散歩中に他の犬に吠える犬|「犬見知り」を直す距離の取り方

犬のしつけ方

向こうから犬が歩いてきた瞬間、リードがピンと張って、うちの犬が吠え始める。相手の飼い主に頭を下げながら引きずるように離れる。散歩のたびにこれでは、散歩そのものが憂うつになります。結論から言うと、他の犬に吠える犬は「近づけて慣らす」ほど悪化し、「吠えない距離」から始めると変わります。直すのは犬の性格ではなく、距離です。

この記事では、吠えるかどうかを決める「閾値」という距離の考え方、原因を「怖い/会いたくて興奮/リードのもどかしさ」の3つに分ける見分け方、そして距離をメートル単位で縮めていく練習を、日数つきで書きます。すれ違いのときに電柱や車の陰をどう使うか、リードをどう持つか、Uターンをどう教えるかという実務も含めます。

ドッグランに連れて行けば慣れる、という話は最後に否定します。理由も書きます。

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最終更新 2026年9月8日

  1. 吠えるかどうかは「距離」で決まっています
    1. 閾値:吠え始める距離を、まず知る
    2. 吠えるたびに、犬は「吠えると解決する」を学ぶ
    3. 社会化期に会えなかった犬ほど、犬が「知らない生き物」になる
  2. 原因を3つに分ける:怖い/会いたい/リードがもどかしい
  3. 【原因ごとの対処法】距離を縮めていく練習の手順
    1. 準備:装備、ご褒美、閾値のメモ(1週目)
    2. 怖い犬:「犬が見えたらおやつ」を距離で刻む(2〜6週目)
    3. 会いたくて興奮する犬:「落ち着くと近づける」を教える(2〜5週目)
    4. リードがもどかしい犬:Uターンとたるみを先に教える(2〜4週目)
    5. すれ違いの実務:電柱・車の陰・道の反対側
  4. やってはいけないNG対応|「近づけて慣らす」がなぜ逆効果か
    1. 近づけて慣らす
    2. リードを引く、叱る、首輪でショックを与える
    3. ドッグランで慣らす
    4. 吠えている犬同士を「挨拶させれば落ち着く」と近づける
    5. 吠える前から緊張して、リードを短く握りしめる
  5. 1ヶ月続けても距離が縮まらないとき
  6. よくある質問
    1. Q. 犬見知りは完全に直りますか?
    2. Q. 社会化期を過ぎた成犬でも間に合いますか?
    3. Q. ドッグランに通えば慣れますか?
    4. Q. すれ違うたびに抱き上げてもいいですか?
    5. Q. 相手の犬に吠えられたとき、うちの犬はどうすればいいですか?
    6. Q. チョークチェーンやプロングカラーで止めたほうが早くないですか?
  7. まとめ

吠えるかどうかは「距離」で決まっています

住宅街の道で、離れた場所にいる他の犬を見つめてリードを張る柴犬(イメージ)

要点は3つです。どの犬にも「これ以上近づかれると持ちこたえられない」という距離があり、それを閾値と呼ぶこと。閾値の内側に入ってしまうと、どんな指示も届かないこと。そして、吠えるたびに犬は「吠えると相手が去る」を学んで、吠えが上手になっていくことです。

閾値:吠え始める距離を、まず知る

境目は歩いている最中に見つかります。向こうに犬が現れた時点では普通に歩けていたのに、電柱を何本か進むと足が止まり、声が出る。歩けていたのが30m、止まったのが10mなら、境目はその間のどこかです。閾値の外側では、犬は相手に気づいていても、飼い主の声が耳に入り、おやつも食べられます。閾値の内側に入ると、心拍が上がり、目は相手に釘づけになり、名前を呼んでも聞こえません。おやつを差し出しても食べない、というのが「もう内側にいる」合図です。

練習が成立するのは閾値の外側だけです。内側で何をしても、犬は学べる状態にありません。だから最初にやることは、しつけではなく計測です。自分の犬が何mで反応し始めるのかを、散歩のたびにメモしてください。

吠えるたびに、犬は「吠えると解決する」を学ぶ

ここが犬の側の理屈です。散歩中に犬が向こうから来る。うちの犬が吠える。相手の飼い主は当然その場を離れる。犬から見るとどうなるか。「吠えたら、あの犬が去った」。怖くて吠えていた犬にとっては、吠えが「脅威を追い払う道具」として機能したことになります。実際には相手はただ通り過ぎただけなのですが、犬には区別がつきません。

