ソファの脇、カーテンの裏、ラグの同じ角。拭いても消臭しても、数日おきに同じところでやられる。子犬のころは覚えていたはずなのに、なぜ今さら、と思っている方が多いと思います。結論から書きます。成犬の粗相は「忘れた」のではなく、体か環境か経験のどれかが変わって、今の家では正しい場所で用を足しにくくなっている状態です。
この記事では、失敗が続く家に共通する6つの条件を表にし、マーキング・うれしょん・尿失禁との見分け方を整理したうえで、成犬向けにまとめた2週間のやり直し手順を書きました。保護犬や外飼いから室内に移った犬、外でしかしない犬に室内トイレを教える段取りも、独立した章にしています。
ただし、順番だけは間違えないでください。これまで問題なくできていた犬の失敗が急に増えたなら、練習より先に動物病院です。泌尿器のトラブル、加齢に伴う体の変化、認知機能の低下は、どれも粗相という形で最初に出ます。まずそこから書きます。
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最終更新 2026年9月8日
急に失敗が増えたときは、練習より受診が先です
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要点は3つ。粗相には行動の原因と体の原因があること。「以前はできていたのに」という変化そのものが受診のサインであること。そして高齢犬の粗相には、意識してできない種類のものがあることです。
先に病院へ行ったほうがよい様子
獣医行動学の専門医が獣医師向けにまとめた解説は、判断の順番を示しています。室内で失敗しなかった犬が突然粗相を始め、引っ越しのような心当たりもない。この組み合わせなら、まず体の病気を疑います。飼い主の目に映るのは「間に合わない」「途中でやめる」という様子だけですが、裏側には排尿の回数が増える病気や、排泄のたびに痛みが出る病気があります。
練習より受診を先にする様子
- 1日の排尿の回数が明らかに増えた。少しずつを何度もする
- 水を飲む量が増え、おしっこの色が薄い
- 排尿の姿勢を取るのに出ない。途中で切り上げる。鳴く
- 尿の色が濃い、赤みがある、いつもと違うにおいがする
- 寝ている場所が濡れている。本人は気づいていない様子
- 後ろ足がふらつく。しゃがむ姿勢を取りづらそうにしている
- 7歳を過ぎてから、夜中に歩き回る・呼んでも反応が鈍いといった変化が同時に出てきた
受診のとき役に立つのは飼い主のメモです。いつから、1日何回、どこで、どのくらいの量か。この4つを3日分そろえて持っていくだけで話が早く進みます。教室より先に病院へ行くべき場面は、しつけ教室の選び方にもまとめてあります。
高齢の犬で増える、2つの別々の理由
ひとつは尿失禁です。膀胱の出口を締める筋肉がゆるみ、意識と関係なく漏れます。京都市内の動物病院の解説では、避妊手術を受けた雌犬と高齢犬に多いとされます。手がかりは時間帯で、起きて動いているあいだは出ず、眠り込んでいる最中に出ます。朝、寝床の毛布だけが濡れているなら、しつけの話ではありません。見分け方は単純で、しゃがむ・足を上げるといった排泄の姿勢を取っているかどうかです。
もうひとつは認知機能の低下です。覚えていた行動が抜け落ちる、不安が強くなる、昼と夜が入れ替わる、家族への接し方が変わる、見慣れた家の中で迷う。粗相は、このうち「抜け落ちる」ほうです。散歩に出たのに外では何もせず、玄関を入ったところで出す。これもその一例です。専門医向けの資料では、8歳以上でそれまで問題のなかった犬が室内で粗相を始めた場合にこの可能性を考えるとされています。どちらも叱って変わるものではありません。だからこそ、体の側を先に確かめる意味があります。
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一度は覚えたはずのトイレ、どこまで戻ってやり直しますか?
