「なぜ逆効果か」までセットで書きます。理由が分かれば、家族にも説明できます。
叱る・大声を出す・鼻を便に押しつける
最初の章で書いた通り、犬は「食べたから」ではなく「排泄したから」叱られたと学びます。結果、排泄を隠す犬になり、隠れた場所で食べるようになります。加えて、AVSAB(米国獣医動物行動学会)は、力や痛み、不快感に頼る方法をいかなる状況でも使うべきではないとしています。2021年の声明を2025年の理事会声明で言い直したもので、道具の種類にも、教える人の経験にもよりません。恐怖や不安、攻撃性、関係の悪化が報告されているからです。食糞は命に関わる行動ではありません。関係を壊してまで止める価値はないと考えてください。
駆け寄って口から取り出す
犬は「取られる前に飲み込む」ことを学びます。すでに口に入っているものは、諦めるのが正解です。取り出すべきなのは、たばこの吸い殻や薬など、便以外の危険物のときだけです。
「食糞防止」をうたう製品だけに頼る
フードにかける粉やサプリの中には、便の味やにおいを変えるとうたうものがあります。ただ、そもそも原因が退屈や叱られた経験にある場合、便の味が変わっても行動は変わりません。Hartらの2018年の調査では、市販の11製品について飼い主が報告した「やめた」割合は0〜2%でした。同じ調査で、飼い主が試した行動面の対処(追い払う、便に辛味をつける等)も1〜2%で、唯一「離れなさい」を教えて褒めた家庭が4%と少しだけ高かった、という結果です。数字は厳しいですが、読み方はこうです。「製品で解決」も「一発の対処で解決」もなく、地道な管理と行動の置き換えしかない。使うなら補助として、共通手順と並行で使ってください。
便にわさびや唐辛子をつける
犬は口に入れる前に鼻で選びます。つけた便とつけていない便はにおいで区別がつくので、つけていないほうを食べるだけです。多頭飼いならもっと厄介で、全頭の便に毎回つけない限り、「たまに何もついていない便が混じる」状態になります。当たり外れがある状況は、行動を弱めるどころか粘り強くします(間欠強化)。手間の割に戻りが少ない方法です。
食事を減らして「お腹をすかせないようにしよう」と勘違いする
逆です。空腹は食糞を増やします。減らすのではなく、総量を保って回数を分けるのが正解です。
2週間やって変わらないなら、原因の見立てから見直す段階です
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食糞は「手順が分かっても続かない」行動の代表です。排泄の瞬間に立ち会えないと練習にならないのに、その瞬間は1日に2〜3回、しかも数秒しかない。日中に誰もいない家では、見ている時間より見ていない時間のほうが長く、そこで1回食べれば練習は戻ります。さらに、5つの原因のうちどれが主なのかを、自分の犬について客観的に判断するのは難しい。「退屈だと思って知育トイを買ったが、実は叱られた経験が原因だった」というずれは珍しくありません。
選択肢は3つあります。
- しつけ教室・出張トレーニング。食糞が起きるのは自宅のトイレの前なので、来てもらう形が向いています。トレーナーが排泄のタイミングと家の動線を見て、「どの時間帯にどう見張るか」を組んでくれます。お住まいの地域のしつけ教室から探せます
- 飼い主が学ぶオンライン教材。排泄直後の3秒の動きは、文章より動画のほうが伝わります。自分の犬で再現できるまで何度でも見返せるのが利点です
- 動物病院(行動診療科を含む)。便の異常や体重減少があるとき、成犬で急に始まったときは、先に体を診てもらってください。病院の探し方はしつけ教室の選び方に書いています
便を片づけるのは、毎日、家にいる人
トレーナーは週に1回しか来ません。犬が排泄するのは1日に2〜3回、それも飼い主が家にいる時間です。排泄の瞬間に何をするかを知っているのが飼い主でなければ、食糞は変わりません。教室でも教材でも、目的は「飼い主がその3秒を扱えるようになること」です。
「イヌバーシティ」は、犬ではなく飼い主に向けて作られた教材です。1,260分の収録が子犬用と成犬用に分かれていて、「やり方」だけでなく行動が変わるまでの経過も映像に入っています。叩いたり怒鳴ったりする場面はありません。43,780円(税込)、視聴の期限なし。家に来てもらう出張トレーニングを4回受けると32,000〜80,000円になるので、その1〜2回分に近い金額です。
正直に書きます。自分で見て、自分の犬の排泄に合わせて動く前提の教材です。排泄の時間帯に家にいられない方や、毎週チェックしてくれる相手が欲しい方は、出張トレーナーに入ってもらうほうが向いています。
トイレシートの上で振り返った瞬間に食べている、散歩中によその犬の便に突進する、叱ったら隠れて食べるようになった——いろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となっていませんか? その「瞬間」に何をすればいいのかを、映像で何度でも確認できます。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。自分の犬の排泄の場面と重ねて見ると、判断しやすいかもしれません。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