これが毎日の散歩で繰り返されると、吠えは学習として定着します。しかもリードでつながれた犬は、怖いときに本来やりたい「離れる」ができません。逃げられないから、吠えて追い払うしかない。散歩中だけ吠えて、ノーリードの場所では吠えない犬がいるのはこのためです。

会いたくて興奮している犬でも構造は同じです。吠えて引っ張ったら、飼い主が引きずられて相手に近づいた。あるいは相手の飼い主が「かわいいね」と寄ってきた。吠えると距離が縮まったという経験が、吠えを強くします。

社会化期に会えなかった犬ほど、犬が「知らない生き物」になる

生後3週から12〜14週ごろは、見たものを「当たり前」として受け入れやすい時期で、社会化期と呼ばれます。この時期に他の犬とほとんど接していない犬は、成犬になってから犬を「よく分からない、動く生き物」として見ます。ワクチン完了を待って外に出したら社会化期が終わっていた、という家庭は多く、犬見知りの土台になりがちです。

ただし、社会化期を過ぎたから直らない、ということはありません。時間はかかりますが、成犬でも距離を使った練習で吠えは減ります。この記事の手順は成犬向けに書いています。

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犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

向こうから犬が来たとき、どこで止まればいいか分かりますか?

犬見知りの吠えは距離で決まるので、止まる位置とその速さが解消のカギです。ただ、本などで「何メートル」と読んでも、道の上ではとっさに判断できません。
間合いの取り方は、映像を目で見るほうが早く身につきます。「イヌバーシティ」なら、散歩中のやりとりを何度でも見返せますよ。

イヌバーシティの中身を覗いてみる

※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

原因を3つに分ける:怖い/会いたい/リードがもどかしい

散歩中にすれ違う2頭の犬と、それぞれのリードを持つ飼い主の手(イメージ)

同じ「吠える」でも、中身は3つに分かれます。対処が違うので、先に見分けてください。手がかりは、何m手前で反応が始まるか、吠えている最中に体が前へ出るか後ろへ引くか、相手が去った直後の数秒に何をするかの3つです。

タイプ見分け方先にやること
怖い(恐怖・警戒)20〜30m手前から反応が始まる。吠えている最中は体が後ろに傾き、前に出るより下がる。耳は寝て、尻尾の位置が低い。相手が去ると、体をブルブルッと振ってから歩き出す距離を大きく取り、「犬が見えたら良いことが起きる」を作る(脱感作と拮抗条件づけ)
会いたくて興奮声が高く、キュンキュンが混じる。尻尾は高い位置で細かく振れ、足が前へ出続ける。会わせると遊びに入る。ドッグランでは吠えない「落ち着いていると近づける、吠えると近づけない」を教える。挨拶は飼い主の合図で
リードのフラストレーションリードが張った瞬間に爆発する。ふだんから前へ前へ歩く引っ張り癖がある。ノーリードの場所や家の中では、同じ犬に平気で会えるリードのたるみを保つ歩き方とUターンを先に教える。引っ張り癖の対処と並行
痛み・体調これまで平気だった犬に急に吠え始めた。触ると嫌がる部位がある。歩き方が変わったしつけより先に受診

実際には「怖い」と「リードのもどかしさ」が混ざっている犬が一番多いです。迷ったら、怖い前提で距離を取るほうから始めてください。怖い犬に興奮向けの対処(近づけてご褒美)をすると悪化しますが、興奮している犬に怖い犬向けの対処(距離を取る)をしても害はありません。

もうひとつ。それまで他の犬と普通にすれ違えていた犬が、ある時期から急に吠えるようになった場合は、関節や背中に痛みが出ていることがあります。痛い体で犬に近づかれるのは、犬にとって脅威です。急に始まったなら、しつけの前にかかりつけの動物病院に相談してください。先に受診したほうがいいサインは教室の選び方のページにまとめてあります。

【原因ごとの対処法】距離を縮めていく練習の手順

離れた場所の犬を見た瞬間に飼い主からおやつをもらうトイプードル(イメージ)