成犬のトイレのしつけ直しは、手順そのものより「どこから始めるか」の見極めでつまずいてしまうものです。文章の説明だけでは、自分の愛犬がどの段階なのか判断できません。
映像で見ると、進み具合の目安がつかめます。動画教材の「イヌバーシティ」には、子犬用と成犬用を分けて、わかりやすく収録されています。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
失敗が続く家に共通する6つの条件
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体の側に問題がないと分かったら、次は家の側を見ます。成犬の粗相は、犬の性格より家の条件で決まります。相談を受けていると、下の6つのどれかに必ず当たります。
| 共通点 | 犬の側で起きていること | 今日変えること |
|---|---|---|
| ① トイレが生活動線から外れている | 洗面所の奥、廊下の突き当たり、来客用の部屋。犬は尿意を感じてから移動するので、遠いほど間に合わない | 犬が1日でいちばん長く過ごす部屋に、もう1か所ぶん増やす。減らすのは後でよい |
| ② トレーが体に対して小さい | 成犬も用を足す前に2〜3周まわる。回り終えて前足しか乗っていないと、腰を落とした時点でお尻が縁の外に出る | 体長の2倍以上に替えるか、トレーの周囲にもシーツを敷き足す |
| ③ シーツが汚れたまま | 汚れた面を避けて、乾いた床のほうを選ぶ。留守番の長い家で起きやすい | 1回ごとに替える。替えられない時間帯は2枚を並べておく |
| ④ 過去に失敗を叱ったことがある | 場所の良し悪しではなく、人の目があるかどうかを基準にしてしまう。飼い主の視界の外へ場所が移る | 叱るのを今日でやめる。出し終わる瞬間に立ち会う回数を増やす |
| ⑤ 散歩でしか用を足していない | 室内で成功した経験がない。足裏の感触もにおいも「用を足す場所」と結びついていない | 散歩の出発前に室内のトイレへ寄る習慣をつける。段取りは後の章に |
| ⑥ 家族が増減した・引っ越した・家具の位置を変えた | 犬が手がかりにしているのは、においと、部屋の中でのおおまかな位置。どちらも一度に消えた | 1〜2週間は子犬と同じ管理に戻す。多くは数週間で落ち着く |
①と②は、置き場所と道具を替えるだけで数日で変わります。やってみると、「覚えていない」と思っていた犬の半分くらいは、ただ間に合っていなかっただけだと分かります。健康な成犬でも、安静時に膀胱へためておけるのは3〜4時間ほどです。朝と夜の散歩だけに頼る家では、その間隔が12時間近くになっていることがあります。これは我慢させすぎです。
④は叱るのをやめた時点から戻り始めます。ただし隠れる習慣まで固まった犬は成功の場面を見せてくれないので、褒めるきっかけが作れません。⑥の転居や新しい家族が来たあとの粗相は、それ自体が異常ではありません。手がかりが一度に消えたことへの反応で、多くは1か月ほどで落ち着きます。ただし、留守番のときだけ失敗する、破壊や鳴き続けが一緒に出ている場合は別の問題です。それは分離不安の記事に手順を分けました。
粗相・マーキング・うれしょん・尿失禁を見分ける
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床が濡れているという結果は同じでも、中身は4つに分かれます。手順が正反対になるものもあるので、先に切り分けます。
| 種類 | 起きる場面 | 量と姿勢 | 先にやること |
|---|---|---|---|
| 粗相(場所の学習の問題) | 時間帯はまちまち。人が見ていないとき、留守番中、遊びの途中 | 1回分がまとまった量。しゃがんで、出し切る | この記事の2週間の手順 |
| マーキング | 来客のあと、別の犬が来た日、新しい荷物や家具が入った日 | 少量。垂直な面(壁、柱、家具の脚)や、持ち込まれた物に。足を上げる、または腰を少しずらす | 普段の排泄ができているかを確かめる。できているならマーキング |
