飼いたい犬種は決まっている。お金もある程度は用意した。あとは、どこから迎えるかだけ——。ここまで来た方に、先に読んでほしいことがあります。
日本で1年間に自治体へ引き取られる犬は、17,399頭です。環境省が公表している令和6年度の統計です。このうち飼い主自身が持ち込んだのは2,215頭にとどまります。残る15,184頭は、誰の犬か分からないまま収容された犬です。迷子と、遺棄と、外で生まれた犬が、この数字の中身になります。
では、飼い主が手放すときの理由は何が多いのか。ここが、この記事を書いた理由です。調べてみると、1位は「しつけがうまくいかなかったから」ではありませんでした。いちばん多かったのは、飼い主自身や家族が病気になったことです。
つまり、飼う前にやっておくべきことの順番は、多くの人が思っているものと違います。この記事では、法律で決まっている手続き、15年ぶんのお金、住まいと時間、家族で決めておくこと、迎え先の選び方までを、迎える前に片づけられる形で並べます。読み終えたときに「まだ早い」と判断してもらってもかまいません。それも、この記事の役目のひとつです。
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最終更新 2026年9月15日
犬が手放される理由の1位は、しつけの失敗ではありません
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準備の優先順位を決めるには、うまくいかなかった家で何が起きたのかを先に見るのが早道です。ここは数字で始めます。
149件の相談を分類した結果
帝京科学大学の研究チームが、関東の動物愛護団体に保護を依頼してきた飼い主149名に、電話で理由を聞き取って分類した調査があります。結果はこうでした。右の列は、論文に載っている依頼者本人の言葉です。
| 保護を依頼した理由 | 割合 | 依頼者本人の言葉(論文より) |
|---|---|---|
| 飼い主の病気・傷病等 | 32.21% | 「飼い主の介護が必要になり、世話ができなくなった」 |
| 遺棄拾得 | 26.85% | 「ペット飼育禁止マンションなのに子猫を拾った」 |
| 転居 | 10.07% | ペット不可の物件に引っ越した |
| 離婚 | 8.05% | 離婚後、双方の新居がペット不可だった |
| 苦情 | 6.04% | 近隣から飼育をやめるよう言われた |
| 経済的理由 | 4.70% | 生活が苦しくなり、養えなくなった |
| 動物の老齢・傷病等 | 4.70% | 「ペットの体調が悪くなり、自分の体力的に面倒を見れない」 |
| 問題行動 | 3.36% | 鳴き声が大きく、近所から苦情が来た |
問題行動は3.36%で、下から2番目です。そして犬だけを取り出すと、最上位に来るのは飼い主側の健康問題で、続いたのが離婚、その次が転居でした。鳴き声や噛みつきで手放された犬より、飼い主の人生が変わって手放された犬のほうが、はるかに多いということです。
ここから逆算すると、準備の順番が変わります
しつけの本を1冊読むより先に、やることがあります。自分が2週間入院したとき、この犬をどうするかを決めておくこと。そして、その決めた先に「頼むかもしれません」と話を通しておくことです。
実家、友人、ペットホテル、預かりボランティア。どれでもかまいません。要るのは選択肢そのものではなく、その日が来る前に一度話しておくことです。倒れてから探す人と、前に話してある人とでは、同じ状況でも結末が変わります。
転居と離婚が上位に来ていることにも、同じ読み方ができます。どちらも「犬が原因で起きること」ではありません。人の側の事情です。だからこそ、いま住んでいる家だけでなく、次に住むかもしれない家でも飼えるかを、迎える前に考えておく意味があります。この記事の後半で、住まいの確認の仕方を具体的に書きます。
犬を手放す日は、犬のせいでは来ない
いちばん多いのは、飼い主が倒れたときです。その次が、家族の形が変わったときと、住む場所が変わったとき。犬のしつけを完璧にしても、この3つは防げません。防げるのは、そうなったときの受け皿を先に作っておくことだけです。
ただし、しつけの準備を後回しにしていいという話ではありません
誤解のないように書き添えます。問題行動が3.36%だったのは、あくまで「保護団体に手放す理由」としての順位です。苦情(6.04%)の中身も近隣トラブルですから、あわせて見れば1割近くが吠えや鳴き声にかかわっています。
それに、手放すところまで行かなくても、噛む・吠える・トイレを覚えないで消耗している家は山ほどあります。統計に出てこないだけです。この記事の終わりのほうで、迎える前にやっておくしつけの準備についても書きます。
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迎えた初日の夜、どう犬に対応するか決まっていますか?