手順は「準備」と「原因別の練習」と「すれ違いの実務」の3段階です。どの原因でも準備は同じ。装備・ご褒美・閾値の計測を先に済ませてください。

準備:装備、ご褒美、閾値のメモ(1週目)

  1. 装備を変える。首輪だけの犬は、吠えて飛び出したときに首に衝撃がかかり、それ自体が「犬が見えると痛い」という学習になります。胸の前と背中の2か所にリードを付けられるY字型のハーネスに替えてください。首輪と併用して2本のリードを付ける方法(ダブルリード)もあり、飛び出したときにすっぽ抜ける事故を防げます。リードの長さは1.2〜1.8m。伸び縮みする物は、犬との間隔がそのつど変わってしまうので、この練習の間は外してください。
  2. ご褒美を用意する。毎日のフードでは、犬を見たときの緊張に勝てません。ちくわの輪切り、ゆでささみ、チーズといった家では出さない物を、米粒ほどの大きさにしてポーチへ。30粒あれば1回分です。
  3. 閾値を測る。散歩中に犬が見えたら、うちの犬が「相手を見たまま固まる」「おやつを食べなくなる」距離を電柱の間隔(住宅街ならおよそ30m前後)などで見当をつけてメモします。3日分取れば十分です。
  4. この週は吠える場面を避ける。3日分のメモを見ると、すれ違った場所と時刻が固まっているはずです。多くは朝7時前後と夕方17〜19時、それに公園まわり。その週はそこを外して歩きます。練習を始める前に「吠える練習」を止めるためです。

怖い犬:「犬が見えたらおやつ」を距離で刻む(2〜6週目)

やることは1つです。閾値の外側に立って、相手の犬が視界にいる間だけ、おやつを出し続ける。相手がいなくなったら手を止めます。おやつのスイッチは、相手の犬が握っている形です。これを繰り返すと「犬が現れる → 良いことが起きる」という結びつきができ、犬を見たときの感情そのものが変わっていきます。これが拮抗条件づけです。距離を少しずつ縮めるのが脱感作で、必ず2つをセットで行います。

  1. 2週目:閾値より5〜10m遠い位置で。犬の通り道が見渡せる公園の端や、道路をはさんだ向かい側に立ちます。うちの犬が相手に気づいたら、気づいたことを止めずに「いいね」と声をかけておやつ。相手が見えている間は3〜5秒に1粒ずつ。見えなくなったら終了。1回の外出で3〜5頭分。10分で切り上げます。
  2. 3週目:犬が自分から顔を上げたら合格。相手を見つけたあと、こちらが何も言っていないのに飼い主のほうへ顔が向く。おやつとの結びつきができた犬に出るサインです。これが出たら、距離を3〜5m縮めます。コーネル大学獣医学部も、引き金になる物を良いことと結びつけていけば、やがて犬のほうから飼い主を見ておやつを待つようになる、と説明しています。
  3. 4〜6週目:縮めては戻す。縮めた距離で吠えたら、その日は前の距離に戻します。目安は1週間に3〜5mずつ。30mから始めた犬が10mまで来るのに4〜6週間かかるのが普通です。早く縮めるほど、やり直しが増えます。
  4. 吠えてしまったら。叱らず、おやつも出さず、黙って距離を取ります。吠えたことを罰する必要はありません。犬はすでに閾値の内側にいて、学べる状態ではないからです。距離を取って落ち着いてから、もう一度「見たらおやつ」に戻ります。

おやつは「静かにしていたご褒美」ではなく、「犬が現れた合図」

ここを間違えると進みません。犬が吠えなかったから出すのではなく、相手の犬が見えたから出す。おやつを出す条件は「相手が視界にいること」だけです。だから、うちの犬が相手を見てうなっていても、閾値の外側なら出してかまいません。出しているうちに、うなりは消えていきます。

会いたくて興奮する犬:「落ち着くと近づける」を教える(2〜5週目)

この犬にとって一番の報酬は「相手の犬に近づくこと」です。だから、近づけるかどうかを吠えの有無で決めるようにします。

  1. 会わせる回数を先に決めておく。毎回会わせていると、犬を見るたびに期待で興奮します。3回に2回は挨拶なしで通り過ぎると決めて、「犬とすれ違うだけ」を普通にします。
  2. 相手が見えたら止まる。閾値の外側で立ち止まり、「おすわり」。座って相手を見ていられたら、おやつ。
  3. 吠えたり引っ張ったりしたら、その場でUターンして5m離れる。落ち着いたらまた戻ります。「吠える → 遠ざかる」「静か → 近づける」を、1回のすれ違いで何度も体験させます。
  4. 会わせる日は、飼い主の合図から始める。相手の飼い主が了承していて、相手の犬も落ち着いている。この2つがそろったときだけ、「OK」と言ってから近づけます。吠えている間は近づけません。近づけた瞬間に「吠えれば会える」が成立してしまうからです。