| うれしょん・服従性の排尿 | 帰宅の瞬間、来客が近づいた瞬間、かがんで手を伸ばされたとき | ごく少量。しゃがみきらずに、体を低くしたまま、または腹を見せながら漏れる | 迎え方を変える。叱ると必ず増える |
| 尿失禁 | 眠っている間。立ち上がったあとの寝床 | 本人が気づいていない。排泄の姿勢がまったくない | 動物病院へ。しつけの手順では変わらない |
いちばん間違われるのがマーキングです。決め手はひとつ、普段の排泄が減っているかどうかを見てください。散歩でも室内でもいつもどおり出せていて、それとは別に少量が壁や荷物についているなら、場所を教え直す話ではありません。増えているのは書き置きの回数だけです。手順が違うので室内マーキングをやめさせる方法に分けています。
うれしょんも別枠です。挨拶のときに体を低くしてぽたぽたと漏れるのは、その瞬間の興奮や緊張が体に出ているだけで、犬が意図してやっていることではありません。だから叱ると量が増えます。迎え方だけを変えて減らすやり方はうれしょんの治し方にまとめました。
【やり直しの手順】成犬は2週間の短期集中で組む
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成犬のやり直しは、子犬と材料は同じですが組み方が違います。子犬は1日に10回以上排泄するので、放っておいても練習の機会が来ます。成犬は1日3〜5回しかありません。つまり練習できる回数が少ない。だから、だらだら3か月続けるのではなく、機会を取りこぼさない2週間を作って一気に片づけます。子犬の進め方は子犬のトイレトレーニングの記事のほうにあります。
準備|最初の3日は記録だけ
- 時刻を書く。排尿・排便のそれぞれについて、何時何分か。成功でも失敗でも書きます。
- 場所を書く。失敗が2〜3か所に集中しているなら、そこが犬にとっての「もうひとつのトイレ」になっています。
- 直前に何をしていたかを書く。膀胱がいっぱいだった、腸が動いた、興奮で力が入った。このどれかが分かれば十分です。眠りから覚めた、水を飲んだ、ごはんのあと、帰宅で盛り上がった。この程度で構いません。
- 3日たったら間隔を計算する。前の排尿から次までの最短の時間を出し、その7割をこれからの誘導の間隔にします。4時間持つ犬なら2時間半おきです。
面倒に見えますが、これで2週間の作業量が半分になります。多くの家で、失敗の8割は1日のうち2つの時間帯に集中しています。
1週目|行動範囲を狭めて、成功の回数を作る
1週目の目的はひとつだけです。失敗が物理的に起きない状態を作って、成功だけを積む。期間は7日です。
- 過ごす場所を1部屋に絞る(初日)。犬が自由に動ける範囲を、目が届く1部屋にします。目を離すときはサークルかクレートへ。ここを甘くすると、以降の手順が全部無駄になります。
- トイレを2か所に増やす(初日)。減らすのは3週目以降の仕事です。今は「行けば間に合う」を優先します。片方は昼寝をしている場所の近く、もう片方は水を置いている場所の近くに。
- 記録で出した間隔で誘導する(1日目〜)。抱き上げるかリードで、黙って連れて行きます。成犬でいちばん確実なのは寝て起きた直後です。東京都動物愛護相談センターのコラムも、我慢できる時間が長い成犬では目覚めの瞬間がいちばん狙いやすいとしています。
- 連れて行ったら、しゃがんで黙って待つ(1日目〜)。声をかけるのは犬が動き出してからです。においを嗅ぎ、その場で回り、腰が落ちる。ここで「ワンツー」など決めた言葉を小さな声で1回。言葉は家族で1つに統一します。
- 出し終わって顔を上げた瞬間に渡す(1日目〜)。3秒以内です。5mm角に切ったチーズやゆでたささみを、その場で口へ。ポケットに入れておかないと間に合いません。
- 5分待って出なければ、いったん切り上げる(1日目〜)。サークルに戻して15分後にもう一度。待たせ続けると、トイレの上にいること自体が嫌になります。
- 失敗は無言で片づける(1日目〜)。犬を先に別の部屋へ出し、それから拭きます。目も合わせません。
成犬のやり直しで足りないのは、根気ではなく「成功の回数」です