犬を飼う準備が整ったあとに残るのは、犬が来てからの対応です。鳴き始めた犬にいつ近づくか、噛まれた手をどう引くかは、文章だけではなかなか伝わりません。
人側の動きは、動画で見ると一番理解できます。子犬を迎えた最初の数週間の場面や、困った時の対応法が、「イヌバーシティ」の動画には入っています。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
まず、法律で決まっていることを片づける
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犬を飼うと、法律で決まっている手続きが発生します。知らなかったで済まないものが3つあり、うち2つには罰則がついています。順に片づけてください。
1|市区町村への登録(狂犬病予防法)
犬が生後91日を過ぎていれば、迎えた日から30日のうちに、住んでいる市区町村で登録します。登録は生涯に1回だけで、手数料は3,000円程度。済むと鑑札が交付されます。
あわせて、生後91日以上の犬は年1回、狂犬病の予防注射を受けます。接種後は注射済票の交付を受け、鑑札とともに犬に装着します。どちらも狂犬病予防法で決まっていて、怠った場合は20万円以下の罰金が科されることがあります。
2|マイクロチップの情報登録
ここは、自分がどの立場かで義務の内容が変わります。間違えやすいところなので、表にします。
| あなたの状況 | やること | 義務か |
|---|---|---|
| ペットショップ・ブリーダーから迎える | すでにチップは入っている。自分の情報への変更登録を30日以内に | 義務 |
| 知人や保護団体から譲り受ける(チップ有り) | 同じく変更登録を30日以内に | 義務 |
| すでに飼っている犬に入れる | 動物病院で装着し、登録する | 努力義務 |
販売業者には装着と登録が義務づけられているので、お店やブリーダーから迎える犬には、原則としてチップが入っています。そのうえで、譲り受けた側は30日以内に自分の情報へ書き換える必要があります。手数料はオンラインで400円、郵送で1,400円です。
この登録は、迷子になったときに戻ってくる確率を上げるためのものです。冒頭の数字を思い出してください。先ほどの令和6年度の統計で、身元の分からない犬が15,184頭いました。引き取られた犬の87%です。このうち飼い主のところへ戻れたのは6,630頭。差の数だけ、誰の犬か分からないまま終わった犬がいます。
なお、市区町村によっては、マイクロチップを狂犬病予防法の鑑札とみなす特例に参加しています。参加している自治体なら手続きが1本化されるので、登録に行く前に、自分の市区町村が特例に参加しているかを確認してください。
3|生後56日を過ぎているかの確認
これは飼い主の義務ではなく、売る側の規制です。ただ、買う側が確認する材料として使えます。
動物愛護管理法により、繁殖業者やペットショップは、生後56日(8週)を経過していない犬を販売することも、販売のために展示することもできません。令和3年6月1日から施行されています。
なぜ56日なのか。環境省は、その期間を母親やきょうだいと過ごすことで、吠える・咬むの加減を身につけ、母乳で免疫を高めるからだと説明しています。早く引き離された子犬ほど、あとから問題行動が出やすいことが理由です。
例外がひとつあります。文化財保護法で天然記念物に指定されている日本犬6種(柴犬・秋田犬・紀州犬・甲斐犬・北海道犬・四国犬)だけは、期間が49日に短縮されます。適用されるのは、その犬種を専門に扱う繁殖業者が、業者を介さず直接一般の人へ売る場合に限られます。
4|対面説明18項目と現物確認は、買う側の権利です
もうひとつ、知っておくと迎え先選びが変わる決まりがあります。動物を販売する側には、事業所で現物を直接見せること、そして18項目の重要事項を書面を使って対面で伝えることが課されています。
説明されるのは、品種、生年月日、性別、繁殖者の情報、遺伝性疾患の有無、ワクチンの接種状況、給餌の方法、想定される寿命などです。ネットの画像だけを見て、会わずに買うことはできません。これは業者側の義務なので、守られていない売り方に出会ったら、そこで手を引く判断材料になります。
迎えてから30日以内にやること
- 市区町村への登録(生後91日以上の犬。鑑札を受け取る)
- 狂犬病予防注射(年1回。注射済票を受け取る)
- マイクロチップの変更登録(オンライン400円)
- 鑑札と注射済票を犬に着ける(首輪に付けるのが一般的)
お金|15年でいくらかかり、いつ高くなるか
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犬にかかるお金は、買うときがいちばん高いと思われがちです。実際は逆で、後半に向かって上がっていきます。ここを知らずに予算を組むと、いちばんお金が要る時期に手が足りなくなります。
生涯にかかる金額の目安は278万円
ペットフード協会が毎年出している全国犬猫飼育実態調査の2025年版では、犬1頭の生涯必要経費は278万円、1か月あたりの支出は平均16,198円とされています。フード、医療費、トリミング、保険、用品を合わせた数字です。