リードがもどかしい犬:Uターンとたるみを先に教える(2〜4週目)

リードが張った瞬間に爆発する犬は、リードの張りそのものが引き金です。相手の犬がいない場所で、「飼い主が向きを変えたら、ついてくる」を先に作ります。これが緊急時の脱出ルートになります。

  1. 家の前の道で、犬がいない時間にUターンの練習。歩きながら「こっち」と言って180度向きを変え、犬がついてきたら3歩目でおやつ。1回の散歩で10回。3日で犬は「こっち」で振り向くようになります。
  2. リードのたるみを保つ持ち方。リードは手首に通さず、輪の部分を親指にかけて手のひらで握ります。余った部分は片手にまとめ、犬との間に「J」の字のたるみがある状態を保ちます。張ったら立ち止まり、たるんだら歩く。この練習は引っ張り癖の記事で詳しく書いています。
  3. 相手が見えたら、吠える前に「こっち」。閾値に入る手前でUターンし、道の反対側か脇道に入ります。3歩ついてこられたらおやつ。犬にとって「犬が見えたら飼い主についていくと良いことがある」になります。
  4. 慣れてきたら、Uターンせずに脇によける。すぐ離れなくても平気になったら、道の端に寄って犬を自分の体の反対側に置き、相手が通り過ぎる間おやつを続けます。

すれ違いの実務:電柱・車の陰・道の反対側

練習が進んでも、狭い道で急に犬と出くわす場面はあります。そのときの動き方を決めておいてください。

狭い道で犬が来たときの3つの動き

  • 視界を切る。電柱、停めてある車、生け垣の陰に入り、相手が見えない位置で待つ。犬は見えないものには反応しにくい。相手が通り過ぎたら出る
  • 正面から近づかない。犬同士が真正面から向き合うのは、犬の作法では緊張を生む形。道の反対側に渡って、弧を描くようにすれ違う
  • 相手を自分の体の反対側に置く。すれ違う瞬間、飼い主の体が2頭の間に入るようにリードを持ち替える。その間、おやつを口元に続けて出す

相手の飼い主に「うちの子、練習中なので」と一言かけると、向こうも距離を取ってくれます。黄色いリボンをリードに付けて「そっとしておいて」を示す習慣も広まっていますが、知らない人も多いので、声をかけるほうが確実です。

練習の頻度は、1日1回、10〜15分で十分です。長くやるほど良いわけではありません。嫌な出来事が短い間に重なった犬は、1つずつなら耐えられた刺激にも大きく反応します(トリガースタッキング)。吠えてしまった日の翌日は、犬に会わない道を軽く歩くだけにして、練習は休んでください。

やってはいけないNG対応|「近づけて慣らす」がなぜ逆効果か

散歩中、飼い主の手が動いた拍子に身をすくめる中型犬(イメージ)

並べるのは2種類です。その場では静かになるやり方と、良かれと思ってやってしまうやり方。裏目に出る理由を読んでから決めてください。

近づけて慣らす

怖がる犬を相手の犬の目の前まで連れて行き、「ほら、怖くないよ」と慣らそうとする。これが一番多い失敗です。閾値の内側に押し込まれた犬は、慣れるのではなく、恐怖が上書きされます。逃げられない状態で怖いものに近づけられることを、行動学ではフラッディングと呼び、恐怖を強める方向に働きます。慣れるのは「怖くない距離で、良いことが起きたとき」だけです。

リードを引く、叱る、首輪でショックを与える

吠えた瞬間にリードをぐいと引く、「ダメ!」と叱る、チョークチェーンやプロングカラーで痛みを与える。犬から見た並びは、「向こうから犬が来た → 首が締まった → 飼い主の声が険しくなった」です。これは「犬が見えたらおやつ」の正反対で、犬をますます嫌な存在にします。AVSAB(米国獣医動物行動学会)は、力や痛み、心身の不快感に頼る方法について、いかなる状況でも使うべきではないと明言しています。2025年の理事会声明で、2021年の立場を改めて言い直したものです。恐怖や攻撃性が強まるリスクにも触れています。表面上は静かになった犬が、あるとき警告なしに噛む、という結末につながります。