1日3回しか用を足さない犬は、1週間で21回しか練習できません。そのうち5回失敗すれば、残るのは16回です。行動範囲を狭めて失敗を0に近づければ、同じ1週間で21回すべてが練習になります。狭くするのは我慢させるためではなく、褒める場面を取りこぼさないためです。
掃除|においを残すと、そこが2つ目のトイレになります
片づけは手順の一部です。人が拭いたつもりの床にも、犬の鼻には尿のにおいが残っています。そこは「以前ここで用を足した実績のある場所」として翌日も候補に残ります。
- 布ものを先に撤去する。ラグとカーペットは1週目だけ別室へ。繊維の奥に届いた尿は、表面を拭いても残ります。
- 広げずに吸わせる。ペーパーを重ね、上から体重をかけます。拭き取る動きをした時点で汚れが広がります。
- 尿の成分そのものを分解できる洗剤を選ぶ。表示どおりの時間を待って回収します。英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)は、酵素入りの洗濯用洗剤を1に対し水9で薄め、仕上げに水ですすぐやり方も挙げています。
- アンモニア入りは棚に戻す。犬の鼻には尿とよく似た信号で届くので、消したい場所に目印を足すことになります。
2週目|範囲を広げ、ご褒美を減らす
- 部屋を1つ増やす(8日目)。トイレの置き場所はそのままです。増やした部屋で失敗が出たら、その日は8日目より前の配置に戻します。叱らず、扉を閉めれば済みます。
- 誘導の間隔を30分延ばす(8日目〜)。記録を続けているので、延ばせるかどうかは数字で分かります。
- 自分で行った回数を数える(8日目〜)。誘導されずに自分でトイレへ行けたときだけ、ご褒美を2つにします。ここが「自分で行く」を教える山場です。
- ご褒美を3回に2回へ(12日目〜)。毎回もらえるより、もらえたりもらえなかったりするほうが行動は長続きします。声で褒めるのは毎回続けてください。
- 14日目に記録を見返す。失敗が半分以下なら順調です。3週目からトイレを1か所に減らし、範囲を家全体に広げます。
要る道具は2つだけです。体長の2倍以上あるワイドサイズ以上のトイレトレーと、尿を分解するタイプのペット用クリーナー。トレーは踏んでも縁がずれない重さのものを。軽いと乗った拍子に動いてシーツがめくれます。
場面別|保護犬・外飼いから室内へ・外でしかしない犬
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ここまでは、以前は室内でできていた犬の話でした。この章で扱うのは、そもそも室内で成功した経験がない犬です。やることは同じですが、最初のハードルの置き方が違います。
保護犬・繁殖引退犬を迎えた場合
ここでは前提のほうが崩れます。ベッドとトイレを離す定石は、「寝床は汚したくない」という感覚があって成り立ちます。狭いケージで寝食も排泄も同じ場所だった犬には、その感覚が育っていません。もうひとつ。用を足しているあいだ、犬は体勢を崩せません。人を信用しきれていない犬ほど、視線が外れるのを待ちます。見ている飼い主自身が、隠れ場所を探させています。
- 最初の1週間は、床のほうをトイレに寄せる。過ごす範囲をシーツでほぼ覆います。この1週間は失敗という結果が存在しません。狙いは記録で、その子がどこを選ぶかだけを見ます。
- 選んだ場所を残して、3日ごとに1列ずつ減らす。途中で失敗が出たら、1段階戻します。
- 囲いを一辺だけ足して、こちらは見ない。家具や仕切りで片側をふさぐと落ち着く犬がいます。飼い主は同じ部屋で背中を向け、視線を外して待ちます。
- ケージの中や真横も候補から外さない。教科書どおりの配置ではありませんが、そこでしか出せない犬なら回数が先です。
保護された犬では、迎えて1〜2か月は失敗と成功を行き来します。落ち着くまで半年かかったという話も珍しくありません。期限を決めないでください。守れなかったときに、叱る方向へ気持ちが向きます。
外飼いから室内に移った犬