これは平均です。大型犬ならフードも薬も増えますし、長毛種ならトリミング代が毎月かかります。自分が迎えようとしている犬種で計算し直してください。
高くなるのは、迎えてから10年目以降です
ここがこの章のいちばん大事なところです。アニコム損保が保険金の請求データを集計したところ、15歳の犬の年間診療費は、1歳の4.7倍になっていました。報道された金額では、1歳が5万円台なのに対し、15歳は24万円近くです。
そして、同じアニコムの集計による犬の平均寿命は14.1歳。つまり、いちばんお金がかかる年齢まで、多くの犬が生きます。「若いうちに貯めておく」ではなく、「10年後に毎月2万円の医療費が出せるか」で考えるほうが実態に合います。
| 時期 | 主に出ていくお金 | 目安 |
|---|---|---|
| 迎える前 | 生体価格、ケージ・トイレ・食器などの用品一式 | 用品で3〜6万円。生体価格は別 |
| 最初の1年 | 登録3,000円、混合ワクチン(初年度は2〜3回)、狂犬病注射、健康診断、去勢・避妊 | ワクチン類で2〜4万円、手術で2万円前後 |
| 2〜10年目 | フード、予防薬、トリミング、保険、日用品 | 月16,000円前後 |
| 11年目以降 | 上に加えて、慢性疾患の通院と投薬、検査 | 診療費が1歳時の数倍に |
迎える前に決めておく金額はひとつ
「1回の手術に、いくらまで出せるか」です。犬の手術は、数万円で済むものから、30万円を超えるものまであります。その場になってから家族で相談すると、話が金額ではなく気持ちの問題になります。先に上限を決めて、そこにペット保険を使うかどうかも決めておいてください。
ペット保険に入るなら、迎えた直後が判断どきです
ペット保険は、すでにかかっている病気は補償の対象外になるのが一般的です。年齢が上がると入れる商品も減ります。入る・入らないをどちらに決めるにせよ、健康なうちに考えたほうが選択肢が多い、という性質のものだと知っておいてください。
なお、保険に入る代わりに、毎月同じ額を専用の口座に積む方法を取る人もいます。どちらが得かは犬によって変わるので、ここでは断定しません。決めておくべきなのは、方法よりも「医療費をどこから出すか」を先に決めておくことです。
住まい|「ペット可」の3文字で安心しない
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手放す理由の3位が転居、4位が離婚でした。どちらも住まいが変わる話です。ここは、いま住んでいる家の確認と、次の家の見通しの両方が要ります。
分譲マンションは、規約の中身まで読む
国土交通省が平成25年度に行ったマンション総合調査では、管理組合の47.4%がペットの飼育を禁止しており、全面的に認めているのは2.9%でした。残る42.5%は、大きさや種類を限定して認めるという回答です。つまり多数派は「一定の条件で認める」で、その条件が規約と使用細則に書いてあります。
この調査は10年以上前のものなので、いま建っているマンションの実感とは少しずれます。近年に完成した物件ほど、ペット可の割合は高くなっています。ただ、それは「飼える」という意味であって「無条件で飼える」ではありません。読むべきものは変わらず、規約と使用細則です。
見るのは、飼える種類と頭数、体重や体高の上限、共用部での移動方法(抱く、カートに入れる、エレベーターの使い方)、届け出の要否、そして違反したときの扱いです。「ペット可」と書いてあっても、10kgまで、1頭まで、という物件は珍しくありません。
賃貸は、退去のときのお金まで確かめる
賃貸のペット可物件では、敷金が1〜2か月分上積みされたり、ペット保証金を別に預けたりするのが一般的です。問題は、それで足りるとは限らないことです。
爪による床の傷、柱や建具の噛み跡、においの染みつき。これらは通常の使用による損耗とは扱われにくく、退去時に別途請求されることがあります。契約前に、次の3つを確認してください。
- 敷金の何割が、退去時に戻らない扱いか
- ペットによる傷やにおいは、どこまで借主の負担か(契約書の特約に書いてあることが多い)
- 飼える種類・頭数・大きさの制限
次の家でも飼えるか、いまのうちに考えておく
15年のあいだに一度も引っ越さない人は、多数派ではありません。転勤、結婚、出産、親の介護。どれが来ても不思議はない長さです。
ペット可の賃貸は、地域によっては全体の2割前後にとどまります。「探せばある」ではなく「選べる数がぐっと減る」と考えてください。とくに大型犬や多頭飼いになると、候補はさらに絞られます。
実家に頼るつもりなら、先に話しておく
「いざとなったら実家に預ける」と考えている方は多いのですが、そのとき実家の側が何歳になっているかを計算してみてください。15年後の話です。頼れる前提で迎えるなら、口約束でいいので、迎える前に一度伝えておいてください。
時間|1日と15年で、何が固定されるか
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お金と違って、時間は借りられません。ここは正直に見積もってください。
毎日、動かせなくなるもの