よくある質問
Q. 犬がうんちを食べる理由は、結局なんですか?
1つに絞れません。子犬の探索、退屈と注目、叱られた経験、食事の量や消化、疾患の5つが主で、重なっていることも多いです。2018年のHartらの調査で目立ったのは「がっついて食べる」ことで、多頭飼いや土・猫の便を食べる習慣も関連していました。食べられた便の85%は2日以内の新しいものです。研究チームは、巣穴を清潔に保つオオカミ時代の習性が残っているという仮説を立てています。
Q. 子犬の食糞はいつまで続きますか?
多くは生後6ヶ月〜1歳前後で減っていきます。ただし、その間に「食べると飼い主が反応する」「叱られるから隠す」といった学習が乗ると、成犬になっても続きます。自然に減るのを待つのではなく、子犬のうちは「機会をなくす」ことに集中するのが、結果的に一番早く終わる方法です。生後3ヶ月を過ぎても下痢や軟便を繰り返すなら、寄生虫の検査を受けてください。
Q. 食糞防止のサプリやフードは使ってもいいですか?
使うこと自体は構いませんが、それだけで解決すると期待しないでください。便の味やにおいを変えるとうたう製品はありますが、原因が退屈や叱られた経験にある場合、便の味が変わっても行動は変わりません。Hartらの調査では、市販製品で「やめた」と飼い主が答えた割合は0〜2%でした。使うなら、排泄直後の共通手順と並行で、補助として使います。フードの切り替えやサプリの追加は、便の状態が変わることもあるので、かかりつけの獣医師に一度相談してからにしてください。
Q. 他の犬のうんちを食べます。病気がうつりますか?
可能性はあります。寄生虫や感染症は便を介してうつるものがあり、これが食糞の医学的なリスクとして挙げられています。散歩中のよその犬の便は、家の中の自分の便より避けたい対象です。定期的な便検査と駆虫について、かかりつけに相談してください。散歩中の対処は本文の「散歩中の食糞」の手順を使います。見張る時間帯の組み方から一緒に考えてほしいけれど、頼める先が近くにない。そんなときは、排便の時刻を1週間だけ記録してください。時間帯が絞れれば、見張るのは1日のうち数分で済みます。
Q. 叱ったら隠れて食べるようになりました。もう直りませんか?
直ります。ただし、他のタイプより時間がかかります。犬の中で「排泄=叱られる」になっているので、まず家族全員が叱るのをやめ、排泄のたびに褒めておやつを渡して、「排泄は安全」と学び直させます。目安は3〜4週間。飼い主の見える場所で排泄するようになったら回復のサインです。
Q. 食糞と拾い食いは、同じ対処でいいですか?
散歩中の対処はほぼ同じです。「地面に何かある → 飼い主のところへ来る」の流れを作り、「ちょうだい」で口の中のものを離す練習をします。違うのは家の中の対処で、食糞は排泄の瞬間が決まっているぶん、時間を読んで待ち構えられます。詳しい練習は拾い食いをやめさせる「交換」トレーニングを参照してください。
まとめ
- 食糞は4〜6頭に1頭が経験する、犬にとっては普通の行動。異常ではなく、放っておくと習慣になる行動です
- 叱ると「速く食べる」「隠れて食べる」犬になる。犬は排泄自体を叱られたと学ぶからです
- 原因は5つ。子犬の探索、退屈と注目、叱られた経験、食事の量と消化、疾患。下痢・体重減少・急な開始があれば、しつけより先に受診
- 土台は「機会をなくす」+「排泄直後に呼んで褒めて片づける」。排泄の時間帯を3日記録し、2週間続けます
- 製品は補助。調査では市販製品で「やめた」と答えた割合は0〜2%。原因が別なら、便の味を変えても行動は変わりません
- 2週間で変わらなければ、原因の見立てを第三者に見てもらう。家の中で起きる行動なので、出張型のトレーナーが向いています
食糞は、飼い主の気持ちを一番くじく問題行動かもしれません。ただ、犬にとっては「片づけ」や「食べ物」であって、飼い主への反抗ではありません。そこを分かったうえで、排泄の3秒を味方につけてください。