庭や犬舎で暮らしていた犬にとって、家の中は巣穴です。犬にはもともと休む場所を汚したくない傾向があるので、室内に入れた初日は何時間でも我慢します。ここで「粗相しないから覚えている」と判断すると、数日後にまとめて失敗します。
やり方は単純で、いきなり室内で完結させないことです。玄関の三和土、勝手口、ベランダ。屋根はあるが外の空気が届く場所を1か所選び、シーツかトレーを置きます。足の裏の感触も外に寄せたいので、人工芝をシーツにかぶせます。東京都動物愛護相談センターのコラムも、外でしか排泄しなくなった犬に人工芝が有効だとしています。安定したら、置き場所を1日30cmずつ室内へ寄せます。
雨の日に困る「外でしかしない犬」に、室内トイレを教える
室内を教える最大の理由は、犬の足腰が弱ったときです。外まで歩けなくなった日に、室内でできる犬とできない犬の差がいちばん大きく出ます。台風で出られない日、飼い主が寝込んだ日、避難所で過ごす日も同じですが、どれも何日かで終わります。足腰の話は終わりません。東京都も「犬と散歩をするときの3つのルール」で、トイレは散歩の前に家で済ませるよう求めています。手順は5段階。始めるのは、雨に困っていない日からです。
- 散歩中に合図をつける(1〜7日目)。外で始まった瞬間に、小さな声で「ワンツー」と繰り返します。終わったら褒めます。1週間で、言葉と排泄が結びつき始めます。
- 散歩の出発前に、室内トイレへ寄る(8日目〜)。リードをつけたままトイレに立ち、合図をかけて5分待ちます。出たら大きく褒めて、そのまま出発。出なくても、待たせずにそのまま出発してください。「室内で出すまで外に出さない」と決める方法は、我慢の時間を延ばすだけです。長くためるほど負担は体に向かいます。
- 足の裏に外の感触を用意する(8日目〜)。人工芝をシーツにかぶせるか、人工芝をはめ込めるトレーに替えます。草や土でしか出さない犬なら、外で用を足す場所の土をひとつまみ持ち帰って芝に載せます。
- 最初の1回を寝起きに狙う(8日目〜)。膀胱がいっぱいで、まだ散歩の予定を察していない朝の起き抜けが、いちばん出やすい瞬間です。
- 雨の日の散歩は、目的を1つに絞る(並行して)。室内でできるまでは雨でも出ますが、いつもの道をたどる必要はありません。その子が必ず出す場所を目指し、往復10分以内で帰ります。雷が鳴る日は外に出ず、屋根のある玄関先やベランダにシーツを敷いて済ませます。
この練習は早くて2〜3週間、長ければ数か月かかります。外で用を足してきた年数が長いほど時間がかかるので、「外も室内も、どちらもできる」を目標にしてください。屋外での習慣まで手放させる理由はありません。
やってはいけないNG対応
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粗相への対応でいちばん多い5つは、どれも失敗を増やす側に働いています。理由とセットで書きます。
失敗の跡を見せて叱る。数分前に自分がしたことと、いま怒っている人。犬はこの2つをつなげ直せません。残るのは「飼い主が急に怖くなった」だけです。しょんぼりして見えるのも、済んだことを悔やんでいるのではなく、目の前の声と姿勢への反応です。
している最中に大声で止める。その一回は止まります。ただし止まった理由は、場所を間違えたと気づいたからではなく、人が見ている前で出すとまずいことが起きると学んだからです。翌日からは家具の裏、ベッドの下、カーテンの陰が選ばれます。飼い主には「隠れるようになった」と見えますが、犬は危険を避けているだけです。成功の場面に立ち会えなくなるので、表の④はいちばん時間のかかる条件です。
鼻を押しつける。米国動物虐待防止協会(ASPCA)が挙げる理由は、伝わる中身がずれることです。犬に届くのは場所の話ではなく、この人は排泄物そのものが嫌いらしいという理解です。だから場所を変えず、隠すのが上手くなります。米国獣医動物行動学会(AVSAB)が2021年に出した声明も、報酬を使う方法だけを勧めています。痛みや力ずく、精神的な苦痛を伴うやり方は、日々のしつけでも問題行動の治療でも使うべきでない、という範囲指定つきです。根拠は恐怖や不安、攻撃性が強まること、人と犬の関係が損なわれることでした。罰に頼らない教え方は叩いたり叱ったりせずにしつける方法で扱っています。