犬種と年齢で幅はありますが、散歩は1日2回、合わせて30分〜1時間半。これに食事の準備、トイレの片づけ、遊びと歯みがきが加わります。朝の散歩は、出勤前に組み込むことになります。
意外と効くのが、この時間が雨の日も、体調が悪い日も、飲み会の翌朝もなくならないことです。旅行に行くときは預け先を手配し、出張が入れば同じことをします。1日あたりの負担より、「抜けられない」という性質のほうが、生活を変えます。
最初の3か月は、さらに別枠です
子犬を迎えると、最初の数か月は睡眠が削られます。夜鳴きで起こされ、トイレの失敗を片づけ、甘噛みの対応をし、数時間おきに食事を与えます。
そして、ここには期限つきの仕事も混ざります。犬には社会化期と呼ばれる時期があります。生まれて3週目に始まり、4か月になるころまで続きます。ここで触れたものが、そのあと何を怖がらないかを決めます。8週齢を過ぎてから迎えるとすると、手元にあるのは残りの8週間ほどです。
この期間にやることは、家の外の音、いろいろな年代の人、他の犬、車、傘、掃除機、動物病院の待合室などに、怖がらせない範囲で慣らしていくことです。ワクチンが完了する前は抱っこで外に出す方法が使えます。「落ち着いてから」と待っていると、いちばん吸収する時期が終わります。
留守番の時間には限りがあります
共働きでも犬は飼えます。ただし、迎えた直後からいきなり8時間の留守番をさせると、その時間そのものが恐怖の記憶になることがあります。
短い時間から始めて少しずつ延ばす。子犬のうちは、昼にトイレと食事の面倒を見る手を確保する。この2つが要ります。ペットシッターや家族の協力が使えるかを、迎える前に決めておいてください。留守番の練習の進め方は犬の分離不安の記事で詳しく扱っています。
家族で決めておく5つのこと
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迎えてから揉めるのは、たいていこの5つです。全部、迎える前なら10分で決まります。
1|朝の散歩は誰が行くか
「みんなで世話する」は、決めていないのと同じです。曜日で割り当てるか、担当を決めてください。とくに朝の散歩は、いちばん最初に押しつけ合いになる仕事です。
子どもが「絶対に私が世話する」と言っている場合は、そのまま信じないでください。悪意ではなく、学年が変わると生活が変わるからです。子どもが行けない日に誰が行くかまで決めて、はじめて分担になります。
2|アレルギーの検査を受けたか
犬アレルギーは血液検査で調べられます。アレルギー科や耳鼻科で受けられ、費用は数千円程度です。家族全員ぶん受けてください。迎えてから発覚するのが、いちばん困る形です。
ここで注意してほしいのが、「アレルギーが出にくい犬種」という言い方です。犬アレルギーの主な原因は毛そのものではなく、フケや唾液に含まれるタンパク質で、Can f 1と呼ばれるものが代表です。これはすべての犬が持っています。
2012年にアレルギー分野の専門誌に載った研究は、低アレルギーとされる犬種(ラブラドゥードル、プードルなど)と一般的な犬種で、毛に含まれるCan f 1の量を比べています。結果は、低アレルギー犬種のほうがむしろ高い値でした。論文は、特定の犬種を低アレルギーと呼ぶ根拠は見当たらないと結論づけています。
抜け毛が少ない犬種は確かにあります。ただ、それは掃除の手間が減るという話で、アレルギーの出方とは別の問題です。検査を、犬種選びで代用しないでください。
3|自分が倒れたとき、誰に預けるか
最初の章で見た、手放す理由の1位です。「2週間入院することになったら」を想定して、預け先を1つ決めておいてください。そして、その相手に一度伝えておく。ここまでやって備えです。
ひとり暮らしで迎える方は、とくに大事です。連絡先を書いたカードを財布に入れておく、犬がいることが分かるステッカーを玄関に貼る。こうした備えをしている飼い主は実際にいます。
4|医療費は、いくらまで出すか
前の章で触れた、手術の上限額です。数字で決めておいてください。「できるだけのことをする」では、いざというときに家族の意見が割れます。
5|叱るか、叱らないか
最後のひとつが、しつけの方針です。ここが家族でバラバラだと、犬は混乱します。
父親は大きな声で叱り、母親は無視し、子どもは笑って撫でる。犬から見ると、同じことをしても結果が毎回違う状態です。これは犬にとって、いちばん学習しにくい環境です。
方針は決めやすいほうを取ってください。米国獣医動物行動学会(AVSAB)は2021年の声明で、報酬にもとづく方法だけを推奨し、身体的・心理的な罰はいかなる状況でも使うべきでないとしています。罰のほうが効果的だという証拠はなく、恐怖・不安・攻撃性を増やし、飼い主との関係を悪くする危険があるからです。
迎える前に、紙に書いて貼っておくこと
- 朝と夜の散歩、それぞれの担当
- ごはんを与える人と、時間
- 許すことと、許さないこと(ソファに乗せるか、人の食べ物を与えるか)
- 叱り方をどうするか(大声を出さない、体罰はしない)
- 手術の上限額と、預け先
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家族で同じしつけ方をする。言葉だけでそろえられますか?