ドッグランで慣らす

怖い犬をドッグランに入れるのは、閾値の内側に何頭も同時に入れる行為です。柵の外から吠えているのは、その犬にとって「入りたい」ではなく「入りたくない」の場合が多い。中で逃げ回るか、隅で固まるか、追い詰められて噛むかのどれかになります。会いたくて興奮する犬なら遊べますが、それは「吠えなくなった」わけではなく、犬を見るたびの期待がむしろ強くなります。ドッグランは練習の場ではなく、練習が終わった犬の遊び場だと考えてください。

吠えている犬同士を「挨拶させれば落ち着く」と近づける

お互いに吠えている2頭を「仲良くなれば」と近づけると、両方の犬に「吠えたら近づけた」を教えます。片方が怖がっている場合は、そこで噛みつき事故が起きます。環境省の統計では2023年度に全国で5,432件の咬傷事故が報告され、その9割以上が飼い犬によるものでした。散歩中の犬同士のトラブルは、この中の少なくない部分を占めます。

吠える前から緊張して、リードを短く握りしめる

飼い主が犬を見つけて身構えると、リードは自然に張り、犬はそれを「合図」として覚えます。「飼い主が固まる → 何か来る」です。相手を見つけたら、深呼吸して、リードを張らずに向きを変える。飼い主の動きが落ち着いているほど、犬の閾値は広がります。

1ヶ月続けても距離が縮まらないとき

夕方のリビングでくつろぐ犬(イメージ)

閾値の外側で「見たらおやつ」を1ヶ月続けて、犬が飼い主を振り返るようにならない。あるいは距離が10m台から一向に縮まらない。この場合、手順そのものより、閾値の見立てがずれていることが多いです。固まって相手を凝視している犬は、吠えていなくてもすでに内側にいます。飼い主には静かに見えるぶん、自分では気づけません。

打つ手は3つあります。

  • しつけ教室・出張トレーニング。他の犬が管理された状態でいる場所で練習できるのは、教室の強みです。犬見知り向けのグループレッスンや、散歩に同行する出張形式があります。お住まいの地域のしつけ教室から探せます。
  • 映像で学ぶオンライン教材。閾値の見極め方を、何度でも巻き戻して確かめたい人向け。下で書きます。
  • 動物病院の行動診療科。吠えるだけでなく相手に噛みつこうとする、散歩自体を怖がって歩けない、急に始まった。この場合は先に受診です。先に受診したほうがいいサインを確認してください。

相手の犬が現れるのは教室ではなく、毎日の散歩道

トレーナーが横にいる1時間で犬が落ち着いても、翌朝の散歩でおやつを出すのは飼い主です。閾値を読んで距離を決めるのも、Uターンの判断をするのも、毎日リードを持つ人。犬見知りの対処は、犬を訓練するより、飼い主が「距離の読み方」を身につけるほうが結果を左右します。

「イヌバーシティ」は、犬ではなく飼い主の側を変えていく教材です。1,260分の映像には、うまくいかない場面から変わっていくまでが続けて収めてあり、どの距離のどの瞬間におやつが出ているのかを目で追えます。体罰は使いません。43,780円(税込)で、グループレッスンに2〜3ヶ月通う24,000〜84,000円とほぼ同じ幅です。

正直なところも書きます。これは自分で手を動かす前提の教材です。散歩道で距離を読むのは飼い主なので、隣で「今、下がって」と言ってほしい方は、同行する出張トレーナーのほうが早いです。

向こうから犬が来ただけで固まる、リードを引きちぎる勢いで飛びかかる、すれ違ったあとも興奮が収まらない——いろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となっていませんか? 距離とタイミングは、読むより動きで見たほうが早いものです。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。自分の散歩と何が違うのか、見比べてみる価値はありますよ。