失敗のたびに駆け寄って、名前を呼びながら片づける。向きは叱るのと正反対ですが、止まり方は同じです。犬の側から見れば、床にしたら人が寄ってきて声をかけてくれた、になります。
オムツやマナーベルトで済ませる。汚れを防ぐ道具としては有効で、シニア期や来客の日には助かります。ただし覚え直しの代わりにはなりません。東京都動物愛護相談センターのコラムも、一時しのぎの救済策として位置づけています。つけたまま排尿を繰り返すと被毛が黄ばみ、皮膚の弱い犬ではかゆみも出るため、生涯使い続ける手ではない、という理由です。
2週間の記録を見ても変わらないときに、考えること
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ここまでの手順は、読めば分かると思います。それでも2週間が空振りに終わる家があります。理由はたいてい、自分の家のどのねじが緩んでいるかを、内側からは確かめようがないことです。誘導が30分遅い。おやつが5秒遅い。家族のひとりだけが今も叱っている。外から半日眺めれば見えるずれです。
選択肢は3つあります。
- 出張トレーニング・しつけ教室。トイレは家の中でしか起きないので、来てもらう形が合っています。トレーの位置と家族の動きを、その場で直してもらえます。全国のしつけ教室から、訪問に対応しているところを地域で絞れます。
- 飼い主が学ぶオンライン教材。崩れている箇所を自分で見つけられるようにする道です。下で書きます。
- 動物病院の行動診療科。少量を何度もする、寝床が濡れる、高齢になってから始まった。この場合は練習より先にここです。判断の目安はしつけ教室の選び方に置いています。
排泄は1日3〜5回。その全部に立ち会えるのは、家にいる人だけです
トレーナーが週1回来て、その1時間に1回成功させることはできます。けれど残りの回に見ている人はいません。「出し終わって顔を上げた3秒」をつかまえる仕事は、その場にいる飼い主にしか回ってきません。最後にものを言うのは、飼い主が仕組みを分かっていて、何度でも同じ手が出せることです。
「イヌバーシティ」は、飼い主の側が学ぶために作られたオンライン教材です。1,260分の収録があり、やり方だけでなく、問題行動がどう改善していったのかという過程まで映像で追えます。成犬用と子犬用が分けて紹介されていて、体罰にあたる扱いは出てきません。価格は43,780円(税込)。視聴の期限はなく、買った日からスマホで見られます。家に来てもらう出張トレーニングは1回8,000〜20,000円が相場なので、3回ぶんとだいたい同じ帯です。
正直に書きます。これは動画を見て、自分の家で場面を作って試す形の教材です。「うちのトレーの位置を見て、今日直すところを決めてほしい」なら出張トレーニングのほうが早いです。向いているのは、なぜその順番なのかを納得してから動きたい方、同じ映像を家族で見て対応をそろえたい方です。
同じ場所で何度も繰り返す、留守番のときだけ失敗する、シーツの縁で外す——いろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となっていませんか? 用を足し終えて顔が上がる、あの一瞬に飼い主が何をしているか。それを実際の犬の映像で見られるのがこの教材です。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。成犬の回を1本見てから、うちの2週間をどう組むか決める順番でもいいと思います。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
よくある質問
Q. 何歳からでもトイレのしつけ直しはできますか?
できます。年齢の上限はありません。成犬には有利な点もあって、膀胱をためておける時間が長いぶん、飼い主がタイミングを狙いやすくなります。不利なのは練習の回数が少ないことと、これまでの習慣が積み上がっていることです。10歳を超えているなら、始める前に一度健康診断を受けておくと安心です。