「叱らないしつけをする!」と家族全員で決めても、なにをどうするかまでは言葉で伝わりません。父親と母親と子どもで、しつけ方、手の出し方がばらばらになります。
同じしつけ動画を見た家族は、しつけ方、問題行動への対応法がそろいます。「イヌバーシティ」の動画は1本が数分なので、夕食のあとに全員で1本ずつ見るといった使い方もできますよ。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
どこから迎えるか|3つの入口と、見学で確かめること
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迎え先は大きく3つです。どれが正しいということはありません。確かめるべきことが違うだけです。
| 入口 | 向いている人 | いちばん確かめること |
|---|---|---|
| ブリーダー | 犬種を決めていて、親犬や育った環境まで見たい | 親犬に会えるか。その場で繁殖しているか |
| ペットショップ | 複数の犬種を見比べたい、すぐ迎えたい | 繁殖元をたどれるか。展示の期間と環境 |
| 保護犬(団体・自治体) | 成犬でもよい、性格が分かっている犬を迎えたい | 譲渡条件に自分が当てはまるか。犬の来歴 |
どの入口でも、最初に見るのは標識です
第一種動物取扱業の登録を受けた事業者は、登録番号・事業所の名称・登録年月日・有効期限・動物取扱責任者の氏名を書いた標識を、見やすい場所に掲示する義務があります。見学に行ったら、まずこれを探してください。
見当たらない、写真だけで販売しようとする、事業所に来なくていいと言う。このどれかがあれば、そこで判断がつきます。前の章で書いたとおり、現物確認と対面説明は業者側の義務だからです。
見学の前に、電話で聞いておく5つ
日本動物福祉協会が、良いブリーダーを見分けるための質問リストを公開しています。そこから、電話の段階で聞けるものを挙げます。
- 「その子犬は、そちらで生まれましたか」。自分のところで繁殖した子犬を迎えるのが基本です
- 「母犬ときょうだいに、一緒に会えますか」。会える場所で育っているかどうかが、この一問で分かります
- 「きょうだいは何頭いますか」。見学当日にもう一度聞いて、同じ数が返ってくるかを見ます
- 「両親に遺伝性疾患はありませんか」。犬種によっては、目、関節、心臓、耳の病気が受け継がれます
- 「スタッフは何人で、何頭を世話していますか」。1人あたりの頭数が多すぎないかの目安になります
同協会は、きょうだいの数を問い合わせの時点と見学の日の2回たずねて、答えが合うかを見るよう勧めています。手間のわりに効く一手です。数が食い違うなら、その子犬が本当にそこで生まれたのかを、あらためて確かめる必要があります。
見学当日に、自分の目で見ること
犬そのものより先に、その子犬が育っている場所を見てください。人の生活音が聞こえる場所で育った子犬と、静かな犬舎で人に会わずに育った子犬では、家に来てからの慣れ方が変わります。
見るのは、においと床の状態、水が新しいか、子犬が人を見たときの反応です。近づいても逃げない、けれど飛びついても来ない。そのくらいが扱いやすい範囲です。すみの方で固まったまま動かない子犬は、迎えてからの社会化に時間がかかります。
保護犬を迎える場合
保護団体や自治体からの譲渡には、条件がついていることがほとんどです。同居家族の同意、留守番の時間、ペット可の住まいであること、先住犬との相性、年齢制限など。条件は団体ごとに違うので、気に入った犬が見つかってから確認するのではなく、先に条件を読んでください。
成犬を迎える利点は、体の大きさも性格もすでに分かっていることです。子犬のような「育ててみないと分からない」部分が少なく、最初の数か月の消耗も軽くなります。ただし、過去に何があったか分からない犬もいるので、慣れるまでの時間は犬によって大きく違います。
迎える前にそろえるアイテム|初日に要る7つと、後でいいもの
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買い物はきりがありません。ここでは「初日に無いと困るもの」だけに絞り、それぞれの選ぶ基準を書きます。後から買い足せるものは、後から買ってください。
初日までにそろえる7つ
| もの | 選ぶ基準 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| サークル/ケージ | 寝そべった体がはみ出さず、その場で一回りできれば足ります。成犬の体格で買って、仕切り板で狭めて使う | 広すぎると片側を寝床、片側をトイレにする。トイレを覚えるのが遅くなる |
| クレート | 背中を丸めずに入れて、中で反対を向ける奥行き。通院と災害時にそのまま使う | 初日から用意せず、通院当日に慌てて買う |
| トイレトレー+シーツ | 体長の2倍以上。子犬は排泄の前に一回りするので、回れる余裕がいる。踏んでもずれない重さ | 小さいトレーを買い、お尻がはみ出す |
| 食器2つ | 倒れない重さの陶器かステンレス。フード側は縁が低く、水側は深さのあるものを(ロイヤルカナンの解説より)。成長で買い替わるので高価な物は不要 | 軽いプラスチックで、食べながら押して移動する |
| フード | 迎え先で食べていたものと同じ銘柄を、小袋で。切り替えるのは落ち着いてから | 良いフードに替えた初日に下痢をする |
| 首輪とリード | ナイロンや布の軽いもの。首に指2本が入る緩さ。数か月で買い替わるので、最初は安い物で十分 | 革の高価な物を先に買い、3か月で使えなくなる |