犬のしつけ教材 イヌバーシティ|飼い主が学ぶための教材

イヌバーシティの中身を覗いてみる

※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。

よくある質問

Q. 犬見知りは完全に直りますか?

ゴールは「他の犬と5mですれ違っても吠えず、飼い主を見る」に置いてください。ここまで来れば散歩は普通にできますし、成犬でも2〜3ヶ月の練習で届く犬が多いです。逆に「どんな犬とも仲良く遊べる」を目標にすると、たいてい失敗します。人間に人見知りがいるのと同じで、犬にも犬が得意でない個体がいるからです。

Q. 社会化期を過ぎた成犬でも間に合いますか?

間に合います。子犬より時間はかかりますが、成犬でも「犬が見えたら良いことが起きる」を積み重ねれば、犬を見たときの感情は変わります。保護犬を迎えた家庭で、1歳を過ぎてから練習を始めて吠えなくなった例はいくらでもあります。閾値の外側から始めることだけ守ってください。

Q. ドッグランに通えば慣れますか?

怖くて吠える犬には逆効果です。閾値の内側に何頭も同時に入る状況になり、恐怖が強まります。会いたくて吠える犬は中で遊べますが、それで散歩中の吠えが減るわけではなく、犬を見るたびの期待が強くなることのほうが多いです。ドッグランは、すれ違いの練習が終わった犬の遊び場として使ってください。

Q. すれ違うたびに抱き上げてもいいですか?

小型犬なら、緊急時の避難としてはかまいません。抱き上げることで犬が甘えて吠えが強くなる、という説がありますが、恐怖は「甘やかし」で増えるものではありません。ただし抱き上げてばかりだと、地面にいる状態で犬とすれ違う経験が積めないので、練習にはなりません。抱くのは閾値の内側に入ってしまったときの逃げ道と割り切り、練習は地面で、閾値の外側からやってください。

Q. 相手の犬に吠えられたとき、うちの犬はどうすればいいですか?

相手が吠えているときは、こちらの犬にとっては閾値の内側に入りやすい場面です。会釈だけして、道の反対側か脇道へ。相手の飼い主に気を使って立ち止まる必要はありません。立ち止まると、その間にこちらの犬も吠え始めて、両方の犬に「吠える練習」をさせることになります。相手が離れたらおやつを出して、「吠えている犬が見えても良いことが起きた」で終わらせます。

Q. チョークチェーンやプロングカラーで止めたほうが早くないですか?

止まるように見えて、犬を見たときの感情は「痛い」「怖い」に置き換わるだけです。吠えという表現だけが消えて、警戒は残ります。合図がなくなるぶん、次に何が起きるかを読めなくなります。AVSABも、この種の道具は状況を問わず使うべきでないという立場です。罰にもとづくやり方のほうが報酬より優れているという証拠は出ていない、というのが理由です。同じ1ヶ月を「見たらおやつ」に使ったほうが、犬も飼い主も安全です。教室を選ぶときも、こうした道具を前提にする教室は避けてください。見分け方は選び方のページに書いています。

まとめ

散歩中に他の犬に吠える犬を直すのに、押さえるのはこの6つです。

  1. 吠えるかどうかは距離で決まる。まず自分の犬の閾値を測る。おやつを食べなくなったら、もう内側
  2. 吠えるたびに「吠えると犬が去る」を学んでいる。練習の前に、吠える場面をなくす1週間を作る
  3. 原因は3つ。怖い/会いたい/リードがもどかしい。迷ったら怖い前提で距離を取る
  4. 怖い犬には「犬が見えたらおやつ」。静かにしたご褒美ではなく、犬が現れた合図として出す。距離は週に3〜5mずつ
  5. Uターンと視界を切る場所(電柱・車の陰)を用意する。狭い道での動きを先に決めておく
  6. 近づけて慣らさない。ドッグランで慣らさない。首を引かない。どれも閾値の内側に押し込む行為

吠えの対象が犬だけでなく、自転車やバイクにも向く犬は、動く物を追いかける行動の記事も合わせて読んでください。同じ距離の考え方で対処できますが、追跡本能が関わる分、装備の話が加わります。物音全般に怯える犬は、音を怖がる犬の記事の音慣らしと並行すると、散歩中の閾値も広がります。家の中でも吠えが多い場合は、無駄吠えの原因別の対処から見直してください。

1ヶ月やって距離が縮まらなければ、閾値の見立てを第三者に見てもらう段階です。犬見知り向けのレッスンを持つ教室は、地域ごとに探せます。

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