Q. 何日くらいで変化が出ますか?
環境が原因(トレーが小さい、位置が遠い、シーツが汚れている)なら、変えた翌日から減ることがあります。叱られた経験が絡むなら2〜4週間、外でしかしない習慣が何年も続いているなら1〜3か月が目安です。最初の変化は「失敗が減る」ではなく「失敗の場所が1か所に集まる」という形で出ます。まとまってきたら、進んでいる証拠です。
Q. 留守番のあいだだけ失敗します
まず、留守番の時間が犬の限界を超えていないかを確かめてください。健康な成犬でも、動かずにためておけるのは3〜4時間ほどです。8時間の留守番で失敗しているなら、覚えていない話ではありません。留守中はサークルの中で用を足せる配置にし、シーツは余裕をもって敷きます。そのうえで、吠える・壊す・よだれが多いといった様子が重なるなら別の問題です。分離不安の記事と留守番の教え方を読んでください。
Q. 家族の誰かが在宅しているときは失敗しません。なぜですか?
その人がいると誘導のタイミングが自然に合っているだけ、という場合と、ひとりになったときの不安が排泄の形で出ている場合の2つが考えられます。見分けるには、留守番の最初の30分をペットカメラで録画します。出発直後からうろうろ歩き、ドアの前で鳴き、その流れで漏らしているなら後者。昼過ぎに静かに用を足しているだけなら前者で、この記事の手順で進みます。
Q. トイレの場所を移動させたいのですが、どうすればいいですか?
失敗ゼロの週を1回はさんでから、1日30cmずつ動かします。一気に動かすと、犬が頼りにしているにおいと位置の手がかりが両方消えて振り出しに戻ります。移動先に先にもう1か所作り、両方で成功してから元の1か所を外す、という順番のほうが確実です。急ぐ理由がないなら動かさないのが一番です。
Q. ペットシーツを何度も破ってしまいます
成犬が破るときは、退屈と、シーツそのものが遊び道具になっているケースが多くみられます。まずはメッシュカバーのついたトレーに替えて、口が届かない形にしてください。そのうえで、破っている時間帯に知育トイなど噛んでいい物を渡します。破った直後に駆け寄って片づけると、それ自体が反応として働くので、犬が見ていないときに黙って交換するほうが早く収まります。破片を飲み込んだ様子があれば、その日のうちに動物病院へ。
まとめ
成犬のトイレをやり直すときに押さえるのは、この6つです。
- 急に増えた失敗は、練習より受診が先。少量を頻繁に、多飲多尿、寝床が濡れている、高齢での変化
- 犬ではなく家の条件を疑う。動線から外れた位置、小さいトレー、汚れたシーツ、過去に叱ったこと、外だけの習慣、環境の変化
- マーキング・うれしょん・尿失禁は別の問題。普段の排泄が減らずに少量が増えているならマーキング、姿勢を取らずに漏れているなら失禁です
- 2週間の短期集中で組む。3日記録して間隔を出し、1週目は範囲を狭めて成功だけを積み、2週目で広げる
- 渡すのは出し終わって顔を上げてから3秒以内。失敗は声をかけずに片づけ、尿を分解する洗剤でにおいごと消す
- 外でしかしない犬の練習は、雨に困っていない日から。合図を外でつけて、出発前の5分を室内で。出なくてもそのまま散歩に出ます
トイレの失敗は、家の中の困りごとのなかでも飼い主の消耗が大きいものです。だからこそ、犬を変えようとする前に、体と環境という自分で動かせる部分から手をつけてください。2週間の記録が残っていれば、誰に相談しても話が早く進みます。
近くにどんな教室があるか分からないときは、かかりつけの動物病院で聞くのが早道です。トイレの相談は受診の理由にもなるので、診察のついでに紹介を頼めます。
※ 病気や加齢に関する記述は一般的な情報です。個々の症状の判断は、かかりつけの動物病院で相談してください。
※ 掃除の方法と期間の目安は、動物福祉団体や獣医療機関が公開している案内にもとづく一般的なもので、すべての犬に当てはまるわけではありません。