| 酵素系のクリーナー | 尿を分解する成分が入ったペット用。無香料か微香 | アンモニアを含む洗剤を使い、犬には尿のにおいとして残る |
フードについて、ひとつ補足します。迎えた初日に良いフードへ替えるのは、いちばん避けたい形です。住む場所も、寝る場所も、まわりの人も変わった日に、食事まで変わることになります。おなかを壊す犬が多いのはこのタイミングです。銘柄を見直すなら、落ち着いてから1〜2週間かけて少しずつ混ぜていきます。選び方はドッグフードの記事にまとめました。
迷いやすいのがサークルの大きさです。広ければいいというものではありません。寝る場所と排泄する場所を分けられるだけの広さがあると、犬は端をトイレにします。米国のケネルクラブも、大きすぎるクレートはトイレトレーニングを後戻りさせると書いています。仕切り板のついた製品を選んで、体が大きくなった分だけ板の位置を下げていくのが実際的です。目安は「そこで一回りして、寝そべれる」まで。それ以上は要りません。
後から買えばいいもの
初日に無くても困らないものです。犬の体格と好みが分かってから買うほうが、無駄になりません。
- 服。真冬や真夏に迎えるのでなければ、急ぎません
- ベッド。最初の数か月は噛んで壊す犬がいます。タオルを畳んだもので足ります
- おやつ。しつけに使うぶんは、その日のフードから取り分けられます
- ブラシ。毛の長さに合った物を選ぶので、実物を見てから
- 爪切り・歯ブラシ。慣らす練習は早いほうがいいですが、初日ではありません
おもちゃは、大きさだけ先に決めておく
おもちゃは初日に1つあると助かります。ただし選ぶ基準がひとつだけあって、それが大きさです。
ロイヤルカナンの解説は、口の幅の2倍を超える大きさのものを選び、綿の詰まったぬいぐるみは避けるよう勧めています。丸ごと飲み込めない大きさで、噛みちぎっても破片が出にくいもの。この2つを満たすなら、ゴム製で中に食べ物を詰められる型が扱いやすいです。
迎え先から引き継ぐもの
買うものではありませんが、頼めば持ち帰れるものがあります。見学のときに聞いておいてください。
- いま食べているフードを数日分。銘柄が分かっても、同じ物がすぐ手に入るとは限りません
- 母犬やきょうだいのにおいがついた布やタオル。初日の夜に寝床へ入れます
- ワクチンの接種証明書。次の接種の時期が変わります
- 血統書とマイクロチップの番号。30日以内の変更登録に要ります
買い物より先に、片づけるほうが効きます
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ここがこの章でいちばん大事なところです。用意するより、なくすほうが効きます。
アニコム損保が、保険に加入している犬299,653頭のデータを分析した報告があります。誤飲で保険金の請求があったのは全体の2.2%でしたが、0歳だけを取り出すと5.7%に跳ね上がります。1歳で3.4%、2歳で2.4%と下がり、3歳以降は2.0%以下で落ち着きます。最初の1年が突出しています。
そして、手術に至った請求理由を多い順に並べると、異物の誤飲は歯周病の次に来ます。この傾向は近年さらに強まっていて、同社の2024年の集計では、0歳の請求割合が約13%まで上がっています。
何を飲み込むかも、調査されています。同じ報告の中で、獣医師172名に「死亡した症例を経験した物」を聞いたところ、報告が多かったのはひも類で27人。次が人の医薬品の16人、3番目が靴下やタオルなどの布もので13人でした。
危ないのは、犬用品ではなく生活用品です
ひも、靴下、タオル、薬。どれも「犬のために買った物」ではありません。床に落ちている物、テーブルに置きっぱなしの物です。だから買い物では防げません。迎える前の週末に、床から30cmの高さを見て回ってください。
迎える前の週末に、片づける6か所
- 電源コードと充電ケーブル。噛むと感電と火災に直結します。カバーに通して束ね、壁際に寄せておく
- 人の薬。テーブルや床に置かない。バッグの中も同じです
- ひも状のもの。靴ひも、ビニールひも、イヤホン、髪ゴム。死亡例の報告がいちばん多かった系統です
- 靴下とタオル。洗濯かごは蓋つきに替えるか、扉のある場所へ
- ゴミ箱。蓋つきにするか、犬が入れない部屋に置く。竹串や鶏の骨が入ります
- 観葉植物。同じ報告では、死亡例のあった中毒物として観賞用のユリが12件で最多でした。チョコレートやネギ類を危険だと知っている飼い主は9割を超えるのに、ユリを知っている人は29%にとどまります
床に物がない状態を作れないなら、部屋を区切るほうが早い。犬が入れる部屋を1つに決めて、そこだけを片づける。突っ張り式のペットゲートを1枚入れるだけで、片づける範囲が半分になります。
なお、口に入れたかもしれないと思ったら、自分の判断で吐かせようとせず、まず動物病院に電話をしてください。早く吐かせたほうがいい物もあれば、吐かせるほうが危ない物もあり、その場で見分けるのは難しいからです。何を、いつ、どのくらい飲み込んだかを伝えられると、そのあとの判断が早くなります。
やってはいけないこと
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迎える前にやってしまうと、あとで効いてくるものだけを挙げます。どれも、その場では悪い判断に見えません。
その日のうちに決める
店で見て、かわいくて、連れて帰る。いちばん多い失敗の形です。「今日決めないと、この子はいなくなります」と言われても、それは決める理由になりません。
一度帰って、この記事にある確認を済ませてから、もう一度会いに行ってください。一晩おいて気持ちが変わらなければ、それが本当に迎えたい犬です。本当に良い迎え先なら、その時間を待ってくれます。
生後56日に満たない子犬を受け取る
「早くから育てたほうが懐く」という言い方をされることがありますが、逆です。母親ときょうだいと過ごす期間が短い犬ほど、噛む力の加減や、犬同士のやりとりを学び損ねます。
そもそも、56日を過ぎていない犬の販売は法律で禁じられています。勧めてくる相手がいたら、その相手を選ばない理由になります。
生活が変わる直前に迎える
引っ越しの1か月前、出産の直前、受験の年、転職して間もない時期。どれも、犬にいちばん手をかけるべき最初の3か月と重なると苦しくなります。
手放す理由の上位に転居と離婚が並んでいたのは、第1章で見たとおりです。生活が動いている最中は、動き終わってからにしてください。犬は逃げません。
子どもへのサプライズにする
誕生日やクリスマスに、内緒で連れて帰る。気持ちは分かりますが、これは家族の合意を飛ばすやり方です。世話の分担も、アレルギー検査も、医療費の上限も、決めないまま始まります。
迎えるなら、子どもも一緒に見学に行ってください。選ぶ過程に入っているほうが、世話の当事者になります。
見た目と流行だけで犬種を決める
犬種によって、毎日必要な運動量も、手入れの手間も、かかりやすい病気も違います。写真で見て決めた犬種が、自分の生活と合わないことがあります。
見ておくのは3つです。1日に必要な運動量(牧羊犬や猟犬の系統は、散歩だけでは足りないことがあります)。被毛の手入れ(毎月のトリミングが要る犬種か、毎日のブラッシングで済むか)。その犬種に多い病気(関節、目、心臓、呼吸)。
とくに、鼻の短い犬種(フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズーなど)は、呼吸や暑さに弱い傾向があります。夏の散歩の時間帯や、飛行機での移動に制限が出ることがあるので、迎える前に知っておいてください。
ネットの画像だけで決める
前に書いたとおり、事業所で現物を見せ、対面で説明することは業者の義務です。会わずに送ってもらう買い方は、制度の外側にあります。写真と実物が違っても、あとから言えることは多くありません。
迎える前の準備が終わったら、次は自分の準備です
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ここまでの準備は、全部「環境」の話でした。手続き、お金、住まい、時間、家族の合意、迎え先。そろえれば、犬を迎えられる状態にはなります。
ただ、迎えた翌日から始まるのは別の種類の仕事です。夜中に鳴く。手を噛む。トイレを外す。抱っこを嫌がる。そのとき、どう反応するかを決めているのは飼い主の側です。そして、決める時間はほとんどありません。
とくに効いてくるのが、社会化期の残り時間です。8週齢で迎えたとして、手元にあるのは8週間ほど。この間に何を見せ、何に慣らすかで、その後15年の反応が変わります。本を読んで理解してから始めよう、では間に合いません。
迎える前にできる手当ては、大きく3方向に分かれます。
- 子犬向けの教室を、迎える前に見学しておく。ワクチンの都合で通えるのは少し先になりますが、予約や条件を先に聞いておけば、迎えた週から動けます。全国のしつけ教室を地域から探せます。どの教室を選ぶかで迷ったらしつけ教室の選び方を見てください
- 飼い主が学べる教材を、先に見ておく。迎える前の時間は、あとから取り戻せない準備の時間です。下に書きます
- 動物病院を、迎える前に決めておく。ワクチンの予定を聞きに一度行ってみてください。見るのは、夜間と休診日にどこへ回されるか、そして問題行動の相談を受けてもらえるか。この2つは、あとから変えるのが面倒な条件です
初日の夜に調べはじめると、間に合いません
子犬が来た日の夜、鳴きやまない犬の横でスマホを開いて検索する。この時間帯に読んだ情報は、たいてい実行できません。眠くて、焦っていて、犬は鳴いている。決めておくべきことは、静かな部屋で犬がいないうちに決めておくほうが、はるかに楽です。
この記事で紹介する「イヌバーシティ」は、犬に技を仕込む手順書ではありません。飼い主の側がどう動くかを、映像で見せるつくりの教材です。オンラインで、収録は全1,260分。子犬を迎えた最初の数週間に何をするか、噛まれたとき手をどう引くか、鳴いているときにいつ動くかまで映像で追えます。迎える犬の年齢で見る場所が変わるつくりになっていて、子犬の章と成犬の章が別になっています。罰を与えて止めさせる手法は出てきません。視聴はスマホで、申込の直後から。期限つきの配信ではないので、迎えたあとに見返すこともできます。価格は43,780円(税込)です。パピー教室のグループレッスンは1回3,000〜7,000円が相場で、週1回・全4回を1クールとするところが多い。2クール通うとちょうど同じくらいの金額になります。
ここは正直に書きます。イヌバーシティは、映像を見て、自分の家で自分の手で愛犬にしつけをする前提の教材です。「初日から横について指示してほしい」なら、出張トレーナーを頼むほうがいいです。合うのは、迎える前の数週間で先にしつけ方を予習しておきたい方、家族全員で同じ映像を見てしつけ方をそろえたい方です。
夜鳴き、甘噛み、トイレの失敗。迎える前にいろいろ調べても、結局「で、その瞬間どうすればいいの?」となるものです。噛まれた手をどの速さで引くか、鳴いている愛犬にいつ近づくか。文章ではどうやっても伝えきれない部分です。イヌバーシティの公式ページには、実際の教材から抜き出した動画が置いてあります。子犬の場面をひとつ見て、迎える前の準備の参考にしてみるのもいいと思います。
※ 公式ページが開きます。教材のサンプル動画をそのまま見られます。
よくある質問
Q. 一人暮らし・共働きでも犬は飼えますか?
飼えます。ただし、留守番の時間をどう埋めるかを先に決めてください。子犬のうちは数時間おきに食事とトイレの世話が要るので、昼の手を用意できるかが分かれ目です。ペットシッター、近くの家族、在宅勤務の曜日を増やす。どれかが使えるなら現実的です。
成犬を迎えるという選択肢もあります。保護犬の譲渡では、留守番の時間が条件に入っていることが多いので、団体に自分の勤務時間を伝えて相談してみてください。
Q. 子どもが小さいのですが、犬を迎えるのは早いですか?
年齢そのものより、子どもと犬を2人きりにしない体制が取れるかで考えてください。犬が寝ている場所に子どもが入らないようにする、食事中は分ける、といった線引きが要ります。
それができるなら、小さい子どもがいる家で犬を迎えること自体に問題はありません。むしろ、子どもがいる環境に慣れた子犬を選べると、その後が楽になります。見学のときに、「小さい子どもと会ったことはありますか」と聞いてみてください。
Q. すでに犬か猫を飼っています。気をつけることは?
初日に会わせないでください。アニコム損保の解説は、感染症を避けるために最初の1週間ほどは接触を控え、サークルを分けたまま過ごさせるよう勧めています。距離を詰めるのはそのあとです。順番は3段階に分けられます。別室でにおいと気配だけ感じさせる、サークル越しに姿を見せる、リードをつけて短時間だけ同じ部屋に置く。同じ空間で過ごす時間は10分から始め、20分、30分と延ばしていきます。
迎える前にできる準備もあります。先住犬のにおいがついた布を迎え先へ持って行き、代わりに新入りのにおいがついた布を持ち帰る。顔を合わせる前に、においだけ先に交換しておく方法で、ロイヤルカナンとアニコムの解説がどちらも勧めています。
そして、食器・ベッド・おもちゃは新しく買い足してください。先住犬の物をそのまま使わせると、取り合いの原因を最初に作ることになります。守る行動が出たときの対応は犬が物やフードを守る記事に書いています。
Q. 子犬と成犬、どちらを迎えるほうがいいですか?
手をかけられる時間で決めてください。子犬は最初の3か月がとにかく大変です。夜鳴き、トイレ、甘噛み、社会化。そのぶん、家のルールを最初から教えられます。
成犬は、体格も性格も分かった状態で迎えられます。すでにトイレを覚えている犬も多く、最初の消耗が軽い。初めて犬を飼う方に成犬を勧める保護団体もあります。迎えてすぐは緊張していることが多いので、数週間はそっとしておくつもりで。
Q. 途中でどうしても飼えなくなったら、どうすればいいですか?
まず、自治体は引き取りを断ることができます。動物愛護管理法は終生飼養を原則としていて、それに反する理由での引き取りは拒否できると定めています。「連れて行けば何とかなる」ではありません。
先にやることは、かかりつけの動物病院と、地域の保護団体への相談です。一時的な預かりで解決する話なのか、新しい飼い主を探す話なのかで、動き方が変わります。限界まで待たず、見通しが立たなくなった時点で相談してください。
Q. 犬を飼う前に、しつけの勉強はどこまでしておくべきですか?
全部を覚える必要はありません。最初の1か月に起きることだけ、先に知っておけば足ります。具体的には、トイレの教え方、甘噛みへの対応、夜鳴きの扱い、そして社会化で何を見せるかの4つです。
それぞれ、子犬のトイレトレーニング、子犬の甘噛み、子犬の夜鳴きに手順を書いています。迎える前に一度読んでおくと、初日の夜が変わります。
動画でしつけ方を覚えたいなら「イヌバーシティ」がおすすめです。手をどこへどの速さで動かすか、どんな声で言うか。このあたりは、読んで覚えるより実際の場面を目で追うほうが、飲み込みが早い部分です。
まとめ
犬を飼う前にしておきたいことを、6つに絞ります。
- 自分が倒れたときの預け先を決めて、相手に伝えておく。手放す理由の1位は飼い主の病気で、しつけの失敗は3.36%でした
- 30日以内の手続きを3つ覚えておく。市区町村への登録、狂犬病の予防注射、マイクロチップの変更登録。前の2つには罰則があります
- お金は11年目から上がる。生涯の目安は278万円。15歳の年間診療費は1歳の4.7倍です。手術の上限額を先に決めてください
- 「ペット可」の中身を読む。分譲では管理組合の47.4%が飼育を禁止しています。賃貸なら、退去時にどこまで負担するかまで確認を
- 家族で5つ決めてから迎える。朝の散歩の担当、アレルギー検査、預け先、医療費の上限、叱るか叱らないか
- 迎え先では、標識と親犬と生後56日を見る。現物確認と対面説明は業者の義務です。その日のうちに決めないこと
ここまで読んで「まだ整っていない」と感じたなら、それは正しい判断です。整うまで待った人のほうが、犬にとっても良い飼い主になります。逆に、全部そろっているなら、あとは迎えた初日から何をするかを決めるだけです。
※ 本文で紹介した金額・割合・日数は、公表されている調査や法令にもとづく一般的な目安です。すべての家庭に同じ経過をお約束するものではありません。
※ 手続きの詳細や費用は市区町村によって異なります。実際に手続きをする前に、お住まいの自治体のページで最新の内容をご確認ください。